平壌国際空港で言葉を交わす北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(右)とロシアのプーチン大統領(6月)
=朝鮮中央通信・共同
【ワシントン=坂口幸裕】
米CNNは29日、西側諸国の情報機関の話としてロシアで訓練を受けていた北朝鮮軍の部隊がウクライナ国内に入ったと報じた。
場所や狙いはわかっていない。ウクライナ侵略が長引き兵力不足に陥るロシア軍に加わっている可能性がある。
韓国の情報機関、国家情報院は29日、ロシアに派遣された北朝鮮軍がウクライナとの前線まで移動したとの見方を示した。ウクライナに入ったとは確認されていなかった。
CNNは「小規模の北朝鮮軍部隊がすでにウクライナにいる」と伝えた。さらに増える見通しだと報道した。
米国防総省はロシアに派遣された北朝鮮兵が28日までに計1万人に達したと分析する。北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長はすでにウクライナと国境を接するロシア西部のクルスク州に配置されたと確認しており、戦闘の前線に送られるとみられる。
バイデン米大統領は29日、ロシア国内で訓練を受ける北朝鮮軍について「懸念している」と表明した。ウクライナは攻撃すべきかと問われ「ウクライナ領に入れば、そうだ」と話した。米東部メリーランド州ボルティモアで記者団の質問に答えた。
ウクライナは8月からクルスクに越境攻撃を開始し、一部を制圧した。奪還をめざすロシアを支える事態も想定される。北朝鮮兵が戦闘に加われば、ロシアのウクライナ侵略に初めて第三国の軍隊が参戦することになる。
CNNは、米当局者は北朝鮮軍がウクライナに入ったとは確認していないとも報道した。米政府は北朝鮮が大規模な地上軍の海外派遣で実戦経験を積む狙いがあるとみる。
ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は6月、有事の際の軍事介入条項を規定する「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだ。金正恩氏はロシアとの関係を「軍事同盟」と誇示する。
ロ朝の急接近に米国は懸念を募らせる。米メディアによると、北朝鮮がロシアに核や衛星に関する技術支援などの見返りを求めているおそれがある。
ウクライナ当局は北朝鮮兵の受け入れ準備中とみられるロシア軍前線部隊の会話を傍受したとする音声を公開した。北朝鮮兵30人に対し、通訳1人とロシアの上級将校3人を配置する計画がある。
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これまでの報道内容から考えて、北朝鮮からロシアに派遣された兵士は、偽の身分証を支給され、ロシア軍部隊の一部(ロシア国内にはアジア系民族が多数居住している)に偽装して前線に向かったとみられる。
派遣先がウクライナ軍が侵攻しているロシアのクルスク州であれば、同盟国ロシアの領土内にいるわけで、基本的に問題は生じない。
だが、実戦経験を積ませる狙いや、兵力不足に悩むロシアに恩を売る狙いで、ウクライナ東部の前線に投入となると、北朝鮮は実態としてウクライナと交戦状態に入ったという見方ができる。
米国のバイデン大統領は29日、北朝鮮の兵士が越境してウクライナ国内に入る場合、ウクライナは反撃すべきとの考えを示した。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2024.10.30より引用