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HDD再成長 大容量化でソニーや日東電工に恩恵

2024-06-18 19:11:00 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


シーゲイトは24年に容量30TBのHDDの量産を始める(写真:同社提供)


日経ビジネス電子版

 

処理速度が速いソリッド・ステート・ドライブ(SSD)にシェアを奪われてきたハードディスク駆動装置(HDD)が土俵際から復活しようとしている。
 
記録容量を大きく増やす革新技術が実用化の段階に入った。生成AI(人工知能)の普及などでデータセンター向け記憶装置の需要が急増するタイミングと合致し、HDD市場は再び成長軌道に乗ろうとしている。
 

「ディスク1枚当たりの記録容量は、これまで2.4テラ(テラは1兆)バイト(TB)だったが、今年3TBに、2025年は4TB、さらに28年ごろに5TBへ急増する」

米大手HDDメーカー、シーゲイト・テクノロジーの日本法人、日本シーゲイト(東京・品川)の新妻太社長は今後の見通しをこう話す。さらに8〜10TBにする研究も進めているという。HDDには日本メーカーが関わっている部品・素材も多く、市場の再拡大は日本にとっても追い風になる。

シーゲイトが導入する新技術は「熱アシスト記録(HAMR=ハマー)」と呼ばれる。HDDの記録密度を高めるためには、ディスクの磁性粒子を小さくする必要があるが、そうするとデータ記録後の保持が難しくなる。

HAMRはレーザー光を使い、ディスクを一時的に加熱することで、この課題を乗り越えられるという。

 

シーゲイトがHAMRの開発に取りかかったのは00年代初頭。原理は業界でも知られていたが、記録媒体の研究やセンサーの開発など多様な技術開発を長期にわたって行ってきた。

同社は24年6月までに1枚の記録容量が3TBのディスクを10枚搭載したHDD(容量計30TB)を100万台生産する予定で、大容量品の量産化で競合他社を引き離しにかかる。

 

HDD活躍の舞台はデータセンター

かつてパソコンなどの記録媒体の主役だったHDDは、ここ10数年余りで、データの書き込み・読み出しが速いSSDに急速に取って代わられてきた。

市場調査会社のテクノ・システム・リサーチ(TSR、東京・千代田)によると、デスクトップパソコン用の記録媒体では16年にはHDDが90.5%を占め、SSDは9.2%にすぎなかったが、20年に両者のシェアは逆転し、23年はSSDが87.5%、HDDは11.9%だった。

 

 

ノートパソコンでは、一足早く18年にSSDがHDDを上回り、23年は94.5%をSSDが占めた。

同様に「クラウドに使うサーバー用の記憶装置でもSSDにかなり置き換えられてきた」(TSRアシスタントディレクターの楠本一博氏)。

 

かつてのフロッピーディスクのように記録媒体としての役目を終えていくのかと思いきや、大容量化の新技術によって息を吹き返そうとしている。

大容量化するHDDが活躍する舞台となるのは、「ニアライン」と呼ばれるデータセンター用などの記憶装置だ。

 

この分野ではデータの読み出しなどの速度がサーバー用ほど速くなくてもよく、記録容量の大きさやコストの低さが重視されることから、HDDがまだ優位を保っている。

 

 

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HDDの記録容量が2倍になるということは「同じ専有面積でデータセンターの記録容量を2倍にできる」(日本シーゲイトの新妻社長)ことを意味する。

データ量1ビット当たりで見たデータセンターの建設・運用コストや消費電力は大きく下がり、データセンター投資が促進されることにもつながりそうだ。

 

大容量化技術が実用化の段階に入ることで、データセンター用ではHDDはSSDより高いシェアを維持していくというのが業界の一般的な見方となった。

シーゲイトに対する投資家の評価も一変し、22年末に1株50ドル台前半で推移していた同社の株価は足元で100ドル近くまで回復している。

 

 

ソニーは半導体レーザーで貢献

データセンター市場を意識したHDDの大容量化の技術開発は、HAMR以外でも進んできた。

東芝は、記録時にマイクロ波を使うことでデータを書き込みやすくするマイクロ波アシスト記録(MAMR=ママー)と呼ばれる技術を00年代後半から開発してきた。「24年夏にはディスク1枚当たり2.8TBまで記録容量を拡大する」(東芝デバイス&ストレージの楠本辰春ストレージプロダクツ設計生産統括部ゼネラルマネジャー)

