“驚愕、逆転、慟哭、そして感動”
最近はハートフル系ばかりを読んでいたので、たまにはミステリーをと思い、Amazonランキングをみて選んだのが、ピエール・ルメートルの『その女アレックス』だった。
この作品30万部突破のベストセラーなんだけど、その紹介文がまたすごいのだ。
「このミステリーがすごい」や「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい」などなどいろんなミステリー部門の第一位となっていて、もろもろ合わせて史上初の6冠達成!だって。
どんだけ凄いんだっていうのでさっそく読んでみた。
ヴォージラール通りのレストラン「モン=トネール」での食事を終えたアレックスは、ちょうどバス停にバスが止まったのを見つけ、足早に向かったが、不意に気が変わり、アパルトマンまで歩いて帰ることにする。
数メートル先で歩道に片輪を乗り上げて止まっている白いバンがいたので、アレックスは建物に身を寄せて通り抜けようとした瞬間、後ろから男に殴り倒され、あっという間に手足を縛られ車の中に放り込まれてしまう・・・。
ここずっと癒し系をよって読んでいたせいなのか、とにかく文面があまりにも刺激的を通り越して残虐であり、読み終わった後はただやっと終わったという安心感、やっとほっと一息つけたという安らぎみたいなものを感じた。
内容については、文庫本の帯に「101ページ以降の展開は、誰にも話さないでください」、なんて書かれるので、とりあえずそこまでのあらすじ。
拉致されたアレックスはある建物の冷たく暗い部屋で、狭い木の檻の中に裸で監禁されてしまうんだけど、この100ページほどのページ数を割いて語られるのは、ほぼその檻の中でもだえ苦しむアレックスの生々しい描写。
いつまで続くんだとうんざりするぐらいねちねちと語られていくだけで、早く次の展開に移ってほしいっていうストレスに、なかなかページが進まない。
そしてこの物語にはもう一人メインとなる刑事が登場するんだけど、数年前ある事件で妻を殺されていて、現場に復帰できずにいたカミーユという刑事の捜査状況が、アレックスの監禁のシーンと並行して語られていく。
そして何しろ驚愕と感動のストーリーだと、かなりハードルが挙げられた状態を故意に提供してくるので、101ページ以降は当然予想を遥かに超えた衝撃の展開が待ち受けている。
なにより本の帯にはもう一文、“その女が、世界を震撼させる”と、監禁されている女になんで震撼させられるのかという謎が、大きく立ちはだかる。
徐々に解き明かされる真実は、最後まで読み進める原動力として、激しく読者を刺激し続けるが、ただ読み進めていくたびに味わされる、人間という生き物の中に脈打ち続ける、吐き気すら催す醜悪な血の味は、繰り返し気分を滅入らしていく。
これを面白い小説だと言えるのかわからないが、よくこんなえげつない話を作り出したものだと、作者の頭の中に広がる闇の世界にこそ驚愕させられる。
唯一の救いは、カミーユを部下としてサポートしていく、どこまでも誠実なルイと、どこまでも人間臭いアルマンの姿だけだった。
改めて文庫本のジャケットのイラストを見ると、よくこんな本を読んだなと自分に驚いてしまう。
人間平穏な生活が続くと、不意に刺激的な何かを欲するというか、血が求めてしまうんだなと、ふと考えてしまい、なんだかぞっとしてしまった。
さあ、次は楽しい本を読もう!
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