この青空フーッと吹きかけ神となる 始皇帝の太極殿にある白さ 火を献ず愛の証しの燻ぶれり 天動説のジオラマのような砂のまち 苔寺の苔真青なる空気あり※ まんじゅうごけ人間ときに浮遊せる 棄郷せり夢窓疎石の大桜 逝く父の空現れ苔の花咲けり 送り火の果てまで闇の遠ざかる 春落葉掃かれ地球の掃かれをり
多喜二忌のきょう一日を喜劇とす 多喜二忌や俳句は脳を腐らせる もはや地獄小林多喜二の忌を修す 泥の底そのまた底の多喜二の忌 小林多喜二はブラック企業を知っていた 多喜二忌の東京の灯は絶やさざる 泥より泥が生まれて泥となる多喜二の忌 多喜二忌は透明人間のように生きている 貧困の連鎖もしかして多喜二の忌 三橋敏雄よお前の番だ多喜二の忌(多喜二忌やまだある築地警察署 三橋敏雄)
春ともし闇夜はすでに無明なり 地下鉄の壁画の青さ雨水とも 石鹸玉巡りめぐりて誕生す にんげんはまず飯を喰う多喜二の忌 涅槃図の私は誰も見てをらぬ かの春愁夢も希望もありませぬ 誰も訪はず誰も愛さず春耕人 太箸は東寺の柱か春満月 朝月は夢夢煉獄(ごく)を出でしころ 合いの子とは愛の子のことブロッコリー
春の夜や鳥にまぎれて愛囁く 春の夜のピーター齢六十なり 春近し「透光の樹」といふ映画 人類の冷凍保存春愁は無限(アイスマンその春愁は長すぎる) 春ショールまだ早過ぎて放置せり 放水にたまらず啓蟄の逸走す 麦踏むや日本の父と日本の母 九州の血は極力押さえよ北窓(きた)開く 新宿西口地下広場人工の鶯鳴く 春禽といふ文字まるで鳥のようだ
今日はこの冬いちばんの寒さである。昼の2時でもわずか5度である。昨日から降り続く小雨は時折り霙に変わり始めた。今日は夜間は近くのマックで残りの作業をして区切りをつけたい。今年の旧正月(春節)は明日19日とのことである。この日を境に春への一歩を踏み出す。寒さに負けないで一つづつ片付けていきたい。俳句は総合誌の投稿分がまるまる残っている。ここ数日の季題別のものの中からピックアップしたいが、兼題のものが厄介である。熱い風呂に浸かりながら気楽にやりたいと思う。 春光へ向かふに愛を手放さず まほろば