 

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東芝はマイクロ波を使う大容量HDDの量産化で先行(写真:同社提供)

さらに同社は「MAMRと並行してHAMRの開発もここ5〜6年進めてきた」(竹尾昭彦ストレージプロダクツ事業部技師長)という。

25年にはテストサンプルの出荷を始めるといい、先行するシーゲイトを追う構えだ。

 

日本企業にもHDD大容量化の恩恵は及ぶ。例えば、ソニーグループのソニーセミコンダクタソリューションズ(神奈川県厚木市)は、熱アシスト記録技術に使う基幹部品の半導体レーザーを開発した。

容量拡大のために「ナノ(ナノは10億分の1)メートル級の照射精度を実現する技術開発に努力してきた」(谷口健博アナログデバイス製品部統括部長)という。

 

24年、タイ工場に生産ラインを新設し、既存の生産拠点である白石蔵王テクノロジーセンター(宮城県白石市)と合わせて5月には生産量を数倍に引き上げるという。

HDDに組み込まれる回路基板で高いシェアを持つ日東電工にとっても収益機会が拡大する。とはいえ「大容量化は回路の配線密度が上がるなど、要求精度は高くなる」(篠木佳史ストレージ回路材事業部長)だけに、技術開発力が改めて問われる。

 

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日東電工はHDD向け回路基板で高いシェアを持つ(写真:同社提供)

 

社会のデジタル化が進み、AIも普及する中、世界で創出・利用されるデータは飛躍的に増えている。

技術革新によって息を吹き返そうとしているHDDは、そうした膨大な量のデータが行き交う社会を支えるインフラの一翼を担うことになる。

(経済ジャーナリスト 田村賢司)

[日経ビジネス電子版 2024年4月2日の記事を再構成]

 
 
 
 
 

企業経営・経済・社会の「今」を深掘りし、時代の一歩先を見通す「日経ビジネス電子版」より、厳選記事をピックアップしてお届けする。月曜日から金曜日まで平日の毎日配信。

 

 

日経記事2024.06.18より引用

 

 


富士通、量子コンピューターを外販 まずは産総研に

2024-06-18 19:00:11 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


富士通と理研が共同開発した量子コンピューター(2023年、埼玉県和光市)

 

富士通は18日、次世代の高速計算機である量子コンピューターの外販を始めると発表した。第1弾として産業技術総合研究所(産総研)に約60億円で納入する契約を結んだ。

量子コンピューターは新しい素材や医薬品の開発、人工知能(AI)の計算などに革新をもたらすと期待される。開発で先行する米IBMなどを追う日本企業の動きが活発になってきた。

 

納入する量子コンピューターは極低温に冷やして電気抵抗をなくす「超電導方式」と呼ばれるタイプ。性能の目安となる「量子ビット」数を世界トップクラスの数百まで増やせる設計を採用した。産総研は2025年初めの稼働を目指す。

量子コンピューターは複雑な問題を超高速で解く次世代技術だ。創薬で必要な効果を得られる最適な分子の組み合わせを計算するような使い方が想定される。ただ、計算ミスが多いといった課題があり、実用レベルには100万量子ビットが必要とされる。

 

産総研は富士通の新型スーパーコンピューター「ABCI-Q」と組み合わせて計算ミスを補い、実用的に使える手法を探る。電力供給の最適化や交通渋滞の緩和といった計算を実現する構想を掲げる。

富士通は計算速度で世界一になったスパコン「富岳(ふがく)」などを手掛けた実績を持つ。量子コンピューターは理化学研究所と組んで技術を蓄積し、23年10月に日本企業で初めて実機を稼働させた。

 

量子コンピューターの市場は世界で拡大する見通しだ。ボストン・コンサルティング・グループは35年ごろに最大8500億ドル(約130兆円)の経済効果を生むと見込む。

いち早くクラウドで量子コンピューターの提供を始めたIBMを筆頭に、米国勢が開発競争で先行してきた。日本では富士通などと国の研究機関が組み、「冷却原子方式」と呼ぶ新しいタイプの量子コンピューターの商用化を目指す動きも出ている。

 


