rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

ウクライナで露呈するNATOとEUの齟齬

2023-08-11 15:45:02 | 社会

拙ブログでも度々触れた様に、ウクライナ紛争というのは英米中心のNATOとロシアの代理戦争(proxy war)踏み込んで言うと世界巨大資本を中心としたグローバリズム対中露を中心としたBRICSを背景にした多極主義の代理戦争でもあります。ロシア対ウクライナの一国同士の戦争であれば、兵力・資源・資金力が途絶えた時点で終わりです。第二次大戦の日本がよい例です。自国民の若者以外何も持たないウクライナが1年以上ロシアと戦争を続けていられるのは、武器や金の流れを見れば、真の戦争当事者が誰であるかは一目瞭然で「民主主義のためにウクライナに支援を」などというたわごとで金を出しているお目出たい人は日本では知りませんが、世界では少数派です。

 

ウクライナ紛争では頻繁に欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏など、EUの代表者達が公の場に登場して種々の方針を述べます。それは外部にいる日本人にはNATOとEUが混然一体として機能している様に見えてしまいますが、本来NATOとEUは設立の目的や目指す所が異なる組織であり、その意思が一体であることはないのです。以下平凡社新書(1017)村上直久著2022年刊「NATO 冷戦からウクライナ戦争まで」を参考に論を進めます。

 

1)NATOとEU

 

(1)同床異夢の組織 北大西洋条約機構(NATO)は1949年にソ連の軍事的脅威から西側諸国を守る集団防衛組織として発足しました。1955年NATOに対抗してワルシャワ条約機構が設立され、いわゆる冷戦構造が確立されましたが、1989年ベルリンの壁崩壊で東欧諸国の民主化革命が進み、1991年ソ連消滅前に同機構も消滅してNATOは一発の銃弾も撃たずに冷戦終結に至りました。NATOはNo Action Talk Onlyなどと揶揄されましたが、その存在意義が終了したにも関わらず存在し続け、しかも民主化した東欧諸国を追加しつつ拡大してゆきます。2000年代にはソ連を継いだロシアがNATOのパートナー国として演習に参加したりする蜜月時代もあったのですが、ウクライナやグルジアのカラー革命を機に対立関係になり、現在に至ります。一方でNATOは戦勝国の英米が欧州を軍事的に支配するという目的を持ち、NATOに共同する反共秘密組織(主に国内向け CIAやMI5MI6フランスのジャンダルム、ドイツ憲法擁護庁)が各国にはあると言われ、欧州政府の政策を英米が支配する構図が影の目的としてあったと言えます。独自の核を持つ仏をはじめ、もともと米英よりも格が高いと考える欧州国民にとっては決して快いものではなく、まずは経済でドル一極体制に対抗する目的でECのちにEUが設立されました。

(2)加盟国の違い EUとNATO両方に加盟しているのは20カ国で、EUのみがフィンランド、スウェーデン(2国は2022年8月にNATO加盟承認すみ)、オーストリア、アイルランド、マルタ、キプロス。逆にNATOのみが米英、カナダ、トルコ、ノルウェー、アイスランドとなっています。トルコは経済的な理由から自国のEU加盟を条件にフィンランドなどのNATO加盟を認めたと言われます。

(3)世界経済フォーラムの関与 EUが欧米のグローバリズム経済の対極となることを嫌う世界経済フォーラム(WEF)陣営は、毎年世界から200名余りの若者をYoung Global Leaders(YGL)に選定して種々の支援を行って国家要職に就かせ、グローバリズムの指示に各国政府が進んで従う体制を作ってきました。当然EU首脳の多くもYGL出身であり、日本も小池百合子、高市早苗、林芳正、小泉進次郎、橋下徹などおなじみの面々がグローバリストの傘下に日本国民を差し出す役割を果たしています。しかし骨のある若者は訴訟を起こしてでもそのような誘いは拒絶するものです。グローバリズムを拒絶する米民主党のトルシー・ギャバード女子も勝手にYGLに選ぶなと怒りを表明しています。

社会を支配するため、各界で力を持つようにWEFは資源と時間をかけて人材を育成している。左上がトュルシー・ギャバード女子   勝手に選ぶなと怒る骨のある若者もいる(日本にはいないと思う)

 

