Sera の本棚

感動した本のことや映画を見たり、コンサートへ行ったりした感想、高槻の写真など記録できたらいいなあと思います。

「チェリー」

2008-05-10 13:35:29 | 

野中ともそ作「チェリー」を読みました。70歳代の天真爛漫な女性モリーと中学1年生帰国子女ショウタとの出会いと別れと言ってしまえば簡単なのですが、内容は濃い~ものでした。最初は淡々と読み、途中からどんどん読むスピードが上がってきます。モリーとショウタの気持ちが接近するスピードにあわせるように・・・モリーは普通の人には見えない「ハーヴェイ・ジュニア」―ウサギのような見かけはクズリのような?らしい―と暮らしていてショウタには見えないけれど幼い日に確かにハーヴェイ・ジュニアに話しかけた記憶があります。ショウタは見えないものに話しかけたり頭をなでたりするモリーの魔法めいた世界へ引きこまれていきます。といってもこれはおとぎ話ではありません。さくらんぼをたくさん栽培しているアメリカ北西部の州のお話なのです。モリーはお料理がとても上手くて中でもチェリー・パイが特別上手で、チェリー・フェスティバルのパイ・コンテストで審査員特別賞に輝きます。みんなを幸せにするためにではなくて一番喜ばせたい人をここぞって時に喜ばせるために遊園地の海賊船からヨーグルト・チェリーを撒きました。一人の男の子がそれを拾って家で待つ妹のためにポケットにしまい込むまで撒きました。おこぼれ(モリーの好きな言葉です)は他の子供たちにも行き渡りました。モリーにはベレニスという娘がいますが今は離れて暮らしています。寂しくないかと尋ねると「ベレニスが南米でもチュニジアでも生きてどこかにいてくれるかぎり、あたしは彼女を恋しがったり泣いたり寂しがったりしない。そんなことはベレニスの負担にしかならないだろうから。」この考えかたは私と一緒だと思いました。家族や大好きな人が今日も元気で幸せに生きていると思うだけで、会えなくても嬉しいからです。モリーは中学生のショウタからプロポーズされます。私が70歳になるまでにはまだ少し時間があります。私らしい世界で私らしく幸せに過ごしていたら中学生には無理でも5歳くらいの男の子にプロポーズされるかもわかりません。人生何がおこるかわからないですから。

お気に入り度:★★★★★  図書館資料 分類番号:913/ノナ

コメント
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