政府が24日召集の通常国会に提出を予定する年金改革法案の全容が17日、明らかになった。
働く高齢者の年金をカットする基準額を現行の月収50万円から62万円に上げる。高所得の会社員の保険料負担を最大で月9000円上げる。将来の基礎年金を底上げする改革も明記した。
政府案を与党幹部に示した。女性や高齢の労働者が増えていることや企業が直面する人手不足に対応しながら、年金制度の持続可能性を高める。
目玉の一つが在職老齢年金制度の見直しだ。65歳以上の高齢者は厚生年金と賃金の合計が月50万円を超えると、受け取る厚生年金が減る。26年4月からは、月62万円までなら満額を支給する。
22年度末時点で働く高齢者の16%にあたる約50万人が年金カットの対象となっている。実現すれば、このうち約20万人の減額がなくなる。
人手不足が強まるなかで高齢者の働く意欲をそいでいるとの指摘があり、年金を所管する厚生労働省は制度の廃止も含めて見直しを検討していた。
年金財政の持続性を高めるため、賞与を除く年収798万円以上の会社員らが納める厚生年金保険料は引き上げる。
保険料は月収を等級ごとに区別し、料率18.3%をかけた金額を労使折半で納めている。27年9月をめどに、月収65万円の上限等級を75万円に上げる。
該当者は本人が負担する保険料が現在の月5.9万円から最大9000円増える。
引き上げ後の保険料を10年納めれば老後に受け取る厚生年金は生涯にわたり月5000円ほど増える。保険料上げで生まれる財源を、働く高齢者への給付増額にあてることを想定する。
全ての公的年金加入者が受け取る基礎年金の底上げ策も法案に盛り込む。将来の基礎年金は、経済状況が横ばいで推移すれば現在より3割目減りする見通しだ。
厚生年金の積立金と国庫負担(税金)を活用して底上げする。就職氷河期世代が受け取る年金額を手厚くする狙いがある。
ただ将来的に最大で年2.6兆円の国庫負担が発生することや、厚生年金の減額が先行することなどから自民党内では実施に慎重な意見も出ている。
実施については29年以降に経済状況や財源の状況などを踏まえて判断する。将来世代の受給水準を確保するために年金額の伸びを抑制する措置については30年度まで続けることも盛り込む。
「働き控え」の解消につなげる対策として、パート社員の厚生年金への加入も拡大する。
現行制度で加入を義務付けるのは、従業員数51人以上の企業で月額賃金8.8万円(年収換算で106万円)以上、週20時間以上勤務といった要件を全て満たす場合だ。
企業規模要件については27年10月に21人以上まで広げ、29年10月に全ての企業を対象とする。段階的に実施して事業主の準備時間を確保する。
厚生年金に入るパート労働者の保険料負担を企業が肩代わりできる特例は、対象を50人以下の企業と5人以上の個人事業所に限る。肩代わりした保険料の一部を還付する仕組みも設け、事業主の負担を減らす。
19〜22歳の学生を扶養認定する基準は、年収130万円未満から150万円未満に引き上げる。特定扶養控除の改正に合わせて見直す。
政府は3月以降、国会に法案を提出する考えだ。与党の議席が過半数を下回るなかで法案を成立させるには野党との話し合いが欠かせない。
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月に年金と合わせて50万円以上を得る高齢者に対して年金減額をやめる理由が「働く意欲を削ぐ」ということですが、その財源確保のために、現役世代の高所得者会社員の保険料を上げるというのでは、現役世代の方の働く意欲を削いだり、人材の海外流出を招いたりすることにならないのでしょうか。
会社員の賃金には幅があるので、月収の上限等級を引き上げる必要性があるのは理解しますし、その分(今のところは)将来受け取る厚生年金が増えるということですが、その理由が、月収50万円以上の高齢者への給付増のためというのでは、現役世代にさらに不満と諦めが募るように思います。
日経が先駆けて報じた最新のニュース(特報とイブニングスクープ)をまとめました。
日経記事2015.1.17より引用