富士フイルムは半導体材料でインド進出を検討する(写真は半導体ウエハー)
富士フイルムホールディングスは2027年3月期までの3年間で半導体製造に使う材料事業の設備増強に1000億円強を投じる。
24年3月期までの3年間と比べて投資額を倍増させ、日本や米国、韓国などで増産する。急拡大する生成AI(人工知能)の需要などに対応するため、世界で半導体材料の供給網を構築する。
トランプ米大統領は米オープンAIやソフトバンクグループなどが5000億ドル(78兆円)規模の資金を投じ、AIインフラを整備する方針を表明した。世界でAI投資がさらに加速すれば、半導体材料の投資競争も激しくなる。
富士フイルムは半導体に回路を形成するための感光材料で世界5位のシェアを持つ。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などを顧客に持つとみられている。顧客企業の近くにある生産拠点を拡充し、半導体大手と連携を強める。
25年秋に日本と韓国でEUV(極端紫外線)露光装置向けの製造棟を稼働させる。同装置は最先端の半導体の製造に欠かせない。静岡県では約130億円を投じて開発と生産を担う製造棟を建設する。
韓国・平沢(ピョンテク)市の既存拠点には新たに生産設備を導入して25年秋に量産を始める。平沢市にはサムスンが拠点を構えている。
韓国の天安(チョナン)市の別の拠点では、数十億円を投じて半導体の表面を平たんにする研磨剤を生産する新工場棟を建てる。27年春ごろまでの量産開始を目指す方針で、同拠点の生産能力は3割増える。
インド市場も開拓する。25年にも現地に拠点を持つ化学メーカーに対し、半導体材料の製造技術を供与する契約を結ぶか、合弁会社を設立するかどうかを検討する。
顧客の半導体メーカーの工場の設立状況に応じ、28年3月期以降に自社の製造拠点を建設する見通し。インド政府は国内での半導体産業の育成に向けて、7600億ルピー(約1兆4000億円)の支援策を掲げている。
半導体の製造分野では米国や韓国、台湾などが高いシェアを持つが、日本は半導体材料では強く、主要な半導体材料の世界シェアで半分程度を握るとされる。
富士フイルムは半導体材料事業を成長分野に位置づけている。31年3月期には売上高を5000億円と25年3月期の計画から倍増させる。
調査会社の富士経済によると、世界の半導体材料の市場規模は29年に583億ドルと23年から35%拡大する見通し。
パソコンやスマホの半導体や、電気自動車(EV)に使われるパワー半導体とは。TSMCやラピダス、キオクシアなどのメーカーの動向や供給不足、シェア推移など関連業界や市場の最新ニュース・解説をタイムリーに発信します。
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日経記事2025.1.25より引用