獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その25)神風特攻隊の悲惨さを伝えた三原佐知子さん

2024-07-08 01:38:12 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。

 


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。


Salt44 - 「永遠の0」と同じ題材やけど

2018年11月12日 投稿
友岡雅弥

三原佐知子さんという、日本を代表する浪曲師さんに親しくして頂いています。

民謡もうまく、また節回し、セリフともにとても上手な浪曲師さんです。

ヒロシマの悲劇を題材にした「はばたけ千羽鶴」は、なんどもテレビや新聞で採り上げられています。

僕は、さっちゃん姉さん(三原佐知子のことをこう呼んでいます)のスタンスってとっても大事だと思うんです。
これは、みならわなくっちゃと思ったことがあるんです。

さっちゃん姉さんの「予科練哀歌 まぼろしの父」は、出だしは、特攻機が、はるか大空を飛んでいくある意味勇壮なシーンから始まります。

数年前、某寄席でこの外題を聴いた時、客席に「右寄り」どころか「もろ右」の人がたくさんいました。

突然立ち上がって、中国や韓・朝鮮半島を批判する演説をする人もいました。

ちょっと、変な雰囲気だった。いや、露骨に変でした。いやな感じです。

「予科練哀歌 まぼろしの父」の出だしが始まります。

青空を飛んで行く特攻機。

その人たちは、感に堪えない雰囲気で、座りながらだけど、直立の姿勢で聴いていました。

空を飛んでいく特攻機の描写が終ったら、啖呵(せりふ)が入るんです。

「お母さん、僕には何故、お父さんがいないのですか」

「父無し子(ててなしご)」 と、周囲からいじめられ、成人した青年が母に問うシーンが突然始まります。


やがて、父を探して家を出た青年が、

父は橘二郎といい、
予科練性から神風特攻隊隊員となり、
戦死したことを知るのです。

そこで描かれるのは、「銃後の悲惨」。

「君を守るために死んでいく」の「君」は、妻子ではなく、「大君(天皇)」だった。

なんと、先ほどの、「もろ右」さんたちが泣いています。


そして、最後、さっちゃん姉さんは、扇子を広げながら、一声。

「今私たちの願いは世界の平和」!

「もろ右」さんたちは、感極まって、「その通り、平和が一番!」「そうや!」「戦争あかん!」と。

そして、泣いているんです。

「神風特攻隊の物語」を演じて、「神風特攻隊の悲惨さ」を、本当に伝え切ったその芸のふところの深さ。

その後の、僕の考えを大きく変えた瞬間でした。

ある意味、大人気になった「永遠の0」と同じ題材です。

しかし、特攻を美化するのではなく、特攻を美化している人たちの心をも、「特攻の悲惨さ、悲しさ」へと向けていく。

「永遠の0」とは、正反対の方向に。

声だかに戦争反対を叫ぶのではなく、戦争のリアリティを、共感をともなって相手の心に、ぽっと置く力量を持ちたいなぁと、深く思えました。

 

 


解説
声だかに戦争反対を叫ぶのではなく、戦争のリアリティを、共感をともなって相手の心に、ぽっと置く力量を持ちたいなぁと、深く思えました。

なるほどなあと思いました。
私も、意見の違う相手に伝わる文章が書けるような、力量を持ちたいと思います。


友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 


獅子風蓮