この本の表紙、とても素敵でしょう?台所からトントンと音が聞こえてきそうで、湯気が見えそうで、美味しいおばんざいの香りがしてきそうで・・・麻生圭子さんのエッセイの表紙、三好貴子さんが描かれたそうです。以前から麻生圭子さんのエッセイが好きで読んでいます。今回も「極楽のあまり風」というほっこりした題名でスローライフが見えてきそうです。東京育ちの京町家暮らしの麻生圭子さんは隙間風が入る、戸を開けるたびに音がする、台所は三和土の・・・そんな町家で別荘暮らしを楽しむように暮らしておられます。エアコンもつけておられません。京都育ちの私は京都が大好きですが京都に、京町家に住みたいとは思いません。夏は蒸し暑くて冬は底冷え。考えただけでも気が遠くなりそうです。京都の夏が一番好きだと仰る麻生圭子さん。杉本家ご当主杉本秀太郎さんの著書「私の祭時記」から祇園祭のところを引用されています。「外界のいかなる変化にくらべても、感情の起伏の方が立ちまさっているので、暑いなどと思っているひまがない。思えば結構なことで、八坂神社の祭神スサノオノミコトを、ゆめおろそかにはできないのである」「袴をつけているあいだ、私は神さんのお供をしているつもりである」「炎暑の半日を神遊びの共衆として歩くのは、まことに楽しい。目の前には装いをこらした鉾と山があり、耳には、さまざまに曲想を変える祇園囃子の音楽が届いている」そうか、そういうお祭りなんかと麻生さんは気づかれました。私も初めて知りました。暑い中見るのもしんどいと思っていたのですが、また見方が変わりました。そんな暑い京都では夏になると建具替えをします。障子・襖・ガラス戸に替えて葦戸・御簾・網代になります。それも京都ではハレ(晴れの日)とケ(常の日)があってそれぞれに相応しいしつらえであることなど詳しく書かれていて、小さい頃を思い出しました。麻生さんが庭に水をまいていると旦那様が「おお、ええ感じやなあ。風が起きてる」と仰ったそうです。麻生さんもあわてて正座してきちんと心を傾けると、確かに風は姿を現したそうです。そんな風のことを「極楽のあまり風」というそうです。その日を境に、五感がぐんと冴えたという意識があったと書かれています。自然のままに暮らしているとちょっとした空気の流れにも敏感になるのでしょう。こんな風に四季の京都暮らしを紹介された本です。自然に寄り添い目を向けると感受性も豊かになるような気がします。
お気に入り度:★★★★★ 図書館資料 請求番号:E/アソ