
三月に入っても雪って降るんだよね。
三男が生まれたのは、三月の終わりごろだった。夜半を過ぎても中々生れず、私は唸っていた。夜中勤務を任されている年配の看護師さんは、
「中々出て来ないね、三人目なのにねー」と、ため息をついていた。
苦しい中で言われたので、覚えている。えんえん七転八倒しながら、産まれたのは、明けがた5時すぎ。
その時、
「あ~~!」「やっぱり」
と言う医者と看護婦さんのどよめきが。どうやら、へその尾が首に絡まっていたらしい。
私はもう何でもいいよ、苦しみから解放され、安堵のため息が出た。
しばらくして「おぎゃー」という元気な声がした。
看護婦さんが、おくるみに包まれた赤子を連れてきた。
「かわいい~~」という言葉が思わず口を衝いて出た。ほおを触った。この瞬間に、あんなに苦しんだのが、すっ飛んで行って、うれし涙が頬を伝っていった。



その朝、雪がどっと降ったらしい。カーテンを開けると、昨日とは景色が一変。窓の外はまばゆいばかりの白一色。
20年も前のお話でした。
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