〇 通販の宣伝に出てくる様な体験談を語り始めた専門家達
いよいよ日本でも新型コロナワクチンの投与がまず医療従事者に対して開始されました。テレビなどでは国民の未知のワクチンに対する「まっとうな警戒心」をなくそうと、投与された医師などの「どうってことありませんでした。」みたいな感想をしきりと流しています。先行する世界からの今までの報告から、投与初期の副反応(健常な人へのワクチンによる副作用を副反応というそうです)は今までの不活化ワクチンなどよりははるかに大きいものの、何とか乗り切れるようだと分ってきました。拙ブログでも紹介している米国VAERSによる副反応集計では投与後死者が2月初旬時点で1,000名近くになってきましたが、数千万人投与後の結果であり、直接ワクチン投与と結びつくとは限らない(コロナ死者統計と同じ)と思われ、むしろ神経麻痺の様なワクチン投与に結びつく副反応が問題だろうと私は考えています。
2月12日集計の副作用報告の集計結果(VAERSのサイトから)数千万人投与して1.5万の副作用報告があったうち5.8%が死亡報告だった。
〇 本来医師などの専門家が、コロナワクチンについて説明するべき内容とは、以下の様になるべきだと私は思います。
- mRNAとして体内に注入される遺伝子配列(AUGCかATGCからなる)の明示(企業秘密らしいが、「明示しないなら承認しない位」の強気を国民への責任がある各国政府は示せ)
- 投与されたmRNAに反応する宿主側の細胞の特定(筋肉注射なので一応筋肉細胞主体とされる)
- 反応して作られるタンパク質の機能と構造(mRNA全体が翻訳されるとは限らない。スパイク蛋白の一部なのか全体か)
- 蛋白を異物として認識する宿主の免疫細胞の特定(メモリーT細胞までの道のり、作成放出された異物蛋白のみでなく、宿主細胞表面の蛋白を異物として認識する事が大事ともいわれている)
- 宿主が作る中和抗体が多種なのかモノクローナル(1種類)に近いのか
- 作られた抗体のウイルスへの効果
- 反応した宿主細胞がいつまで抗原を作り続け、反応した中和抗体がいつまで体内に存続するか(後術するように論文が出始めてはいるが)
- 注入された遺伝子がレトロトランスポゾン化(以下に説明)して宿主DNAに取り込まれる可能性の有無(ないと明言するならばサイエンスとして実験結果か論文を明示する必要がある)
などを解りやすく説明して初めて専門家のワクチン評価と言えます。今メディアで述べられている内容は「通販の使用体験談」以上のものではなく、国民に範を示す専門家として恥ずかしくないのかと疑問に思います。
それでも、以下に説明するような長期的な遺伝子ワクチンによる影響は「未知」であることは変わらず、「できることなら受ける機会は少なくしたい」と考えている人は少なくないでしょう。しかしながら立場や仕事上「ワクチンは打たない」と断言できない人もいると思います。特に2回目の副反応の強さから、ワクチンは1回で済ませたい、と思うのは誰しも望むところです。ここに来て先行する諸外国からワクチンの有効性についての論文が出始め、中でも「初回のみのワクチン投与で十分に感染予防効果が得られているようだ」とする報告も出始めています。
以下に単回接種でも十分有効ではないかとされる報告を載せます。
〇 ワクチン1回接種、発症が85%減 イスラエルの研究者
(21/02/20記事:朝日新聞提供の記事引用)
新型コロナウイルスのファイザー製ワクチンの効果をめぐり、イスラエルの研究者らが医療従事者を対象にした研究で、1回のワクチン接種により発症を85%減らす効果があるとの論文を発表した。接種1回でも高い効果が得られれば、ワクチン不足に悩む国が2回目の接種を遅らせる判断をとることも選択肢となってくる。
論文は18日、英医学誌ランセット(電子版)で公開された。執筆したのは、国立シェバ・メディカルセンターのエヤル・レシェム教授ら。9109人の医療従事者を対象に、ワクチン接種前と接種後の感染や発症状況を調べた。
調査対象者のうち、昨年12月19日から1月24日までの間に170人が感染した。ワクチン未接種の場合と比較すると、接種から15~28日が経過した場合における感染率には、75%の減少がみられた。また、発症率でみると、接種から15~28日後には85%の減少がみられたという。
論文は「1回の接種後に、感染や発症に相当な早期の減少があることを我々のデータは示している」と結論づけた。調査対象者には2回目の接種まで受けた人も含まれるが、感染や発症が減少した効果の大部分は、1回目の接種の結果だと考えられるという。