(4)EU独自の軍事機構の模索 余り知られていませんが、EUが英米からの独立を目的とする以上、安全保障においてもNATOとは異なる機構の設立を目指した時期があります。92年のマーストリヒト条約に基づいて、共通外交安全保障政策(CFSP)が設立され、フランスのシラク大統領と英国のブレア首相が中心となってEU独自の3万人からなる緊急対応部隊設立を目指しました。特に独立志向が強かったのがフランスでしたが、2004年を機にEU独自の治安機構は主に警察治安任務を担い、軍事に関してはNATOを中心に据える方向に定められました。NATOは95年99年にセルビア空爆、2003年融資連合としてアフガニスタン出兵、2011年にリビア空爆など冷戦終了後から熱い戦争に参加して行きます。

 

2)ウクライナ戦争はEUを無力化する目的も

 

(1)軍事経済資源を差し出せ 1年以上続くウクライナ戦争にNATO各国は軍事物資、経済支援を限りなく続けて、空軍力を除く陸上の火砲、ミサイル、弾薬などは底を尽きつつある(ウクライナ反転攻勢は弾切れで頓挫、ロシア軍大攻勢で戦争終結へ (msn.com))と言われます。ドイツ経済を支えていたロシアからのノルドストリームパイプラインが米英の手で破壊されたのはシーモア・ハーシュ氏の暴露記事通りです。グローバル経済が行き詰まりつつある中、WEFが画策するグレートリセットを達成するには健全な欧州経済は邪魔です。健全な欧州社会も邪魔なので大量の移民で破壊する必要があります。フランスは移民による暴動で一時内戦状態であった事は記憶に新しい所です。

フランスは一時内戦状態に

 

(2)戦時経済体制のロシアと資本主義のままの英米 西側諸国は砲弾などを増産体制に変えたと言われますが、戦時体制に移行して24時間全力で無尽蔵に火砲を製造しているロシアにはかないません。米軍もあと2-3か月でミサイルや砲弾が尽きることを認めています。ビリニュスのNATO首脳会議でNATO諸国はウクライナのNATO加盟を「戦争終結後」と規定し、実質加盟を拒否、NATOの参戦も否定しました。イラク戦争で米軍の戦車部隊を率いた退役軍人のダグラス・マクレガー大佐は「NATOには図上演習だけが得意な将軍は山ほどいるが、部隊を率いて実戦で戦える人はいない。しかも多国の軍を統率して作戦を遂行することなど不可能だ。」と断言しています。

NATOは備蓄戦力を使い果たした。               世界銀行の調査では2022年のロシアの経済力は世界5位に上昇して日本に迫っている。

 

(3)日本のNATO事務局設置延期へ 2023年5月NATOストルテンベルク事務総長はNATOの連絡事務所を東京に開設することを日本政府と協議していると明らかにしました。しかし中国との対立を嫌うフランスの反対によって延期となりました。これ以上他国からの支配体制が増えて日本の自主独立が否定されるのは勘弁願いたいところですが、フランスに助けられた格好です。欧露が手を組んで英米グローバル体制から独立しないよう、NATOによる隣国同士の戦争(divide and rule)が仕掛けられてきました。日中韓が一体となることを防ぐ事も「分割して支配する」戦略には重要な要素です。2012年、日中の経済関係は戦後最大となり、ドルを介在させずに両国の通貨で直接取引をする準備を始めた事への米国の対応が売国奴石原都知事を使った「尖閣国有化宣言」(米国で宣言表明)だったのです。当然反発した中国と日本の関係は以降最悪となりました。石原は「息子伸晃を総理にしてやる」とそそのかされたのでしょうが、石原の死後、伸晃は総理どころか国会議員も落選し、政界から消えています。国家の利益より自分の利益を優先する人間の末路です。

分割して統治せよの良い見本 日中の蜜月をいかに米国が嫌ったかがよくわかる例

NATO東京事務所は仏の反対で開設延期に

 

3)ウクライナ敗北と必然的な多極化

 

世界最強の軍と化したロシア軍 ウクライナへの特殊軍事作戦SMOが始まった昨年2月時点では、最新装備とドローンなどのAIを供与されたウクライナ軍は、それらを駆使することで、ロシア機甲部隊に対して大きな被害を与える事ができました。しかし勝てないが負けないと評した様に、ウクライナ軍は統制のとれた戦術でロシア軍と戦闘した訳ではなかったため、ロシアがSMOから本格的な戦争にギアを変えた途端に被害ばかり多くて一切勝てなくなります。今年6月からの反転攻勢と称する攻撃もロシアの第一防御線まで引き入れてから殲滅する戦術を、引き入れられた事を前進と大きく報じてまるで勝った様に西側メディアが報ずるため、ずっと同じ攻め方で数十万人のウクライナ兵が無駄死、戦傷する結果になっています。現在ロシア軍は小型ドローンと衛星情報を駆使し、無人神風爆弾機、巡行ミサイル、誘導爆弾、西側の10倍の砲弾を用いて世界最強の戦闘集団になっています。戦略核を用いて双方を全滅させる戦法以外、NATOも米軍も勝ち目はありません。

第一防衛線まで引き込んでから殲滅する戦法がずっと有効なのはなぜか?

