眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

迷宮入り

2012-03-13 | 
縁側でビールを飲み続ける残暑のカルテ
 万年筆で記される表記記号の行方は
  途方も無い理科室の黒板に於ける化学記号の羅列
   コンクリートが熱を反射し
    アスファルトがわずかに降った夕立の水分を蒸発させる

     点と線の記憶を吟味し
      酔いのまどろみ
       僕は居るはずも無いあなたに語りかける
        木立の影の優しさについて
         或いはフライパンのオムレツへの考察
          ケチャップは大量なほうがいい
           ガーリックトーストと共に
            ちょっぴり遅い朝食の風景
             昨日のワインの残りを少し
              ご飯が美味しいというのは
               とても素敵なことだ

              「おいで
                ハルシオン。」

              少女が野良猫の名を呼び
             魚の骨を皿の上に置いた
            ざらついた舌先で小骨を舐める子猫の影が
           いつか見た君の後姿にとてもよく似ていて
          僕は白球の行方を虚空に追い求める
         全体 君は何処へ旅立ったのだろう?
        どうして僕を置いて行ったの?
       台北の街並みに君の影が微笑んだ
      赤い公衆電話
     僕は店先で買った砂糖菓子を齧った
    
    「おいで、ハルシオン。」
   少女が呪文の様に繰り返す
  えさが上等じゃないならそっぽを向く
 可愛げがないよね
僕がそう云うと少女は諭すようにこう云った
 ノラはね、高貴な生き物なの。誰にもなついたりなんかしないわ。
  僕には
   それが黒猫をさしているのか少女自身をさしているのか
    見当もつかなかった
     また ささやかな雨が降った
      静かな控えめな音で空間を愛でた
       
       お昼ごはんの時間よ。
        目玉焼きとスクランブルエッグどっちが好き?
         僕には体制と反体制、どっちが好き?としか聴こえなかった
          あまり代わり映えのしない選択肢
           今日は体制的な目玉焼きで。
            少女が不可思議な表情をする
             あなた酔っぱらっているの?
              分からない
               何もかもが迷宮入りした事件の後日談
                君の影も永遠に迷宮入りしたのだ

                届かない想い
               届かなかった地平
              僕はビールの空き缶を
             十四時間かけて地上に現存させる
            光あれ、と誰かが云った
           僕は中国製の煙草の匂いを嗅いで灯をつける
          深く呼吸した
         
         ハルシオン、えさ食べたかな?

        もちろん残さず食べたわ
       私達も食事にしましょう
      少女が体制的な目玉焼きを作ってくれた
     くるみパンと一緒にテーブルに繰り広げられる世界の様相
   
    食事の時間だ

   独りきりの泥酔者はこの辺でおしまいにしよう



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