新日本婦人の会 えひめblog

えひめの地でがんばっております。女性目線の要求運動、要求小組(サークル)など日々の出来事を綴ります。

アーサー・ビナードさんの伊方原発訴訟口頭弁論陳述②

2014-05-15 10:10:43 | 原発問題

Image詩人、アーサー・ビナードさんが2014年3月11日に伊方原発訴訟の口頭弁論で意見陳述をしたものです(続き)。

(愛媛民報2014年4月20日付)

 この3年間、毎日欠かさず太平洋は大量の放射性物質を飲まされてきました。2014年3月11日のきょうも、松山地方裁判所で私たちが話している間も、流出はずっと継続中です。

 まったく終わりが見えないこの問題について、自分の日本語学習を振り返りながら、ここで考えてみたいと思います。

 私が来日した当初の日本では、「ミネラルウォーター」というカタカナ語は、ほとんど流通していませんでした。蛇口をひねれば飲める水が出るというので、日本の多くの生活者は当然、水道水を飲んでいました。

 ところが、水が売り物に作り変えられる流れが次第に大きくなり、私は違和感を覚えつつも、さまざまな新商品のネーミングを観察し、やがてその広告の法則を割り出すことができました。

 ゼロから組み立てられた日本語の技術ではありません。もともとベースにんる日本語の単語がいくつかあって、「水道水」とか「地下水」、「飲用水」、「伏流水」も命名のテクニックの出発点と言えるでしょう。古くから使われていたそれらの言葉を踏まえ、ボトリングして販売する水を、たとえば「自然水」と名付けてプロモーションします。

 または「天然水」と呼んでキャンペーンを張ります。もう少し交流館を醸し出そうとするなら「還元水」と命名してもいいし、もっと神秘的に消費をそそりたければ「深層水」という手もあります。H20の中身はたいして変わらないはずですが、細かく呼び分けることで売り上げを伸ばせます。

 その延長線上で、さらなる差別化をはかる戦略として、さまざまな地域のローカルカラーを前面に打ち出すようにもなりました。奥出雲へ行けば「龍神水」が店先に並び、屋久島へ渡れば「縄文水」が売られ、東京では「東京水」のコマーシャルが流れて、まさに枚挙にいとまがありません。

 数々の実例から、日本語のテクニックは浮かび上がってきます。まず魅力的な感じの2文字を選び、その尻に「水」の1字を付け足して「すい」と読ませます。頭の2文字によって「○○水」のイメージが作られ、スペシャルなウォーターとして受け止められるわけです。

 商品の「自然水」も「天然水」も「還元水」も「深層水」も、いつしか一般名詞に見えるくらい定着して、私は日本語の水マーケティングはそろそろ飽和状態だなと思っていました。けれど2011年3月11日のあと、「○○水」はこの定型はより一層巧妙に利用され、うんと手の込んだイメージ戦略への深化しました。現在、一番効果をもたらしているのは、まぎれもなく「汚染水」というネーミング。


最新の画像もっと見る