 

広島のG7サミットでゼレンスキーが停戦を懇願すれば、ミンスク合意の再来も可能であったかもしれませんが、JBPressの記事でも触れられている様に、今となっては図のような縮小ウクライナが残り、そこも西側資本の草刈り場となる運命になる事が予想されます。ウクライナの人たちが本当に気の毒です。

ミンスク合意的な解決もやり方によっては可能であったかも。      ウクライナにとって最悪の終結(メドベージェフ氏はロシア・ポーランドによるウクライナ分割をデュダ大統領に提案している)

 


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13 コメント

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Unknown (ローレライ)
2023-08-11 17:53:44
ロシアヘイトに燃えて西の狼ポーランドに喰われるガリチア人のウクライナ!
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ロシアの脛齧りがロシアに牙向いた! (ローレライ)
2023-08-13 02:04:14
ロシアの脛齧り国がロシアに牙向けた結果、人工国家ウクライナの消滅である!
西側の催眠でウクライナの有権者は自滅を選んだ。
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ウクライナの国民は本当に戦争を欲したか (rakitarou)
2023-08-13 04:03:06
ゼレンスキーが選挙で選ばれたのはロシアとの戦争を公約にしたからではないと思います。2014年のクーデターも選挙で選ばれた政権をオバマが暴力で覆した。ウクライナ戦争を後世の歴史がどの様に記録するかはわかりませんがヴェトナムや朝鮮戦争で米国が絶対的に正義であったとは米覇権の現在でも言われていないことから考えると、ロシア善悪で通すことは不可能と思います。
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無理の二乗というか、 (宗純)
2023-08-16 12:15:53
あのウクライナの勝った勝ったの反転攻勢の馬鹿騒ぎも一段落したようだが、
実は、半世紀以上前の1972年のベトナム戦争の終結でも同じで「アメリカが勝ったから→ベトナムから撤兵する」との無理筋の筋書きを当時のアメリカ政府や日本国の毎日新聞など大手メディアが宣伝していた。

あの去年2月24日ロシア軍ウクライナ侵攻の不思議な騒動勃発ですが、あれはロシア文学の巨峰ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟と同じ素材で、旧約聖書の「カインとアベル」逸話と同じだった。
ドストエフスキーの「罪と罰」にも言えるが、宗教に根差す何とも恐ろしい「兄弟殺し」ですね。それならキリスト教に疎い日本人には一番苦手な話です。日本としては、出来る限り介入しない方がよいでしょう
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無条件降伏 (rakitarou)
2023-08-16 21:07:43
プーチンはウクライナに無条件降伏は要求していません。しかしゼレンスキーは最期の一兵まで戦う様な指揮をしている。
第二次大戦ではドイツも日本も条件付き降伏を模索していたのに勝っている側が受け付けなかった。しかも原爆まで落とす。
終戦の日にどちらを人類の敵として強烈に批判するべきかは小学生でも解るはずですよね。
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そういえば・・・ (遍照飛龍)
2023-08-17 19:22:32
そういえば、、

