イオン傘下のイオンディライトは清掃業務などで特定技能の外国人を増やす
イオンは2030年度までに4000人の「特定技能」外国人をグループ企業を通じて受け入れる。
政府の拡大方針で可能になった食品スーパーでの総菜加工なども任せる。小売りや外食など消費の現場での人手不足は深刻になっている。
教育や住居などの体制を整え、日本企業として最大規模に増やして他社にも紹介する。
現在はグループで約1500人の特定技能外国人を雇用している。主に食品スーパーで販売する加工食品の製造工場で働いている。
23年11月には施設管理を手がけるイオンディライトがインドネシア政府の支援を受けて16人を初めて採用した。
同年にビルクリーニング分野が特定技能に追加されたことを受け、「イオンモール」などの商業施設やホテル、病院などで清掃業務を担っている。
24年3月には受け入れ拡大の一環として、飲食料品製造業分野は工場だけでなく食品スーパーでの総菜製造が可能になることが閣議決定された。
イオンは全国に約2700店のスーパーを展開しており、一段と特定技能の受け入れ余地が広がったとして採用の門戸を広げる。
傘下に人材紹介会社を持つイオンディライトが中心となり特定技能の外国人を受け入れる。商業施設の清掃や加工工場、店舗での総菜製造など業務に応じて、人材紹介会社から各グループ会社だけでなく他社にも紹介するサービスを始める。
30年度に4000人を受け入れる計画だ。
多くの外国人を受け入れる体制も整える。2〜3人で生活できるシェアハウスや休日に観光地などをめぐるレクリエーションを開くなどして、慣れない異国での生活を支援する。
イオンとしてグループ各社が適切に就労面や生活面を支援できているか確認して助言するなど「働きやすい環境をつくる」方針だ。
特定技能は在留資格の一つ。人手不足の分野に限って一定の専門性を持つ外国人労働者を受け入れる制度として19年に始まった。
24年3月には自動車運送業など分野を追加するとともに、24年度からは5年間の受け入れ上限を82万人と、19〜23年度に設けた枠の2.4倍とすることを閣議決定している。
小売りや外食の人手不足は深刻だ。帝国データバンクの4月の調査では正社員が不足しているとした企業の割合は、外食で57%にのぼった。
非正規社員でも外食は75%、飲食料品小売りも57%にのぼり、過半の企業で足りていない。
人手不足を補うため特定技能への期待は大きい。セブン&アイ・ホールディングスは2月に開業したグループ共通の総菜の加工工場で約240人の特定技能外国人を雇用した。
中華料理店「日高屋」を展開するハイデイ日高は24年の特定技能外国人の採用数を26人と前年比で6.5倍に増やす。新卒入社社員の4分の1の規模だ。
ワタミは24年3月時点の特定技能外国人が227人と前年同月比で4割増えた。
長期就労可能な業種に外食や食品製造が加わったことで「将来は店長やマネジャークラスとして働いてもらえる」と採用数を増やしていく。
働きやすい環境整備も進む。ハイデイ日高では日本人正社員と同等の待遇とし、店舗で接客や調理業務にあたるほか、店長候補や本社勤務にもなる。
在留資格申請なども支援し、店舗では来店客が自ら注文できる端末を配備することで、接客の負担を減らしている。
日本経済研究センターの試算では、ベトナムやタイ、インドネシアの現地給与が32年までに日本の給与水準の5割を超える見通し。
自国の給与が高くなれば来日して日本で働く動機が薄まる。特定技能外国人に長く働いてもらうため、技術習得に向けた支援に加え、社員寮など住居や在留中の生活支援といった企業側の投資も不可欠となる。
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2024.06.25より引用