春近し
今朝のこと。
以前、私がお店と住宅を設計したHさんから電話があった。
窓ガラスを割ったので見てくれとのことだった。
すぐには行かず、昼食のあと見に行った。
玄関戸のガラスと、その隣の茶の間の窓ガラスが大きく割れていた。
どちらも高さ2メートル級のペアガラスである。
ガラスは外周部のギザギサを残して木端微塵に割れていた。
何があったのかとHさんにたずねると、
「おいが割ったよ。※※※やったけん頭にきてブロックで割ってやった」
早口なので※※※の部分が聞きとれない。
しばらく間を置いてまた同じ質問をした。
「恥ずかしい話ばってん、※※※やったけん頭にきてブロックで割った」
やはり※※※の部分が聞きとれない。
よっぱらっていたのかと聞くと、そうではないといわれる。
では、なにに腹を立てられたのだろう?
それ以上詮索するのも失礼なのでそこまでにした。
真相はわからぬまま、サッシ屋に修繕を依頼することにした。
それから1時間ほどしてHさんの娘さんから電話があった。
お詫びと事件の説明があった。
それほど込み入った話ではなかった。
昨夜、Hさんが帰宅したら家に鍵がかかっていたのでブチキレたのだと。
ただそれだけのことだった。
家には鍵が掛かっているのが普通であるがHさん宅は特別である。
店舗に隣接している関係で空いたままのときが多い。
今日も日中、家には誰もいないのに鍵は開いたままだった。
まあそこら辺の事情はどうでもいい。
それよりもHさんの暴走が気になる。
Hさんとの付き合いは長い。
設計の後も、ある関係で付き合いは続いている。
Hさんは現在70歳くらいになられる。
多少頑固なところがあるが、総じていい人であり、いたって正常な人である。
Hさんの奥さんは、Hさんより3つほど上で、総じて非常にいい人である。
さらに、Hさんの娘さんは40を少し超えていて、これまた総じて非常にいい人である。
Hさんの家族は私の顧客リストの中でもトップクラスにいい人たちである。
なのに、こんな平和な家庭でも嵐が起きることがあるのだと少し驚いてしまった。
というか、本音は、少し安心した。
誰だって羽目を外すときはあるのだと。
人間、少々荒れることがあっても卑下することはないのだと。
不出来な自分に少し自信が持てた。