前の敗戦も、天皇が「あと一回勝てば、停戦」
で、延々と戦い続けて、原爆と、天皇家にはもっと恐ろしい「ソ連の侵攻」で、ようやく敗戦で降伏受諾。

ウクライナと似てますよね・・・

ただ、違いは、どう考えても前の敗戦の時は、意図的に「無条件降伏の要求」で、こちらの条件交渉を受け入れなかったし・・・特に米英が・・・

で、今も米英にしがみつく日本。。て気が狂っているのでしょうか?
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歴史をみると (rakitarou)
2023-08-18 07:17:08
米英、中国、インドが今後も歴史上消滅する事はない様に見えます。日本も2千年来島国として独立してきて、今後も日本語を母語としてあり続けるべきと私は思っています。
日本も先の大戦ではひどい目に遭いましたが、他の大国達も一般民衆は歴史の中ではそれぞれ酷い目に遭っている様に思います。
明治以降は米英が強かった時代なので米英と組んでいた時が日本にとっても都合が良かった。今後は紆余曲折で多極時代になってゆくと思うので、周りを見ながらつかず離れずで行くのが良いのではと思っています。自分で音頭を取ろうとすると、ウクライナの様にうまく利用されて「鉄砲玉」として潰されるのがオチかと。次の鉄砲玉はポーランドではないかと危惧していますが。
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シェンゲン協定に加盟している EUの27ヶ国 (宗純)
2023-08-18 09:07:13
国際化のためと称して、今の自民党政府は小学校からの英語教育を推し進めているが、最も危ない亡国行為で、母語としての日本語教育の拡充をこそ図るべきでしょう。具体的には教育漢字を減らすとか中国を真似て漢字の簡略化で生徒の負担を減らす。母語が確立しない前の外国語教育など百害あって一利なし。
そもそも自国語だけで高等教育が行える国は米英仏独や中国日本ロシアなど極少数。独立時に分裂したインドは、もし欧米風個人主義(民主主義)の方向に向かえば間違いなく母語の違いでバラバラに分解。歴史から消滅します。
そもそも、冷戦崩壊後の東欧やソ連圏諸国の様に多数派が自分たちの母語教育を強制すれば内戦に発展する。その意味では多数決の民主主義は最も恐ろしい罠ですね。その意味でユーラシア大陸から離れた日本国の場合は一番恵まれていた

民主主義云々のポーランドやバルト三国は共に対ロシア最強硬派なのですが、現在のポーランド人口3700万人でほぼ一定だが特殊出生率が日本と同じ1・3台なので将来の人口激減が予測されている。
ラトビアの人口は独立時は260万人が、独立からたった30年で3割近い100万人が減っているので国家の滅亡に向かってまっしぐら。ビザなし協定で条件が良い国にどんどん若者が出ていってしまうのです

これは、旧植民地のアフリカの高等教育は全て英語かフランス語なので、医療の拡充目的で医師とか看護婦を自国で養成しても小国では、待遇が良い隣国からリクルートされて引き抜かれる。アフリカ諸国より欧州の方が色々な条件が良いので若くれ優れた人材の流出が止まらない。今のアフリカ諸国がウクライナ紛争で欧米に同調しないのは当然の結果なのです
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御礼 (遍照飛龍)
2023-08-18 11:56:46
>rakitarou

帝政日本の保守也右翼の「ウリナリファンタジー」は論外ですが、
なんか国家の最上部らして、日本の伝統也学問を軽視しているように思えてなりません。
「皇族の海外留学」ってそれだけ自国の伝統・学問を高く見てない証拠ですし。


南方熊楠とかが日本は幕末からすでに西欧近代文明となんら遜色なかったて書いてますし。
宗教思想など「天皇」など「発狂な異物」があるけど、それ以外は、東亜の伝統的な神仏習合・三教調和で、西欧よりも優れているし。なんせ今でも西欧はイスラムとまともに付き合えない・・。

明治維新が、「自分の等身大の姿を受け入れる」ことを破壊してしまった気がします。
何故にって言われてもわかりませんが、自分らの在来宗教を捨てたり排斥して、道徳倫理もおかしくなるし・・。それも大きいと思えます。

まあ「伝統的宗教観・倫理観」が強いと「神聖法皇天皇」を「神の子孫」ってする近代国家神道国家をつくるのがかなり難しいてのもあるかもしれないですけど。

明治維新以降の得たものと失ったものの差を見ると、もし日本が滅びて後を顧みると、その失ったモノの大きさとそれが亡国の原因で有ることに愕然とするのでしょうね・・。
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とても見ることができません (ポーランドからの帰国者)
2023-08-20 21:52:49
四十年前に妻の国、ポーランドへ渡り、この国の市民になった。病を得たが、隣国人の避難民と負傷兵で、病院には田舎のものに至るまで、空きベッドがなく、外国人として札幌の妹宅に、気兼ねしながら住んでいる。パトリスルムンバ記念名称諸民族大学卒の共産主義者だ。ロシア、白ロシア、小ロシアともに、友人がいる。日本の友人はいない。テレビで「東京空襲、原爆攻撃」を放映するが、米国人への憎悪の声が一言も聞こえない。小生の母の妹は、青森空襲では焼夷弾の直撃を喰らい、立ち姿で焼け死んだという。父の兄は広島文理大の学寮で死んだらしい。父も入市被爆のせいなのか、六十歳で肺癌死している。youtubeで、アメ公が地雷で吹っ飛ぶのを見ると、ざまあみろと思う。ポーランド兵士は強い。白ロシア兵士も、小ウクライナ兵士も強い。モスクワまでとは言わないが、「せめてゆきたやニュウヨーク」。
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