星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

コルドバ便り(3) ホストファミリーの横顔

2008年03月30日 00時50分28秒 | Weblog
これから4週間お世話になるホストファミリーの横顔を紹介しておきましょう。

ホストたる、わが弟の職業は「アボガド」。???。アボカドを大きくして色抜きしたような体つきの弟の職業abogadoを辞書で調べたら、なんと弁護士。人は見かけによらないものです。法学博士であるとともに哲学の修士課程を修めた哲学者でもあるとのこと。特にニーチェの信奉者で、話の端々にカント、ヘーゲルその他聞いたことだけはある哲人の言を引用することしばしば。インテリです。

ラテン語、ギリシャ語、ロシア語、フランス語、ドイツ語の読み書きを自由に操るとのことで、「英語だけがダメ」と聞いたときは思わず自分の耳を疑ったものです。兄貴のスペイン語習得を早めるために英語能力を隠しているんじゃないかと疑ったのですが、さすがは弁護士、嘘ではありませんでした。こんなことってあるんですかねぇ?祖父の代にフランスからアルゼンチンに移住したとのこと。

その奥さん、当家においての私の妹は、祖父の代にイタリアから移住して、ブエノスアイレスで建築業を営んでいた親父さんに可愛がられて育てられた、根っからの「ブエノスアイレスっ子」。自分でも商売(negocio)をして、成功と挫折を経験した後に、今は100パーセント専業主婦。イタリアンを初めとして料理の腕は確かで、私の一ヶ月の食生活を支えていただいたことに感謝。掃除洗濯が好きで、下着にまでアイロンをかけてもらったのは人生初体験でした。

アルゼンチンのスペイン語のリズムと抑揚は、私の耳にはイタリア語のように聞こえてならないのです。特にこの妹の喋っている言葉は、実はイタリア語ではないのかと疑いたくなるほど、私のイメージするスペイン語とは遠くかけ離れた言葉に聞こえるのです。聞いているだけなら、ある種の音楽のようにリズミカルで心地良いのですが、自分が理解したうえで反応を求められる場面では、全く絶望的に打ちのめされる、そんな喋り方をする、生粋のブエノスアイレス娘だったのです。娘さん時代に英語の勉強は全くしなかったようで、英語の「えの字」も喋らずスペイン語オンリー。

「こちとら素人なんだから、もっとゆっくり喋ってくれよ!」と心の中で叫び続けるのですが、その声は彼女には届かず、情け容赦もなくリズミカルに襲い掛かってきます。ゆっくり話して貰っても到底理解できないからと諦め切って、喋るだけ喋らせておいて、「ごめん、僕には理解できない」と詫びを入れたときに、妹が私に向ける眼差しは、拍子抜けした気持ちを隠しませんが、なんとか理解させようと二度三度と繰り返してくれるので、こちらは申し訳なくって・・・。と、妹とはこんな按配のコミュニケーションの繰り返しなのです。

この二人は夫々に別姓を名乗っております。ということは夫々に離婚歴があり、同居はしているものの結婚はしていない、つまり同棲(共同生活)中なのですね。夫々の娘さんを一人ずつ連れて合計4人が共同生活をしている家に、5人目の共同生活者として私が加わったということですね、早い話が。

わが妹の娘は21歳の法学部大学生。大学生なら英語の一言二言は喋るだろうと期待したら・・・・本当に一言、二言だけでした。「これから勉強しようと思っている。勉強って英語でStudyだったよね?」だって。 目の前真っ暗、頭の中真っ白!!

弟の娘は中度のダウン症で自分の身の回りの始末はできるものの、食べることと寝ることが中心の毎日で、機嫌のいいときはリビングのソファーでくつろぐけれども自室で横になっていることが多い日常です。家族と交わす言葉の数は限られていますが、紛れも無いスペイン語をゆっくり喋るので、彼女のスペイン語が私には一番分かりやすいのです。彼女ときちんと筋道を立てた会話が出来ればベストなのですが、お互いのコミュニケーション能力に限界があり、残念ながらそれは叶いません。

結論を急ぎましょう!

英語を介在してのコミュニケーションが全く取れそうに無いこの状況をどう評価するか?どう対処するか?スペイン語を学ぶには最高の環境と前向きに捕らえるか、失語症状態はお先真っ暗と引きこもるのか?

どうする、どうする?