後手番大山先生の手を考えます。
第1問
飛角銀で手を作られそうです。
A 75同歩 B 65角 C 42金
第2問
この95歩はちょっと甘くて助かりました。
A 52金左 B 65角 C 52角
第3問
後手玉が安定したので攻めます。
A 77角 B 77歩成 C 93香
第4問
先手の返し技も含めて読みます。
A 57銀不成 B 79飛 C 59飛
今日の棋譜20201009
昭和27年11月、升田幸三先生と読売全八段戦決勝です。
升田先生の先手で相掛りです。
大山先生も浮き飛車で
腰掛銀の先後同型で進行します。
玉の位置の違いがありますが、ほぼ先後同型です。この腰掛銀の攻めは、35歩同歩45銀同銀同銀同桂44歩33歩・・・というのが代表的で、「ガッチャン銀」と呼ばれます。シルバーとシルバーのぶつかる金属音から名前が付いた、激しい将棋です。ここでは後手の52玉型が2，3筋から遠ざかっているので成立するかどうか。後手が42玉52金の形ならば先手有利になる定跡があります。子供のころ松田先生の本で読みました(今はないので確認できませんが)。後手が65歩を突いてあるとうまくいかないとも。
別の攻め方は35歩同歩24歩同歩23歩34飛とする内藤流の攻め方。後手が42玉65歩の形ならば、35歩同歩24歩同歩同飛23歩22角成同銀54飛同歩64角という攻め方もあります。
激しく攻めると切れそうなので、升田先生は銀交換だけにとどめました。
大山先生の46銀は35歩同歩24歩同歩同飛23歩64飛などの攻め筋のけん制です。対して升田先生は35歩を突き捨てて
飛を5筋に回るというの感覚が現代的です。
大山先生は角を交換して33桂、28角をねらっています。33桂を跳ねないで28角66角81飛11角成19角成・・・ならば激しい攻め合いになったでしょう。
升田先生は75歩、後手の飛と玉が近いから手になると読みました。75同歩ならば74歩同飛71角から角を切って83銀84飛74金などねらったのでしょう。大山先生は71角の筋が怖い(72金とかわせない)ので42金。
升田先生は74歩同飛75歩、75同飛ならば76歩から(74飛75銀、85飛74角など）飛を捕まえられます。
84飛に74角というのは厳しい王手です。63金は同角成同玉74金ですし、63角は同角成同金72銀62金83銀成同飛74角（あるいは74角～83角成)という筋があります。
51玉に95歩は、取れば92歩ですが取ってもらえないでしょう。代えて63銀61金は決め手が見えません。86飛は85歩、なので77桂～86飛でしたか。交換でも飛を手に入れたら先手優勢です。
大山先生は端を手抜いて52金左～42玉、ずいぶん後手玉が安全になりました。
93歩成に77歩、この応手が多くて悩むのですが、79金か同銀か同桂です。飛の横利きがあるので77同桂が正解(というか86飛の筋もできる)でした。
升田先生の77同銀は桂を跳ねられて損です。
単純な桂の交換ならば良いのですが、空間がある時は76歩を打つのが手筋です。
65桂同歩同銀に77歩成、同玉は59角ですから
77同金88角95香、大山先生は歩切れなのですが
飛角を交換して79角打、これがうるさい攻めです。
78玉99角成76金(86銀の受けもある)
88角成68玉36桂、これで左右挟撃です。金をどこに逃げるかも悩ましいですが
38金89馬寄に81飛が失敗です。玉を早逃げして受けるスペースを作らねばなりませんでした。
78馬寄59玉79馬寄と迫られて、49玉は67馬から飛を取られてしまいます。銀を打って67馬を受けるのですが
67馬引49玉67馬右
同銀同馬58角56馬、飛を取られて
56同銀68銀、59飛を受けるために
39玉57銀不成で終わったかと思いましたが、升田先生は54桂。王手で銀を抜けるのですね。
難しくなったようですが、桂を渡しているので
桂で攻められるのが痛いです。
46同角同銀36角、二枚換えで後手の攻め駒が減ったようでも56銀を取られる形です。
駒損にもなりましたし、攻め駒の数も違います。
25桂打を同桂同桂76竜、金を取られて
33桂成はあるものの、31飛成としても後手玉を捕まえられません。83飛成のほうが良いですが