(引用おわり)
〇 単回接種後の免疫原性の獲得とブースター接種の時期と効果について
Lancet 2021年2月19日号 Voysey M ら(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)00432-3)
17,000名のワクチン投与群とコントロール群の比較解析から、1回接種後14日から90日後までの感染予防効果は76.0%(59.3-85.9)であった。また単回投与後の中和抗体レベルは90日後まで下降することはなかったが、90日以降はブースター投与として2回目の接種が行われたのでいつまで単回投与の効果が続くかは不明である。2回目のブースター投与は3週目よりも時間を空けて90日後に行った方が、作られる中和抗体量は2倍近く多い傾向であった。(rakitarou意訳)
上記についてのLancetの論文
〇 遺伝子ワクチンとして投与された外来遺伝子が宿主の遺伝子内に取り込まれる可能性(レトロトランスポゾン化)について
遺伝子のレトロトランスポゾン化についてはwikipediaなどが解りやすく説明されていますが、簡単に述べると、「本来自分自身が持っていない遺伝子がウイルス感染等の形で体内に入ってくるとそれを自身の遺伝子の中に組み込んでゆく機構が元々生物には備わっている」という事です。ヒト遺伝子の少なくとも46%、犬の31%、マウスの37%の遺伝子はこのような外来性の意味のない遺伝子だろうと言われていて、考古学的にはヒト遺伝子の70%近くが元々外来性だった可能性があるという事です(参考1)。中には内在性レトロウイルス(HERVs)と呼ばれる遺伝的に受け継がれるウイルス疾患(HIVとか成人T細胞性白血病とか)もあり、これは自己の遺伝子の一部というよりもウイルスのまま精細胞内に組み込まれて遺伝してゆくタイプの物です(参考2)。2007年にProbstらは外から与えたmRNAが体細胞内に取り込まれる可能性について発表しています(参考3)。つまり、外来性のmRNAワクチンが投与されたヒトの細胞内で機能するからには、それが(必ずとは言えないまでも条件によっては)下図のようにヒトの遺伝子に組み込まれてゆく可能性は否定できないということです。問題は外来の遺伝子が自分の遺伝子の一部になってしまった場合、自分の免疫が反応すれば「自己免疫疾患」に、反応しなければ同じウイルスが将来侵入しても「免疫が働かない」事になってしまう事です。
胎児に組み込まれた外来遺伝子がその子にも遺伝する場合(A)、精細胞のみに限られ、体細胞には出ない場合(B)、体細胞にだけ出て遺伝しない場合(c)の模式図(文献1から)
1回ならば長期合併症は大丈夫という保証はどこにもありませんが、できれば打たないで済ませたいながら、仕方なく打とうという方は、種々のリスクは少ない方が良い事は言うまでもありません。2回目投与後の副反応は1回目と比べ物にならないほど強いことは世界中で指摘されています。その点だけでも1回投与で免疫的記憶が付いている証拠です。治験に必要とされるような、十分な中和抗体を得るには2回目のブースター投与が必要でしょうが、エボラの様な致死性の高いウイルス蔓延の地域に乗り込んでゆくわけではないのですし、今の日本の感染状況を考えれば1回のみの投与で充分免疫的記憶は付くと予想される(2回投与でも保証しているのはイスラエルで6か月のみ)と思います。皆さまの参考になれば幸いです。
参考1 Richardson SR et al. The influence of LINE-1 and SINE retrotransposons on mammalian genoms. Microbiol Spectr. 2015 April ; 3(2): . doi:10.1128/microbiolspec.MDNA3-0061-2014.
参考2 Nelson PN et al. Demystiied... Human endogenous retroviruses. J Clin Pathol: Mol Pathol 2003;56:11–18
参考3 Probst J et al. Spontaneous cellular uptake of exogenous messenger RNA in vivo is nucleic acid-specific, saturable and ion dependent. Gene therapy 2007, 14, 1175-1180.