娘の弓を見るなり、
「ああ、これはプレイヤーがつけた傷ではないですね。」
とTさん。
あ、そうなんだ。
「たぶん、毛替えのときにできた傷ですね。」
え、そうなんだ。
「毛替えの時にどんなに細心の注意を払っていても、
傷がつくことがあるんです。
叩く作業があるので、こういうふうに縦にひびが入る。
ただ、この傷はかなり古いと思いますよ。
ほとんど気が付かない程度の浅い傷だったのが、
汗や埃や汚れが中に入り込み、広がった感じです。
押してもしっかり閉じませんからね。
傷が目立ってきたので気付いたんじゃないかな。」
なるほど、なるほど。
「いつごろ毛替えに出しましたか?」
あれ?
こっちの弓はいつ出したっけ?
もう一本の方の弓は、半年ほど前にTさんにお願いしましたけど。
こっちの弓はいつ?
娘も覚えていないと。
「かなり経たっているようなので毛替えもした方がいいですね。」
お願いします。
「ところで、この弓の製作者は?」
「アンドレ・ヴィネロンです。」
これ、絶対聞かれると思って、
電車の中で夫にメールで聞いておきました。
よかった。
「あー、やっぱり。息子の方のヴィネロンですね。」
「え、おわかりになるんですか?」
「ええ、わかりますよ。フロッグの形とかでもいつごろのものかわかります。」
ほぅ。
「これは、お父さんから独立した後の作品ですね。」
アンドレ・ヴィネロンの父ジョセフ・ヴィネロンは非常に有名な弓製作者で、
アンドレはずっと助手を務めていたそうですが、
父の死後、父のスタイルを継承しつつ、自分のオリジナリティを出していったそうで、
その頃のものなのだそうです。
「いずれにしろ、100年以上前の作品なので、
傷んでくるのは当然です。
よく見ると、この傷のほかにも浅い傷が一つ、
それから角の部分が少し欠けています。」
あ、ほんとだ。
「それはしかたがないことです。」
・・・知らなかった-
100年以上前の作品だったんだ、この弓。
娘も知らずに使っていたというね。
夫は、ことヴァイオリンに関してはかなりマニアック。
この弓は、20代の頃にそれ相応の金額で購入。
今は娘にしっかり受け継がれているのだから、
良い買い物だったってことですよね。
「今日、お預かりしてよろしいでしょうか?」
「実は、9日にK先生門下発表会があるんです。」
「あー、そういうことですかー
そうですね、修理には5日はほしいんですが。
発表会後にしますか?」
「後10日のうちにさらに傷が深くなったり、
どうにかなってしまうってことはありますか?」
「なんとも言えませんね。古いものですし。」
うーん。
どうしようか。
発表会まで、こわごわ練習するのも良くないし、
本番で何かあっても大変。
「毛替えのあとは、どのくらいで馴染みますか?」
「1週間は必要です。」
となると、今日修理に出したら、本番は無理。
うーん。
もう一本の弓はどうだろう?
実は現在使っていないそちらの弓こそ、
現代の弓製作で最高峰と言われるフランス人が製作した、
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ただ、娘には持ち手の部分が微妙に太いらしくて、
長く練習していると指に少し負担がかかるらしい。
娘、
「心配しながら弾くのは嫌だし、もう一本の方で頑張る。」
そうだね。
ま、それがいいね。
1年前より練習量も格段に増えているから、
指も強くなっているだろうし。
というわけで、
修理と毛替えをお願いして、お預けしました。
ヴァイオリンの方も見てくださって、
松脂まみれで布だけでは落とせなくなっていた部分を
きれいにしていただきました。
実は致命的な不具合も見つかった・・・
というか、前から気付いてらしたそうなのですが、
娘本人があまり理解していなかったこともあって、
そのままになっている不具合、
このことについても説明をしていただきました。
まあ、これはまた次回ということで。
今回、とても勉強になりました。
一緒に行って良かったです。
まだ高校生ですからね。
まだまだフォローが必要です。
去年1年間は、本当に1人でよく頑張ったと思います。
帰り、お腹が空いたので、
三軒茶屋の駅ビルにあるサンジェルマンでお茶しました。
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