「日本に投資、円安だけが理由じゃない」 米KKRベイCEO  金融を問う(投資ファンド編)

2024-06-18 18:43:24 | 日本経済・金融・給料・年金制度


米大手投資ファンドのKKRは今後10年で1兆円以上を日本市場に投資する。

ジョセフ・ベイ共同最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に「コングロマリット(複合企業)が事業改革に動き始めており、優良な事業の買収機会につながる」と述べた。

 

積極投資する理由や日本経済が強くなるためには何が必要かを聞いた。

(聞き手は北川開、学頭貴子)

 

――KKRは2010年以降、日本国内に80億ドル(1兆2000億円)を投資しており、今後10年でも1兆円以上を投資する方向です。なぜ今、日本市場に注目するのですか。

「過去20年近く日本への投資に力を入れており、関心はいまに始まったことではない。これまでと異なるのは、企業統治改革で日本経済が復活しつつあることや、緩やかなインフレと賃金上昇などで日本の成長に好都合な環境となっていることだ」

 

「日本でも1970〜80年代の米国と同様、コングロマリットが中核事業に集中するようになった。

KKRのようなプライベートエクイティ(PE=未公開株)を投資対象にするファンドにとって、優良な事業の買収機会につながるとともに、企業経営の改善を通じて投資家に多大な価値を提供できる」

 

 

――1ドル=150円を超える歴史的な円安も日本企業の買いやすさにつながっているのでしょうか。

「確かに米国の投資家にとって現在の為替水準は魅力的だ。

しかし日本への資金流入が増えている理由はそれだけではない。日本企業を取り巻く環境や企業文化が株主を重視する方向に変化しており、それが日本市場に投資家をひきつける最大の理由だ」

 

――日本市場への投資をどの程度増やしていきますか。

「2010年以降に日本に80億ドルを投資してきた。日本のPE市場は大きく成長しており、不動産や保険、インフラ投資の機会も大きい。今後10年で大幅に増えることは間違いない」

 



ジョセフ・ベイ KKR共同CEO

Joseph Bae 1996年KKR入社、アジアでの事業拡大を率いてきた。
2017年共同社長兼最高執行責任者(COO)、21年から共同CEO。

 

――具体的にどのような産業への投資機会があると考えていますか。

「多くの成長の可能性がある。22年に買収した不動産運用会社KJRマネジメント(旧三菱商事・ユービーエス・リアルティ)を通じ、日本で約2兆円の不動産を運用している。

不動産のほか再生可能エネルギーやデジタル化に関連し、インフラでもとてつもない投資機会がある」

「保険とプライベートクレジット(非公開融資)も新たなビジネスチャンスだ。KKRは国内保険会社に対して不動産やプライベートクレジット、PEなど高度な資産運用ができるよう支援が可能だ。

また、傘下の米グローバル・アトランティックを通じ、再保険やその他の戦略的支援も可能になる」

 

――5月に岸田文雄首相と会談しました。どのようなやり取りをされたのでしょうか。

「日本経済と資産運用業界の発展に役立つ可能性のある提案を伝えた。ひとつは『地産地投』のスキームだ

。KKRが主導して日本の投資家が国内に投資する新しいスキームをつくり、日本の中で経済成長や利益を循環させる仕組みだ。詳細なことはいえないが、PEなどさまざまなアセットマネジメント戦略をKKRはもっている。

 

日本の投資家に共同投資者として参加してもらうことなども検討したい」

「ふたつめはKKRが過去10年間、米国で進めてきた『広範なオーナーシップ』プログラムだ。KKRが企業を買収する際、その企業の株式をすべての従業員に付与する取り組みだ。企業の成長に伴い、従業員も価値創造に参加し、投資の果実を得ることができる」

 

――日本でも、買収した上でその企業の株を従業員に与える「オーナーシップ」プログラムは広がりそうでしょうか。

「4月に初めて武州製薬(埼玉県川越市)の1300人以上の従業員や派遣社員全員に、(武州製薬の)株式を付与した。

半導体製造装置のKOKUSAI ELECTRICでも限定的な形で導入し、同社の従業員はすでに約350億円の価値を享受している」

「世界ではKKRが過半の株式をもつ47社、10万以上の一般従業員でオーナーシッププログラムを導入している。日本でも新しく買収する企業を中心に、KKRが過半の株式をもつすべての投資先に導入するのが将来的な目標だ。日本市場にとっても日本の労働者にとっても大きな変化になるだろう」

