星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

ケロウナ便り(104) ある松茸ハンターの告白(1)

2010年09月16日 13時53分55秒 | Weblog
夏の終わりに毎年訪れる松茸街道。師匠の付き添いで5年前に始まったアロー湖沿いの松茸狩りも今年で単独行動3年目、この世界ではそろそろベテランの域に入った、ある松茸ハンターのお話です。

3年前に開発した漁場へは二台のフェリーを乗り継いで行くのですが、二台目のフェリーにはいつも他の客がいたことがありません。今日はハンターが指南役を勤める二組のお客さんの他に林業関連機械の整備をするという地元の業者のトラックがフェリーに同乗していて、いつになく活気を呈している今日のフェリーです。

松茸狩りとは無関係に見える整備業者との何気ない会話からでも情報を得るのがベテランのベテランたる所以です。
「やあ、おつかれさま。どう、松茸ハンター最近結構来てる?」
「今日も先ほどのフェリーで二組ほど森に入って行ったよ」
「まだちょっと早いかなと思ったんだけど、お客さんもあるし、来てみたのよ」
「そろそろ季節が始まったみたいで、それなりに採れてるみたいよ。でも、今年は好物のブラックベリーが不作で、食料に困った熊が例年以上のペースで餌探しに来てるらしいから注意したほうがいいよ、本当の話」
「そりゃ気をつけなくちゃね。サンキュー!」

熊避けの鈴をベルトに下げたり、森の中で迷子にならないようにホイッスルを各自持って、随時笛を鳴らして連絡しあい、単独行動は慎むようにと、指南役のベテランハンターとしては培ったノウハウを惜しげなく新人ハンターに伝授しています。人材育成もベテランです。

ハンターの十八番の漁場は林道の悪路を40キロ近く走った奥のまた奥なので、新人教育には無理があろうと判断し、今日は入り口から5~6キロの地点で実習開始です。まず小手調べといった趣ですね。

9月下旬~10月上旬が松茸シーズンなので、今回はまだ1~2週間早いかなと危惧したとおり松茸の「まの字」も見当たる気配がありません。例年ならたくさん見つかるシャンテレールも今年はあの白い姿を現しません。ハンターの責任でもないのに、なんとかしてあげなくちゃと、責任感の強いハンターは心を痛めながらの実習教育です。

そのうちハンターのカミさん(実は彼女の方がプロに近いワザを持っているセミプロだと専門家筋は見ています)が「ちょっと育ち過ぎだけど、マツタケがいたよ!」と第一号発見!新人たちから尊敬と羨望のまなざしを一身に浴びています。セミプロさんもまんざらでもなさそうです。ホンモノ松茸の香りを新人の鼻先に持って行って「こんな匂いのを探すのよ!」と、こちらも後進の指導に余念がありません。

ピクニック気分でお昼ご飯を美味しくいただいてから、フェリーに戻る道すがらに2~3スポットに立ち寄って様子を見ましたが、新人が2~3本の小ぶりの松茸をヒットした以外は思わしくありません。こういう時は長居せずに次のチャンスでの挑戦を思い描いて、潔く撤退することも必要と、ベテランが一行を説得して帰路につきました。

朝通った同じ道を帰るのも芸がないので、ちょっと遠回りながらナカスプの街を経由してレベルストーク経由で帰ることとし、その途中で5年前に師匠に教わったポイントに立ち寄ってみようと、どこまでも新人思いのベテランハンターです。

でも、そろそろ4時近くでもあり、これまた長居せずに、文字通り「サクっと」立ち寄るだけであることを一行に説明することも怠らない、何事にも慎重かつ用意周到なベテランです。

ベテランハンター、セミプロのカミさんは言うに及ばず、二組のお客さんの誰もが想像すらしていなかったことが、この後起こるのです。あってはいけないことが起こったのです。