普段からみかじめ料を取られているやくざの組長から「そろそろあんさんもうちの組員になりなはれ、安心して商売できまへんやろ、悪いようにはしまへんで。」と言いくるめられて、そこそこ繁盛している「日本亭」のマスターはTPP組の組員になることを決断します。「そんなやくざな組織に入るの止めなよ」「入ったら最期、魂を吸い取られるまで抜けられないぞ」と諌める古参の店員や家族の制止を振りきってマスターは組員になってしまいます。「組員にならないといろいろ嫌がらせされるし、他の組からもカツ上げされたりするし仕様がないよ。」と消極的ながら賛成してくれる身内も少ないながらいました。
「TPP組に入ります」と言えばすぐにでも会合に呼んでもらえると思っていたマスターは親分さんに「よう決断されましたなあ」と褒められはしたものの組の会合には呼ばれず「何かんちがいしとんじゃ、わりゃ?」「十年はええんじゃ、おんどりゃ」と他の組員からは散々な声も。「店の運営方針とかには口出しさせないから」「従業員は守るから」とマスターは心配する身内達に言い訳をするのですが「そっちから入れてくれ、言うたんやから、何でも言うこと聞くんやろな。」「店員の給料減らしてでも店の借金は減らしとけよ」とマスターの浮ついた心証を見透かすように組の若頭や強面のお兄さん達が既に日本亭を食いつぶす算段をしている声が漏れ聞こえてきます。
あれこれ嫌がらせをされて大変であることは確かですが、自分たちの店は自分たちで守り、運営方法は自分たちで決めるというのが正しい生き方です。大抵の勧善懲悪の小説にしろ物語にしろ上の様な状況でTPP組にふらふらと入ってしまうのは悪い結末になると決まっています(違う結末の物語があったら教えてくれ)。実社会においてもこれは同じ。苦労はしても最後に皆に認められるのは日本亭のマスターのような生き方ではないと自分の50年の人生を振り返っても感じます。「これが最後のチャンス」「TPPに入らない=鎖国」などという明らかな妄言を見抜けない阿呆はしかたありませんが、まじめにまっとうな人生を歩んできた人は「この状況でふつーTPPに入らない方が良い」という判断になるよな。