米軍用機に乗せられる不法移民とみられる人々(レビット大統領報道官のXより)
【ワシントン=飛田臨太郎】
米政府は24日までに米軍の軍用機を使った不法移民の国外送還を始めた。レビット大統領補佐官によると数百人を送った。米国内では不法移民を23日に538人を拘束するなど、取り締まりを強化している。
トランプ大統領が「史上最大の強制送還作戦」と銘打つ取り組みが本格的に始まった。米軍用機に民間人を乗せて移送するのは2021年のアフガニスタンからの撤退時などの例がある。不法移民の送還に利用するのは異例だ。
米メディアによると、メキシコ国境沿いの南部テキサス州の基地から中米のグアテマラに軍用機が飛行した。
米政府は犯罪歴のある不法移民を強制送還の最初の対象にすると表明している。犯罪歴のある人は40万人超に及ぶ。今後も米軍は作戦を継続する。
トランプ氏は訪問先の南部ノースカロライナ州で記者団に「彼らは殺人犯だ。最も悪質な連中で、真っ先に国外追放する」と語った。
レビット氏はX(旧ツイッター)に「米国に不法入国すれば、厳しい結果が待ち受けているという明確なメッセージをトランプ氏は世界に向けて送っている」と投稿した。
トランプ政権は厳しい取り組みを内外に強調し、不法に米国に入ろうとする人の意欲をそぐ抑止の効果を狙っている。
トランプ政権は20日の発足後、不法移民の拘束を強めた。移民・関税執行局(ICE)は21日におよそ300人の不法移民を取り押さえた。その後も規模を徐々に拡大している。
レビット氏はX(旧ツイッター)で23日、「本日、テロリストの可能性のある人間も含めて、538人を逮捕した」と明らかにした。
州や自治体の権限が強い米国では、地域によっては連邦警察に従わないところもある。米メディアによると、司法省は21日付で不法移民の国外追放の取り組みに従わない場合は、刑事訴追も視野に捜査するよう連邦警察に指示した。
不法移民に寛容な「サンクチュアリシティー(聖域都市)」と呼ばれる自治体が念頭にある。「連邦法が州法に優越する」という憲法の規定を根拠に、トランプ政権の方針に従うよう自治体に迫っている。
不法移民は主にメキシコとの国境から米国内に流入し、米国の当局から有効な滞在許可を得ていない人をさす。海に囲まれている日本と違い、米国は国境の取り締まりが難しく、不法に越境する人が後を絶たない。
第1次トランプ政権は「国境の壁」の建設などで不法移民に厳しい姿勢を示した。その後、21年に発足したバイデン前政権は当初、寛容な移民政策を掲げた。不法移民の流入が増えて、社会問題となり、厳しく取り締まる方針に転じた。