【ベルリン=南毅郎】
欧州連合(EU)加盟27カ国のうち20カ国が参加するユーロ圏の4〜6月期の実質域内総生産(GDP)は、速報値で前期比0.3%増だった。
プラス成長は2四半期連続で、成長率は年率換算で1.0%になった。ドイツは再びマイナス成長に陥っており、回復力には鈍さも残る。
EU統計局が30日発表した。市場予想は前期比0.2%増だった。インフレ鈍化で景気底入れの兆しも出るものの、1〜3月期の年率1.1%成長とほぼ横ばいだった。
国別ではドイツが前期比0.1%減だった。マイナス成長は2四半期ぶりだ。フランスは0.3%、イタリアは0.2%、スペインは0.8%それぞれ増加した。
ドイツは不動産市況の悪化に伴う建設投資などの落ち込みが響いた。
欧州のインフレは鈍化傾向が続いてきた。
6月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比の伸び率が2.5%と、1〜3月期平均の2.6%から鈍化した。賃上げに敏感なサービス価格の高止まりが続く半面、高騰していた食品価格が落ち着く。
景気回復のけん引役である個人消費はなお鈍い。小売売上高は4月が前月比0.2%減、5月は同0.1%増とほぼ横ばいだった。
EUの執行機関である欧州委員会はインフレ鈍化で個人消費が持ち直すシナリオを描くものの、実際にお金が回るか不透明感が強まっている。
貿易収支は輸出が輸入を上回る黒字基調が続いた。
5月の貿易収支は139億ユーロ(約2.3兆円)の黒字で、前年同月は4億ユーロの赤字だった。ただエネルギー価格の落ち込みによる輸入減の影響が大きく、輸出は伸び悩む。
先行きは欧州中央銀行(ECB)の追加利下げも焦点だ。過去最速ペースの利上げは、金利の上昇を通じて欧州経済の重荷になってきたものの、ECBはインフレ鈍化を踏まえて6月に利下げに踏み切った。市場は9月の追加利下げを織り込んでいる。