とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

26 私が死んだ訳 3

2015-05-12 23:47:18 | 日記



お金欲しさに・・・。それとも、また、ほんとに好きになってしまったのか。私は、その女のところへ通うようになっていました。貸せてもらった500万は花りんの病気治療費として冴子に渡してしまいました。こんな大金、どうしたの ? と冴子は言いましたが、なんにも答えませんでした。

 「あれでは足りないみたいね」

 「・・・」

 「じゃ、もう500万・・・」

 「・・・」

 女は、また、紙袋を私の前にどさっと投げました。

 「ありがと、・・・いずれ返すから」

 「ははっ、どうやって返すの ?」

 「・・・なんとか工面するから」

 「えっ、どこで ?・・・はははっ、聞くだけやぼね」

 「・・・」

 「じゃ、約束を実行してくれますね」

 「その、約束って・・・」

 「だから、天使にしてくれるということ」

 「また、天使か」

 「冴子とか京子とかいう人、私に会わせてくれる ?」

「それはできない」

 「ははっ、冗談だよ。・・・貴方は正直だね」

 「もう一つ聞きたいことがある。・・・旦那と子どもはどうしてる ?」

「正直だね。そんなものいないよ」

 「嘘だろ ?」

「嘘かほんとか、・・・まあ、どっちでもいい、ということにしておきましょう」

 「不思議な人だね」

 「あら、貴方も不思議だらけだよ。ははっ、リアルな話は苦手・・・」

 「・・・」

 「こんど貴方が来た時は、私の言うことをすべて実行していただきます」

 「どういうこと ?」

 彼女は、私を見つめているだけでした。
 
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