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私は、お金と言われ、ぐらぐらっとしたのです。私に理性というものがもともとあったのか、なかったのか。いや、そんなことではなく、素直にぐっときたのです。ヤクソクしてくれたらいくらでも貸せてあげる。その人は言いました。相当酔っ払っている感じでした。
「約束・・・?」
「そう、ヤクソクよ」
「どういう ?」
「今は言わない」
「わからないことを約束できない」
「分からなくても、約束はできるわ」
「そんな・・・」
「ははっ、怖いんだ」
「私を試している・・・」
「そうかも」
彼女は、通りかかったタクシーを呼び止めました。そして、私の手を引っ張って乗せました。北町の山根アパート。そう運転手に告げました。まもなくタクシーがアパートに着きました。また、手を引っ張って階段を上がりました。ここが私の部屋。そう言って、私を中に押し込みました。卓袱台の前に座ると、また酒が出てきました。
「お茶がよかったかしら」
「もう、止めなさい。これ以上飲んだら・・・」
「ははっ、死ぬかもね」
薄笑いを浮かべて私を見つめました。
「約束って、・・・どういう・・・」
「だから言えない」
彼女は、コップの酒を一口飲んで立ち上がり、隣の部屋に入りました。しばらくすると紙袋を持って出てきました。いくら欲しいの ? 私はじっとその包を見つめていました。
「いくらでも欲しい・・・。そんな顔をしている」
彼女は、どさっと袋を私の前に投げました。
「500万。・・・足らないの ?」
「・・・」
「足らなかったら、また来てちょうだい」
「どうして私に・・・」
「直感。顔に書いてある」
「・・・」
「あのね。・・・ははっ。私は天使になりたいの」
「どういうこと ?」
「天使にしてくれる ?」
彼女は、急に真顔になりました。
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