rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

子宮頸癌ワクチンの有用性

2013-07-05 20:02:46 | 医療

子宮頸癌ワクチンの接種によって神経麻痺などの重篤な副作用が出現している可能性がある事についてマスコミで取り上げられ、「当分の間積極的な接種は控えるように」という分かりにくい通知が出されて医療従事者や接種を控えた子供を持つ親、学校などに波紋が広がっています。私は以前ワクチン自体が危険とは書きませんでしたが、費用対効果の面で無駄が大きいのではないか、国民全て(の女性)を無償接種の対象にするのは反対、という意見をブログで述べました。今回子宮頸癌について早期発見や予防を専門に研究している産婦人科医の講演を聞く機会があったので、ワクチンの事を含めて備忘録を記しておきます。

 

ちなみに専門家の説明を聞いた後であっても結論として、私は「子宮頸癌ワクチンは危険ではないが、費用対効果の面で全員を定期接種の対象にするのは政策として誤りである」という意見は変わりません。

 

子宮頸癌の発癌と早期発見について

1)      HPV16と18の持続感染が子宮頸癌の前癌病変の形成に関与していると言われており、他のいくつかの型を合わせると80%近くの頚癌の原因ウイルスになる。これらのヒト乳頭腫ウイルスは性交渉の機会(相手が複数)が多いほど感染率が上がる。多くは自然治癒するが(90%)、一部持続感染する場合があり、この持続感染した人の一部(1%)に前癌病変(CIN)が形成される。前癌病変の多くは自然治癒するが、一部の人は癌になる(感染者の0.1%)(年間8千から1万例)。癌化には喫煙や環境因子も関連すると言われています。このワクチンはHPV16と18(サーバリクス)(ガーダシルはこれに加えて尖圭コンジローマの原因となる6、11型も予防)の感染を予防する効果がある。既に感染しているウイルスを除去する効果はない。

2)      早期発見については癌を早期に発見する(細胞診)、前癌病変を発見する(細胞診)、ウイルス感染を発見する(ウイルス検査)などがあり、ウイルス検査が陰性ならばそれ以上の検査が2−3年は必要ないことから、ウイルス検査を推奨する国もある。しかしウイルス陽性の場合に不要な精密検査をする機会が却って増えるから経済的でないという話もある。

 

ワクチンの安全性について

1)      ワクチンは外套の蛋白のみで核酸は含まないのでウイルスに感染するリスクはない。

2)      筋肉注射なので痛みが持続したり、迷走神経反射のために失神したりする例が10万人で10−20人くらい出る。

3)      免疫反応による?神経疾患のギランバレー症候群や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、が430万人に1人出る(厚労省のホームページから)。これらの頻度は他のワクチンに比較して特に多いとは言えない。

 

要点をまとめると上記の様になりますが、今回問題が大きくなった背景には、厚労省が定期接種(全員を対象)を決定するにあたって、ワクチンの有用性や安全性などについて十分な説明を行わず準備も不十分であった事、厚労省として「本ワクチンが日本の将来にとって絶対に必要なものである」という強い決意なく始められた事に問題があると思います。通常の医療というのは医療の恩恵を受ける人と副作用で不利益を受ける人は同一であり、恩恵と不利益を秤にかけて恩恵が大きいと判断した上で医療を受けるものであり、そこには本人や親のしっかりした決断が伴っているものです。ところが予防医療においては将来恩恵を受ける人と副作用に苦しむ人は同一ではなく、何の利益もなく不利益だけを被る事もあり得るのです。定期接種としてある意味強制性を持たせるからには「君は不利益だけ被る場合もある事を覚悟しなさい」と強制する上での予防医療の特殊性を国民に納得させる必要があります。例えばインフルエンザや風疹などは、皆が同時に感染予防を行う事で社会として直近の未来における感染蔓延に効果がある訳ですが、「一部の人が将来なるであろう特定の癌を予防する効果がある」という予防医療を国民全体に強制するにはそれなりに納得のゆく説明か、「受ける受けないは個人の自由」という「各人が判断できる余裕」を残しておくべきではないかと私は思います。現に諸外国では定期接種が勧められていますが、「私はポリシーとして受けない」と明確に意思決定をして受けない人も沢山いるそうです。日本にそのような風土がありますか?

 

私はこのワクチンが特に危険だとは思わないのですが、費用対効果でやはり疑問が残ります。というのはアメリカで320ドルでできるものが日本で4万8千円ということは1ドル150円換算で価格設定されているという(もっと言うと購買力平価で言えば日本の方が米国より20%位物価が安いはずですーeconimist誌2013年のBig Mac指数)日本の輸入医薬品における価格設定の問題もあります。従って、本ワクチンを広く日本で行うならもっと安価な価格設定(上記から3万円程度)にした上で、一部費用を公的補助にしても良いですが、本当に納得した家庭が残りは自腹で接種する、で十分ではないでしょうか。

 

このワクチンは特に4価について男性にも定期接種を勧める動きがあります。私はとても費用、リスクと利益の比較で男性にとって割にあうものではないと判断します。

コメント (1)
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