山梨県の韮崎市と隣接する北杜市~甲斐市にかけて見られる“お腰掛”と呼ばれる特殊祭祀施設
以前当ブログで紹介してから文献調査を続行していたのですが、このたび新たな情報がありましたのでご報告したいと思います。
まず、新たな“お腰掛”の存在場所ですが、北杜市 明野町誌に以前紹介した2か所の他に新たな場所に2か所ある事が判明しました。
中込のお腰掛け 現在の北杜市明野町浅尾辺り(明野町誌より転載)
永井のお腰掛け 現在の北杜市明野町上手辺り(明野町誌より転載)
2か所とも明野町誌資料より大体の場所までは特定出来たのですが、具体的な場所に関しては北杜市の教育委員会へ問い合わせ明野町の郷土研究会や地元の方にお聞きしてご尽力頂いたのですが、結局現存しているかも不明との回答を頂きました。
地誌の記述に“字中込”にある石組は「天狗の腰掛け」と呼ばれていたようでそれぞれ「山の神」を祀っていたようです。
興味深いのは、同じ石組でも小袖のもの(御崎神社境内)のものは「機織りの神」を祀り地元では機神様と呼ばれ特に女性から崇敬されて来たそうです。
以前紹介した同じ「石組のお腰掛け」があった韮崎市穂坂町の“倭文(しずり)神社”里宮、本宮とも 天羽槌雄命・天棚機姫命を祀る機織の神である事から、穂坂より小袖へ機織り職人が移住し祭祀した可能性など何かしらの関連があるものと思われ興味は尽きません。
【追記】
井桁の石枠と機神様との関連ですが、これはたまたま偶然で似ているだけであるのですが機織に使われる糸巻に何となく似ておりこの形からもともとの「山の神」信仰が機織信仰へと変遷していったのかもしれません。(写真出典:こちら)
以下にお腰掛の所在地の一覧を記します。(クリックして拡大)
🔳菖蒲沢八幡神社のお腰掛が新設された情報があったので再訪して参りました。
新設された神門
真新しいお腰掛 前回訪問が2021年3月で、新設された神門の奉納日が2121年3月吉日とありましたので、我々が訪れてすぐに建て直されたものと思われます。
俯瞰した全容
柱と貫部分は、興味深い独特の組み方をしています。
前回訪問時 傍らに何気に置かれていた社号標が中央に祀られていました。
背後に磐座
並んで鎮座している八幡神社
今でも大切に祀られているのを伺い知る事が出来ます。
他では見た事も無い特定の地域のみに集中して祀られている「お腰掛け」
その形態は、前回part4で結論したように「神籬」である事はその形から間違えないものと思われますが、山梨は丸石神をはじめ特異な信仰形態が今も残る大変興味深い地域でもあります。
お隣諏訪地方に見られる「ミシャグチ信仰」や自宅近くの金生遺跡に見られるような古くからの縄文の祭祀遺跡が多く残る地でもあり、まだまだ知られざる祭祀遺構も存在しているものと思われ続けて地方の文献調査などを中心に、続けていくつもりです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます