G7の首脳宣言はロシアを支援する中国を名指しして圧力をかけた=ロイター
【ビュルゲンシュトック=坂口幸裕、ファサーノ=大西康平】
主要7カ国(G7)は14日に首脳宣言を採択し、ロシアの継戦能力を支える中国への制裁強化に踏み込んだ。
ロシアとの軍事転用可能な技術・部品の取引に関与すれば、中国の金融機関をG7の金融ネットワークから締め出すと警告した。
「中国を含む第三国の個人・団体に対して我々の金融システムへのアクセスを制限する措置をとる」。首脳宣言では中国を名指しし、ロシアへの軍事物資の支援にG7として圧力をかける姿勢を鮮明にした。
米政府は中国が殺傷力のある武器をロシアに供与した実績はないと分析する一方、兵器製造に欠かせない半導体や工作機械、電子部品などの輸出を続けていることに警鐘を鳴らしてきた。
カーネギー国際平和財団によると、ミサイルやドローン(無人機)、戦車などの部品に転用可能な50品目について、ロシアが中国から輸入する割合は2021年の32%から23年に89%に急増した。22年2月にウクライナ侵略を始めて以降、ロシアが中国からの調達に依存している実態が浮かぶ。
21年まではドイツやオランダ、ポーランドなど15カ国がロシアと取引していたが、米欧の経済制裁によって取引国が激減した。23年はトルコ、マレーシア、アルメニアの3カ国の合計が1割ほどにとどまり、中国の突出ぶりが際立つ。
「中国によるロシアの防衛産業基盤への継続的な支援がウクライナでの違法な戦争の継続を可能にしている」「ロシアの防衛産業に使われるデュアルユース(軍民両用)品の移転停止を中国に求める」。
首脳宣言には中国がウクライナ侵略を実質的に支えていることへの批判が並ぶ。
米欧は22年に世界的な決済ネットワークである国際銀行間通信協会(Swift)からロシアの主要銀行を遮断したが、ロシア側は中国の銀行に口座を開くなどして取引を続けている。
G7首脳会議に先立つ12日、米政府はロシアの制裁逃れに加担する外国の金融機関も制裁対象に加えると発表した。他のG7諸国も足並みをそろえて包囲網を狭める。
首脳宣言の内容にはSwiftへのアクセス制限は含まれないが、取引制限の範囲をG7全体に広げて制裁効果を強める。
米政府高官は14日、記者団に「ロシアの戦争を支える中国の行動はウクライナだけでなく欧米の安全保障を脅かしている。だからこそ制裁措置が重要だ」と述べた。
ロシアの資金決済ルートは見えづらくなっている。ロシアから中国への支払いの5割は銀行などと異なる「仲介業者」が担っているとの見方がある。
香港やカザフスタンなどに拠点を置き、高額の手数料をとって暗号資産(仮想通貨)による資金移動を請け負う業者の存在が指摘されている。