とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

そば祭り

2012-11-16 22:05:39 | 日記
そば祭り




 出雲そばはそば皮が粉に入っているので、ご覧のように色が黒っぽい。本場の出雲に住んでいるものはこれが当たり前で、白いそばにはちょっと馴染めない。個人的には熱い釜あげそばが好きである。

 
 岡田さんの農園のみなさんの提案で、ご縁市場に、ご縁食堂が開店する運びとなりました。その開店の日、岡田さんから電話がありました。そば祭りをするので長柄さんとぜひ食べに来てくださいというお誘いでした。500食は無料だということで、開店時刻より少し早めに二人で出かけました。しかし、市場にはもうたくさんの人が列を作って待っていました。私たちもその列に加わって、やっと無料のそばありつきました。入り口で岡田さんが大声で「十割そば」だということを宣伝していました。


 岡田さん、お言葉に甘えて来ました、すごい人気ですね、と私。

 前宣伝はあまりしていませんが、予想以上でした。この調子で営業したいですね。

 このテーブルのメニューにはたくさん出ていますが、これ、全部農園のお方が作られるんですか。

 そうです。農場が忙しいときは、地元のお方に手伝って貰いたいと思っています。農園の仲間は、こういうことが楽しいからやってますので、儲けは度外視ですよ。

 商売ですから、そういうことでは続かないじゃないですか、と長柄さんがいつもの突っ込みを入れました。

 いやいや、ここが地元の憩いの場になれば、私たちはそれで満足です。農園では少しばかり利益が上がっていますから、会員への分配分の残りはここにつぎ込みます。何より土地が有効利用されていくことで地元は元気が出てきます。

 ちょくちょく来させて貰います。この市場に食べ物の匂いが漂うと、家庭的ないい雰囲気になりますね。私は岡田さんの大きな心を感じて嬉しくなりました。

 郁子さんは厨房ですか。

 ああそうです。お話しするのが遅れましたが、お父さんがこちらに移られ、一緒に住んでおられます。

 えっ、坂本龍太郎さんが来ておられる・・・。

 ええ、美術館の開設ということで、こちらでその準備をしておられます。

 そうですか。

 もともと小学校ですから、改装するにしても随分制約があるそうで、苦労しておられます。

 本格的なものにするには新築が理想的ですね。

 畝本さん、ご縁市場は関係のところが一つにまとまっていた方が何かといいのじゃないかと・・・。

 それは言えますね。地域興しの拠点ですからね。私がそう言うと、当の本人が厨房から出て、こちらに近づいて来ました。

 長柄さん、畝本さん、お久しぶりです。

 岡田さんから伺いましだが、もうこちらでお住まいとか。

 ええ、こちらにいた方がいろいろ便利ですから。古賀所長と一緒にあちこちお願いに歩いています。

 美術館ですから空調などのいろいろな設備が必要だと思いますが。

 そこなんです。美術品、特に絵画は神経を使います。しかし、出来ることしかできません。不十分でも早くスタートさせたいと思っています。

 絵の方は集まりそうですか。

 ええ、それは大丈夫です。特に芸能人を主体に一応の数は準備出来ています。・・・しかし、メインを何にするか今思案しています。・・・私は、その話を聞きながら、しきりに中村仙女さんの作品のことを考えでいました。

東北関東大震災 緊急支援クリック募金←クリック募金にご協力ください。