アッバス・キアロスタミ監督を知ったのと、イラン映画っていいなと思ったのが映画「桜桃の味」。(1997年カンヌ国際映画祭・パルムドール受賞)。
自殺願望の中年男が、「睡眠薬を飲んで自分はこの穴の中に横たわるので、明日の朝、私の名前を呼んでも、返事がなければそのまま土をかけてくれ」と、若い兵士や神学生に頼むが次々と断られる。なおも自殺を手伝ってくれる人を探す男。土ぼこりをあげて無味乾燥した大地を行く1台の車。
三人目の貧しい老人はこの仕事を引き受けるのだが、自分も若い頃、世の中が嫌になって桑の木にロープをかけて自殺をしようと試みたことがある。しかし、ロープが中々木にかからないので、木に登ってロープをかけようとした。その時に何気なく手に触れた桑の実を口にしたんだ、おいしくて辞められず食べ続けた。妻にも食べさせてやりたいと思っったら、自殺をやめて家に帰ったんだ・・という話を自殺願望の男に聞かせるのだが、
彼の決心は変わらず、穴の中に横たわる。画面が暗闇に包まれ、どうなるの?と思った時・・・・・・クライマックスのシーンは見てのお楽しみ。
「生きているっていいな」と思う映画。
映像に写るのは荒廃し無味乾燥した景色。そして、淡々とした会話があるだけ。だから余計にクライマックスのシーンが生きてくるのかも。すがすがしい朝陽の中、生が躍動しているような・・・いい映画だった。
(パレット久茂地 リウボウホールhttp://ryubo.jp/event/?eid=00221&floor=4で見ました)
(写真はアパート階段。踊り場をキャンパスに自然の芸術が♪)