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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

さとうち藍・著/関戸勇・写真『アイヌ式エコロジー生活-治造エカシに学ぶ、自然の知恵』2008・小学館

2023年12月29日 | 北海道を読む

 2017年のブログです

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 さとうち藍さん著、関戸勇さん写真の『アイヌ式エコロジー生活-治造エカシに学ぶ、自然の知恵』(2008・小学館)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで偶然見つけて読みました。

 2008年の本ですが、いい本です。

 文章だけでなく、写真もすばらしいです。

 北海道浦河町出身のアイヌ民族で今は千葉県に住む浦川治造さんにアイヌの生活や思想などを学ぶという本ですが、それが現代日本への痛烈な批判になっています。

 といっても、浦川さんには、別に今の日本を批判しようという意図はないのですが、自然を敬うアイヌの人たちの生活を学ぶと、自然を破壊して平然としている現代日本を批判する形になってしまいます。

 これは、和人による蝦夷地支配に始まり、以後の明治政府のアイヌ同和政策、そして、その後の北海道開発によって、悲劇的とでもいうような、自然破壊につながってきます。

 じーじもどさんこであり、開拓民の子孫ですので、他人事とは言えません。

 子どもの頃はともかく、責任あるおとなになった以上、明治政府やその後の日本政府の横暴や自然破壊について、冷静に振り返る必要がありそうです。

 しかし、それにしても、アイヌの人たちの、自然と共存する姿勢はすごいです。

 本書で、さまざまなアイヌの人たちの知恵が紹介されますが、学ぶところが多いです。

 全くの偶然でしたが、いい本と北海道で出会えました。

 なお、蛇足ですが、この本を読み終えてからわかったのですが、さとうちさんと関戸さんが組んだ『武市の夢の庭』(2007・小学館)という本も、数年前に偶然読んだことがあります。

 こちらも北海道滝上町の自然庭園を紹介したいい本ですので、おすすめです。 (2017.8 記)

 

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東直己『名もなき旅』2008・ハルキ文庫-人生の哀しみと信ずることの大切さ

2023年12月19日 | 北海道を読む

 2018年のブログです

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 東直己さんの『名もなき旅』(2008・ハルキ文庫)を再読しました。

 もう10年ぶりになるんですね。

 文庫本ではたぶん2回目だと思うのですが、『スタンレーの犬』(2005・角川春樹事務所)という単行本の時にも読んでいるので、3回目でしょうか。

 年を取ったせいか、今回が一番おもしろく、しかし、もの哀しさを感じながら読んだような気がします。

 東直己さんは北海道の人ならおそらくは知っているであろう、どさんこの小説家。

 北海道外の人も、大泉洋さんの映画「探偵はバーにいる」シリーズの原作者といえば、わかるかもしれません。

 『探偵はバーにいる』(1995・ハヤカワ文庫)を始めとする東さんの小説は、映画で想像するよりは、実直で、深みのある物語が特徴です。

 かなりの数の小説が出ていますが、どれもがなかなか読み応えがあります。

 じーじは一時期、かなり熱心に読んでいた時期があり、一度、なんとお手紙を書いてしまったことがあります。

 しかし、こんなじーじのしょうもない手紙にも、ていねいなお返事をいただいて、恐縮をした記憶があります。

 どさんこは礼儀正しい人が多いのでしょうね(?)。

 さて、本書、父母と早くに死に別れた19歳の男子のお話。

 ようやく見つけた信頼できる中年男性に頼まれて、58歳の女社長を1週間行方不明状態にして失墜させるという穏やかでない仕事を引き受けます。

 そして、その中で、いろいろなできごとに出合い、いろいろな物語が生じるというもの。

 あらすじだけだと、そのよさはわかりにくいのですが、東さんは軽妙ですが、ていねいな文章を書かれますので、物語のよさだけではなく、文章のよさも楽しめるのではないかと思います。

 なによりも読後感がすがすがしいのがいいと思います。

 しばらく、また、東ワールドにはまりそうな予感がしています。    (2018.7 記)

     *

 2020年冬の追記です  

 本棚を眺めていたら単行本の『スタンレーの犬』が目に入り、読んでしまいました。

 あいかわらず少し不思議な小説ですが、面白かったです。

 人生の哀しみと信ずることの大切さ、そして生きることの味わい深さなどを感じることができると思います。     (2020.1 記)

 

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高田勝『ある日,原野で』1981・朝日新聞社-北海道を読む

2023年10月24日 | 北海道を読む

 たぶん2015年ころのブログです

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 1981年の本,これも北海道の古本屋さんで2000年頃に買ったと思います。

 最近は昔に買って読んだ本を久しぶりにまた読み返しています。

 まるで北海道で放牧されている牛さんになったような気分です。

 高田さんは北海道根室に在住の人,道東の自然や人々へのまなざしが温かいです。

 風連湖,春国岱,野付半島…,自然のままの素敵な景色が出てきます。

 冬の厳しさは過酷ですが,その分,なんと豊かな自然なのかとためいきが出ます。

 そんな中で面白かったのは,原生花園を「新しく」作るというお話の顛末。

 野山を整備して,そこに高山植物などを植えるという嘘のような計画が持ち上がります。

 しかし,それでは「原生」花園ではなくなってしまいます。

 幸い計画は中止となり,豊かな自然はそのままで,名もない小さな「原生花園」として残ります。

 笑い話のようですが,実際にあった話ということで,大切な教訓だと思いました。

 よく自然豊かなところに住んでいる地元の人は,不便さを感じるだけで,自然のすばらしさに気づかないという話はよく聞きますが,じつに本当のようです。 

 今年の夏は,道東の名もなき小さな原生花園を訪れようと思います。 (2015?記)

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 2020年4月の追記です 

 5年ぶりくらいで(?)再読をしました。

 高田さんのゆったりとした文章で綴られる道東の自然がとてもいいです。今年の夏には、ぜひ訪れてみたいと思います。  (2020.4 記)

 

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伊東徹秀『北紀行-風の恋歌』1995・麦秋社-北海道を読む

2023年10月23日 | 北海道を読む

 2015年のブログです

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 伊東徹秀さんの『北紀行-風の恋歌』(1995・麦秋社)を再読しました。

 1995年の本ですが,帯広の古本屋さんのシールがついているので,おそらくは2000年前後に買って読んだ本だと思います。

 それでも15年ほど前になります。

 北海道の山々を歩いた紀行文が中心のエッセー集で,前回は狩場山を歩いた文章が記憶に強く残っていたのですが,今回は愛山渓から大雪山の沼や山々に入る紀行文が印象的でした。

 前に自分が歩いた道が出てきて,文章家が書くとこんなふうに描写されるんだと感動しました。

 前回も文章がうまいなと思ったのですが,今回はさらにその美しさと清冽さに感心させられました。

 本当にとてもいい文章です。

 読んでいて気持ちがよくなり,こころが洗われるような,すがすがしい感じになる文章です。

 文章でもカウンセリングができるんだなと思わせるような体験でした。

 また北海道に行きたくなりました。(2015記)

 

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