生きていてなんぼと冬桜散りぬるを 原子炉を宇宙に放ち帰らざる 種浸す時に無呼吸症候群 夢庵は目と鼻の先冬怒濤 流星群我が身を流すこともする 陛下の日朽木となりて漂へり 家中に白紙散らばる鴎の死 激流に身を投げてより寒夜なり 一つ目が通る脳内に刻印あり 枯れ蓮をまぼろしと知る憐れかな 片割れのマリア梅田地下を逸走す 養花天ローリングストーンズの黒く塗れ
海溝にマグマの溜まり冬満月 スリランカの巨大陸橋寒月下 堅妻てふ長き道のり寒月光 棲家無く夜も漂へり寒月光 信長に美童がつどふ寒の月 なでおかめ奇跡を呼べり冬北斗 凍星やこの世に捨つるものは無し 東京を漂ふごとく寒北斗 妖星の一つは蒼し寒北斗 増上寺徳川十五代北下し
寒月光人と犬とのコンツェルト 冬満月火を養へば炎となりぬ 地の果てもかくありぬべし冬満月 寒月光胃の全摘出といふカルテ 寒月や地球に蒼きもの溢れ 捨て猫の絶対自由冬三日月 東京湾は果たして海か寒月光 寒月光六波羅蜜寺に突き当たる 見たことのない儚さ寒月の幾重にも 田中氓はマグマの化身冬満月(バヌアツ火山で場踊り)
霜夜来てまた霜夜かと引き返す 東京山谷の越冬闘争まだ聞かず 霜の夜の楢山節とはこのことか 孤独死は避けて通れぬ寒さかな 三寒の東京下町闇ばかり 東京の闇夜遠のく四温かな 三寒四温犬たるものの飼はれけり 極寒やシュールレアリズムの空遠く 酷寒のたて続けなる失恋譚 しばれると彼方に自爆の音がする
氷る夜やたぶん1969年のこと 寒波来る日曜大工投げ出され 極寒のニュートラル俳句とは死のことか 東京の巨大な空白寒波来る 冬深し空缶千個が通り過ぐ 日脚伸ぶ自然法爾といふことば 日脚伸ぶヱヴァンゲリオヲンに聖地あり 凍て空や無縁社会に猫とゐる 私は猫ストーカーといふビデオ冬青空 冬ざれや少年ジャンプ網棚に