73歩で止められて後続の攻めがなく、58角で竜取りにしたら47銀打。47同角はまだ少し長いですが、後手玉が安全なので勝ち目はありません。
76竜を取って寄せてくれ、です。38銀成から
簡単な詰みでした。
新しい戦型では升田先生の序盤感覚が光るのですが、お互いさまにせよ、その戦型での経験が少ないので中終盤の急所を見抜くのは大変です。升田先生の残念譜でした。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.44 棋譜ファイル ----
開始日時：1952/11/12
手合割：平手
先手：升田幸三8段
後手：大山名人
手数----指手--
1 ２六歩(27)
2 ８四歩(83)
3 ２五歩(26)
4 ８五歩(84)
5 ７八金(69)
6 ３二金(41)
7 ２四歩(25)
8 同 歩(23)
9 同 飛(28)
10 ２三歩打
11 ２六飛(24)
12 ３四歩(33)
13 ４八銀(39)
14 ６二銀(71)
15 １六歩(17)
16 １四歩(13)
17 ９六歩(97)
18 ９四歩(93)
19 ４六歩(47)
20 ８六歩(85)
21 同 歩(87)
22 同 飛(82)
23 ８七歩打
24 ８四飛(86)
25 ４七銀(48)
26 ６四歩(63)
27 ７六歩(77)
28 ６三銀(62)
29 ４八金(49)
30 ６二金(61)
31 ５六銀(47)
32 ５四銀(63)
33 ３六歩(37)
34 ７四歩(73)
35 ３七桂(29)
36 ５二玉(51)
37 ６八玉(59)
38 ７三桂(81)
39 ４五銀(56)
40 同 銀(54)
41 同 歩(46)
42 ４六銀打
43 ３五歩(36)
44 同 銀(46)
45 ５六飛(26)
46 ８八角成(22)
47 同 銀(79)
48 ３三桂(21)
49 ７五歩(76)
50 ４二金(32)
51 ７四歩(75)
52 同 飛(84)
53 ７五歩打
54 ８四飛(74)
55 ７四角打
56 ５一玉(52)
57 ９五歩(96)
58 ５二金(42)
59 ９四歩(95)
60 ４二玉(51)
61 ９三歩成(94)
62 ７七歩打
63 同 銀(88)
64 ６五桂(73)
65 ６六銀(77)
66 ７七歩打
67 同 桂(89)
68 ７六歩打
69 ６五桂(77)
70 同 歩(64)
71 同 銀(66)
72 ７七歩成(76)
73 同 金(78)
74 ８八角打
75 ９五香(99)
76 ７四飛(84)
77 同 歩(75)
78 ７九角打
79 ７八玉(68)
80 ９九角成(88)
81 ７六金(77)
82 ８八角成(79)
83 ６八玉(78)
84 ３六桂打
85 ３八金(48)
86 ８九馬(99)
87 ８一飛打
88 ７八馬(88)
89 ５九玉(68)
90 ７九馬(89)
91 ５八銀打
92 ６八馬(79)
93 ４九玉(59)
94 ６七馬(78)
95 同 銀(58)
96 同 馬(68)
97 ５八角打
98 ５六馬(67)
99 同 銀(65)
100 ６八銀打
101 ３九玉(49)
102 ５七銀(68)
103 ５四桂打
104 同 歩(53)
105 ７五角打
106 ６四歩打
107 ５七角(75)
108 ５九飛打
109 ４九銀打
110 ４六桂打
111 同 角(57)
112 同 銀(35)
113 ３六角(58)
114 ２六角打
115 ２九桂打
116 ５六飛成(59)
117 ２五桂打
118 同 桂(33)
119 同 桂(37)
120 ７六龍(56)
121 ３三桂成(25)
122 ５三玉(42)
123 ８三飛成(81)
124 ７三歩打
125 ５八角(36)
126 ４七銀打
127 ７六角(58)
128 ３八銀成(47)
129 同 銀(49)
130 ４八金打
131 ２八玉(39)
132 ３八金(48)
133 同 玉(28)
134 ３七金打
135 投了
まで134手で後手の勝ち
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