小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

池上彰がレギュラー番組の司会者に復活した本当の理由。

2014-04-15 07:25:36 | Weblog
 今14日の午後8時過ぎ。テレビを見ながら、このブログを書いている。
 見ているテレビですか? 決まってるじゃないか。テレビ朝日が午後7時から放映している『ここがポイント◌◌』だ。◌◌は人の名前。誰だって? 池上彰に決まっているでしょう。
 今回のブログには池上に敬称をつけない。私のブログでは異例中の異例だ。
 池上は2、3年ほど前だったと記憶しているが、「私の仕事はいつの間にかビジネスになっていた。ジャーナリストに戻る」と、ずいぶんかっこいいことを言ってテレビのレギュラー番組を降板した。メディアは、テレビを除いて、そうした池上の姿勢を称賛した。読売新聞など「寸評」で「私たちも見習わなければ」とまで持ち上げた。
 その池上が14日からテレビ朝日のニュースショーにレギュラー出演するという。私は1年365日、基本的に7時からはNHKのニュース7と『クローズアップ現代』を見ることにしている。プロ野球のファンで、好きなチームの試合を欠かさず見たいため(ただし優勝争いから脱落するまでだが)高い金を払ってスカパーの「プロ野球セット」を契約している。好きなチームが有利に試合を進めていても、午後7時になったらNHKにチャンネルを切り替える。
 その私が14日だけは7時から1~2分ほどだけテレビ朝日にチャンネルを合わせた。池上がニュースショーにレギュラー復活する理由をどう説明するかに興味があったからだ。番組については「ニュースのポイントを分かりやすく解説したい」と語ったが、「ジャーナリストに戻る」と、かっこいいことを言ってレギュラー番組から降りたことから変節した理由をどう説明するかを聞きたかったのだが、その説明は一切なかった。
 政治家が説明責任を果たさないことには慣れっこになっていた私も、ジャーナリストになることを公言した池上が、まさか説明責任を果たさず、恥ずかしげもなく民放ニュースショーのレギュラー番組によく戻れたものだ。自称「ジャーナリスト」も地に堕ちたものだという感慨をぬぐえない。
 私は池上がテレビのレギュラー番組に出ること自体に反対しているわけではない。民放のニュースショーとしては比較的ジャーナリズムに近い番組だし、私の孫が小学生のころに池上ファンだったくらいで、確かに解説の分かりやすさはニュース・キャスターのなかでは群を抜いた存在であることは私も認めている。だから、もともと「解説屋」で視聴率を稼いでいたのだから、せっかく成功しているのにもったいないな、と思っていたくらいだ。
 池上の番組を見ていた人たちも、彼にジャーナリズムを期待していたわけではないし、単純化しすぎるきらいはあったにしても、複雑に絡み合った様々な問題を小学生にも理解できるように解説する能力は、それはそれで社会が求める重要な要素であった。だから池上がみのもんた氏のように民放各局から引っ
張りだこになっていたことを、何も恥じる必要はなかったと思う。
 それを何を勘違いしたのか、「ジャーナリストに戻る」と宣言して、せっかく高い視聴率を稼いでいた民放のニュースショー番組のレギュラー司会者の地位を投げ捨てた。池上はNHKの出身だから、ジャーナリストの世界にあこがれていたのかもしれない。憧れるのは自分の勝手だが、テレビのニュースショーから距離を置いてみて、ではジャーナリストとして何ができたのかというと、テレビのニュースショーでやってきた分かりやすい解説を活字の世界でやっただけだった。
 活字の世界となると、語り口とは別の要素が要求される。ただわかりやすさだけでは受け入れられない。テレビの場合は30分くらいの間が空けば、言っていることがちぐはぐになっても視聴者から気づかれずに済むが、活字の世界は終始論理的一貫性がないと化けの皮がすぐはがれる。そのことに池上がやっと気が付いたのであれば、「私は勘違いしていた。ジャーナリストには向いていないことが分かった。私はテレビの世界でないと生きていけない人間だということが分かったので、テレビ朝日さんにお世話になることにした」というのであれば、私も目くじらなど立てるつもりはないし、やはり人はそれぞれ向き不向きはあるのだから、向かない世界に挑戦したことを糧としてテレビの世界で活かせるようにすればいい、と応援団に回っていた。
 ま、池上の解説は分かりやすいし面白くもあるので、私もせいぜい見るようにしたいと思うが、くれぐれも気を付けてほしいのは、政治家に対し「説明責任云々」といった批判はしないことだ。天に唾するようなものだからだ。
 イタチの最後っ屁――この番組の最後に池上が石破幹事長に集団的自衛権についてインタビューした。「みっともない」の一言に尽きる。この番組を見ていた人は、これがジャーナリストを目指した人か、と呆れたと思う。
 私は何も池上に、田原総一郎氏のように傲慢不遜にふるまえと言いたいのではない。少なくともNHKの『クローズアップ現代』のメインキャスターを務めている国谷裕子氏のように、インタビュー相手に対する礼儀をわきまえながら、しかしジャーナリストとしての毅然とした姿勢で追及すべきことは追及してほしかった。池上の石破氏に対する態度は、まるで顧客にペコペコするセールスマンのようだった。「これではジャーナリストになれなかったのも無理はなかったな」と、妙に合点がいったことを付け加えておこう。この番組の成功のために、池上にはインタビューはさせない方がいいとだけアドバイスしておこう。