ポーランドのトゥスク首相は、ロシアがポーランドだけでなく世界各地の航空輸送を攻撃し、カオス(混沌)を引き起こす計画を立てていると警告した。
トゥスク首相は15日、ロシアが全世界で航空テロを計画中だという懸念は妥当なものだと
最新の情報で裏付けられたと述べた=ロイター
安全保障問題の専門家は2024年に始まったロシア政府による一連の行為を「破壊工作と威嚇のキャンペーン」と呼んで非難している。
トゥスク氏の発言もこれに同調したものだ。
同氏は15日、首都ワルシャワでポーランドを訪問していたウクライナのゼレンスキー大統領と記者会見し「ロシアがポーランドに限らず(全世界の)空域でテロ行為を計画しているという懸念は妥当なものだと最新の情報で裏付けられた」と語った。
ロシア政府は、西側諸国でこの1年の間に起きた数々の不可解な爆発や破壊行為について関与を否定している。
専門家は様々な証拠から24年7月に英国、ドイツ、ポーランドで倉庫が爆発した背後にロシアがいると分析する。
米国行きの貨物便に対するテロ攻撃の予行演習だったと考えられると話す。
NATO加盟国への大規模攻撃の準備行為か
24年4月にはドイツの軍事施設と物流施設への攻撃を企てた疑いで、ドイツ系ロシア人の男2人が独南部バイエルン州で逮捕された。
英国でも同月、ウクライナ向けの支援物資の保管倉庫に放火したとして2人の男が起訴された。
独情報機関の連邦憲法擁護庁のトーマス・ハルデンバング長官(当時)は24年10月、飛行機の貨物室に運ばれる予定の小包が離陸前に炎上したため、航空機は間一髪で墜落を免れたと語った。
英情報局保安部(MI5)のケン・マッカラム長官も、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)は「特に英国と欧州諸国の街頭で、騒乱を生み出す長期的な任務に取り組んでいる」と述べた。
(ロシアによる)多くの攻撃は北大西洋条約機構(NATO)加盟国への大規模攻撃の準備段階として西側諸国の警備態勢を調べようとしたものだ――。専門家はこのように捉えている。
英王立国際問題研究所のシニアフェロー、キア・ジャイルズ氏は「ロシアは欧州諸国の防衛態勢や対応能力を探っている」と指摘する。航空会社への計画は「大勢の民間人の犠牲を出す攻撃を実行しようとするロシア情報機関の明確な意志を示している」と話す。
航空機の飛行中に装置が爆発しなかったのは、ひとえに幸運だったにすぎないと言い切った。
By Charles Clover and Alice Hancock
(2025年1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
日経記事2025.1.27より引用