エヌビディアがけん引役となり、米株相場は最高値圏にある=ロイター
23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、連日で過去最高値を更新した。終値は前日に比べ62ドル高い3万9131ドル。半導体のエヌビディアの好決算をきっかけに株式相場が再び騰勢を強めている。
アップルやマイクロソフトなどの巨大ハイテクの7銘柄「マグニフィセント・セブン(壮大な7社、M7)」の中でも、今はエヌビディアが最大の株高のけん引役となっている。
23日のエヌビディアは一時5%上昇し、時価総額が2兆ドルを超えた。米国市場で2兆ドルを超えた企業はアップル、マイクロソフトに続く3社目だ。
昨年6月に1兆ドル超えを達成し、わずか8カ月で時価総額を1兆ドル増やした。
「安らかに眠れ、M7時代」。ジョーンズ・トレーディングのマイケル・オルーク氏は22日にこんなメモを出した。
今年に入り、四半期決算の発表が一巡し、エヌビディアとメタのパフォーマンスが突出。M7全体が米株式相場をけん引する状況が変わったという内容だ。
実際、前年末から23日時点の値動きをみると、エヌビディアが59%高、メタが37%高。これに対し、アマゾン・ドット・コムは15%高、マイクロソフトは9%高、アルファベットは3%高にとどまる。テスラとアップルは下げており、むしろ相場上昇の足を引っぱっている。
予想PER(株価収益率、12カ月先ベース)は、エヌビディアが30倍台、メタが20倍台。株価は急騰しているが、アマゾン(40倍前後)とテスラ(60倍前後)を下回る。ジョーンズ・トレーディングのオルーク氏は「今回の決算でエヌビディアとメタが、他のM7銘柄に比べた割安さと高い成長力の両方を示した」と分析する。
今月上旬に決算発表を終え、メタの上昇に一服感が出る一方、主力の人工知能(AI)向け半導体が好調なエヌビディアへの資金流入は続いている。
反動も警戒されるが、シティグループが過去30年間のS&P500種株価指数採用銘柄の株価を分析したところ、3カ月間で35%超値上がりした企業は、その後の3カ月間もわずかながら上昇した。
米運用会社GMOの共同創業者で「バブル研究家」として知られるジェレミー・グランサム氏は今月のイベントでAIバブルの崩壊に警鐘を鳴らした。
ただし、一方で、AI向け半導体の売れ行きが好調な点については「ゴールドラッシュでシャベルを売るようなものだ」と表現した。
19世紀に全米を沸かせたゴールドラッシュで最も富を得たのは「金を掘った人ではなく、シャベルを売ったりツルハシを売ったりした人」といわれる。
新たなビジネスが一気に盛り上がる黎明(れいめい)期には、そのビジネスそのものよりも、ビジネスに欠かせないツール(道具)の方がもうかる。グランサム氏が取り上げたのはこの歴史的な教訓だ。
AIもいま、まさに普及の初期段階だ。AIを使ったサービスで利益を上げそうな会社を探すよりも、AI向け半導体を売るエヌビディアの株を買う方が確実――。ゴールドラッシュがもたらした教訓を踏まえれば、いまの投資行動は「必然」といえるかもしれない。
(NQNニューヨーク=矢内純一)