これに螺旋階段を作ったのは見事。
登る気はしないけど~
1年と7か月前。
先代猫が死んだ日の夜のこと。
いまその封印を解く。
◆
毎夜オカンのいびきがうるさい。
仰向けに寝るとほぼ確実にいびきをかく。
それなのに仰向けになって寝る。
昨夜のこと、私は理由もなく深夜に目を覚ました。
猫が死んだ日の夜ということもあって、
神経が高ぶっていたのかもしれない。
気持ちいいくらいにスッキリと目が覚めた。
暗がりの中、かろうじて物の輪郭を認識することができた。
ふと、オカンをのぞく。
また仰向けに寝ている。
今夜はどういうわけかいびきはしていない。
死んだように静かだ。
これはこれで不気味さを感じる。
猫のこともあるだけに妙に勘ぐってしまう。
呼吸をしていないのではないか、と不安がよぎる。
もしや「睡眠時無呼吸症候群」というやつではないのか。
無性に不吉なものを感じる。
見過ごすわけにはいかない。
暗がりの中、
手探りでおかんの二つの鼻の穴に私の中指と人差し指を挿入する。
これをやると普通なら10秒足らずで苦しみだす。
なのに、まったく反応がない。
30秒近く経っても微動だにしない。
これはまさしく無呼吸睡眠に違いない。
と、確信しつつ、鼻に差し込んでいない親指と小指でオカンの口元を探る。
なにやら複雑な形状。
予想する感触とは違う。
唇がない。
ほどなくして理解した。
口が開いている。
顎が外れたようにポカンと開けたままになっている。
こやつ、口呼吸をしている。
無呼吸よりましだが、口呼吸こそがいびきの原因なのだ。
人の心配をよそに、よくもぬけぬけと大口あけて・・・