この青空フーッと吹きかけ神となる 始皇帝の太極殿にある白さ 火を献ず愛の証しの燻ぶれり 天動説のジオラマのような砂のまち 苔寺の苔真青なる空気あり※ まんじゅうごけ人間ときに浮遊せる 棄郷せり夢窓疎石の大桜 逝く父の空現れ苔の花咲けり 送り火の果てまで闇の遠ざかる 春落葉掃かれ地球の掃かれをり
多喜二忌のきょう一日を喜劇とす 多喜二忌や俳句は脳を腐らせる もはや地獄小林多喜二の忌を修す 泥の底そのまた底の多喜二の忌 小林多喜二はブラック企業を知っていた 多喜二忌の東京の灯は絶やさざる 泥より泥が生まれて泥となる多喜二の忌 多喜二忌は透明人間のように生きている 貧困の連鎖もしかして多喜二の忌 三橋敏雄よお前の番だ多喜二の忌(多喜二忌やまだある築地警察署 三橋敏雄)