 

――日本経済を強くするには何が必要でしょうか。これまでの企業と伝統的な金融機関との関係は変わっていくのでしょうか。

「日本経済が本当に強くなるためには、これまでのように銀行だけが資金源だという状況を続けていくわけにはいかない。

昨春の米商業用不動産の市況悪化の際には、我々のようなプライベートクレジットの担い手が銀行の代わりに資金の出し手となった。日本のプライベートクレジット市場は未発達で、これから発展させるチャンスがある」

 

日本の開拓、「還元」で勝負(聞き手から)

日本市場でシェアを高めるための具体的なスキームに繰り返し言及したのが印象に残った。その代表が「地産地投」と「広範なオーナーシップ」プログラムだ。

日本の機関投資家、買収先企業の従業員を巻き込むことで、日本市場の成長の果実を現地(日本)にも還元する狙いがある。外資の進出が海外への資本流出を生みかねないとの批判に対する反論という側面もありそうだ。


こうした戦略が奏功するかどうかは国内市場の努力にかかっている。外資の力を借りて経済を成長させるという、したたかさが日本には必要だ。
 
 
 

日経電子版「金融直言」は「金融を問う」に衣替えしました。金融分野のキーパーソンとの経済社会問題の本質に迫る白熱したやりとりを生き生きとした筆致で描くインタビュー形式のコラムです。

 

 

 

日経記事2024.06.18より引用

 

 

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欧州委員長続投の是非、月内に再協議 EU首脳会議

2024-06-18 18:00:24 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


17日にブリュッセルで開いたEU首脳会議では次期欧州委員長の人事を決められなかった=ロイター

 

【ブリュッセル=辻隆史】

欧州連合(EU)は17日、非公式の首脳会議を開き、10月末に任期が切れる欧州委員長の人事案について協議した。

現職のフォンデアライエン氏の続投を認めるかどうかについて、結論を持ち越した。27〜28日の首脳会議で改めて議論する。

 

17日の首脳会議ではミシェル大統領や、EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表の後任人事も調整した。いずれも首脳間の意見がまとまらず、月内に再協議する。

欧州委員長は、EU首脳会議が6〜9日に実施した欧州議会選の結果を踏まえて指名し、欧州議会の承認を経て正式決定する仕組みだ。

 

フォンデアライエン氏は中道右派の欧州議会内会派・欧州人民党(EPP)から委員長候補として推薦された上で議会選を戦った。

EPPは議会内第1党を維持し、議席数も増やしたことから同氏の続投が有力視されている。

 


国防費のGDP比2%、23カ国達成へ NATO

2024-06-18 17:55:17 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


NATOのストルテンベルグ事務総長㊧はバイデン米大統領と会談した(17日)=ロイター

 

【ワシントン=共同】

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は17日、米ホワイトハウスでバイデン大統領と会談し、NATOに加盟する32カ国のうち23カ国が今年、国防費を国内総生産(GDP)比2%に増やす目標を達成すると述べた。

バイデン氏は大統領就任時と比べて目標を達成する国が大幅に増えると歓迎した。

 

両氏は、この進展を土台に、NATOの防衛力と抑止力強化を7月9〜11日にワシントンで開くNATO首脳会議で話し合う方針を確認した。

ウクライナへの長期的な軍事支援策で合意することに期待感を表明した。

 

長期支援策は、米国主導の関係国会合が機能不全に陥ってもNATO主導で支援を続けられるよう、ストルテンベルグ氏が提案している。

防衛費を十分に負担しない同盟国は守らないとの考えを示唆し、11月の米大統領選で返り咲きを狙うトランプ前大統領を意識していることが背景にある。

 

ストルテンベルグ氏はバイデン氏との会談前、ワシントンのシンクタンクで講演。

ウクライナ支援が停滞してロシアの攻勢を許すようなことが二度とあってはならないとしたほか、中国によるロシアの防衛産業支援を批判した。

 

NATO首脳会議で日本との連携強化も話し合うと表明。NATOは米国の安全保障だけでなく「米国の産業や雇用にも有益だ」と述べた。

 

 

日経記事2024.06.18より引用