2021年1月の連邦議会による大統領の正式選出手続きでは、トランプ氏の支持者らによる議会占拠
事件が起きた=ロイター
米大統領選は勝敗が判明した後も2025年1月20日の次期大統領就任までに波乱が起きる可能性がある。
各州が12月に結果を承認し、連邦議会が25年1月6日に正副大統領を正式に選ぶ。この過程で法廷闘争や妨害行為があれば円滑な政権移行は難しくなる。
選挙結果を承認するまでの過程は本来、形式的な手続きだった。敗北した候補が抵抗すれば注目される。
20年の大統領選は共和党のトランプ前大統領陣営が激戦州で敗北した結果を覆そうと60件以上の訴訟を起こした。大半が失敗し結果は変わらなかった。
00年は共和のブッシュ候補が民主党のゴア候補を僅差で上回った南部フロリダ州の結果が物議を醸した。再集計の是非を巡り、1カ月以上法廷闘争を繰り広げた。
連邦最高裁が同年12月12日、公平な再集計を期限内に完了できないと判断した。ゴア氏が撤退を表明して決着した。
今回も民主、共和両陣営が弁護団を結成して法廷闘争を準備している。
20年の混乱の教訓から22年に成立した「選挙人集計改革法」は、州による選挙結果認定への異議申し立ては連邦判事3人が速やかに審理すると定めた。12月17日の選挙人投票までに最高裁が最終判断を示す。
次の関門は選挙結果通りに選挙人投票が実施されるかどうかだ。大統領選は有権者が各州の選挙人を選び、その選挙人が正副大統領を選ぶ間接選挙の形式を取る。
両候補はそれぞれ事前に各州の選挙人を選ぶ。12月17日に各州で勝利した候補の選挙人が集まって投票する。例えばハリス氏が西部カリフォルニア州で勝てば、民主が選んだ54人の選挙人全員がハリス氏に投票する。
自党の指名候補に投票しない「不誠実な選挙人」が現れることがある。16年大統領選は民主、共和両党で史上最多の造反者が出たが、大勢に影響はなかった。
20年は南部ジョージア州などでトランプ氏が勝利したと偽る「偽の選挙人」がひそかに選挙人投票を実施し、虚偽の選挙人投票証明書を連邦議会に送ろうとしたとして関係者が起訴された。
米CNNによると、20年大統領選で「偽の選挙人」だった14人が今回も激戦州の共和選挙人を務める見通しだという。CNNはトランプ氏が敗北した場合、こうした選挙人が再び混乱を起こす恐れがあると指摘している。
最後の関門が25年1月6日の連邦議会上下両院合同会議となる。選挙人投票の結果を確認し、正副大統領を正式に選出する。21年はトランプ氏の支持者がこの手続きを妨害しようと連邦議会占拠事件を起こした。
トランプ氏は議長を務める副大統領にはバイデン大統領の勝利を阻止できる権限があると主張し、当時副大統領だったペンス氏に圧力をかけた。
選挙人集計改革法は副大統領の役割は儀礼的で、選挙結果を認定したり覆したりする権限がないと明確にした。それでも暴動のリスクは消えないため今回は議会周辺の警備が一段と厳しくなる見通しだ。
トランプ氏が当選した場合、議会占拠事件に関わった同氏には大統領に就く資格がないと民主議員が訴える可能性もある。反乱や反逆に関わった議員や公務員が再び公職に就くことを禁じた憲法修正14条3項に違反すると主張し、共和ともめる可能性がある。
(ワシントン=芦塚智子)
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