かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

衣料センターイチハラ(江南市)

2011-01-31 | 尾張の近代建築

江南市建築散歩~その5

名鉄江南駅の西にある古い商店街は以前にも何度かこのブログで紹介しましたが、なかでも新町通り商店街にある「衣料センターイチハラ」は昭和の面影を色濃く残すレトロな商店建築です。
新町通り商店街が国民的アイドルグループ嵐主演の映画「黄色い涙」(2007年公開)のロケ地になり、イチハラも東京の阿佐ヶ谷商店街にある大衆食堂の「さかえや」としてスクリーンに登場しています。
撮影後しばらくは映画のロケで使われたままの状態で公開されていましたが、今回久しぶりに訪れてみると映画の小道具も片付けられシャッターが下りていました。

◆衣料センターイチハラ/江南市古知野町
竣工:昭和初頃?
構造:木造2階



シャッターが下ろされ営業はしていない様子ですが建物は健在(2011/1/10撮影)





正面アーチ窓の〇一はイチハラのイチでしょうか?





ロケの様子を紹介したパネルや撮影に使われた看板などを展示していました(2006/7/23撮影)













旧広見湯(江南市)

2011-01-30 | 尾張の近代建築
江南市建築散歩~その4

名鉄江南駅の西側は戦前から栄えた古知野町の中心地で、昭和30年代の面影を残す古い商店街が残っています。
その一角に昭和モダンな洋風建築の銭湯「広見湯」があります。
残念ながら平成19年に廃業し現在は営業していませんが、建物は取り壊されず営業当時のままの外観をとどめています。

◆旧広見湯/江南市古知野町広見
竣工:昭和初?
構造:木造2階
撮影:2011/01/10



正面にはアーチの部分に装飾が施された縦長の上げ下げ窓が並ぶ






看板建築のようにファサードだけ石貼りの洋風にしています







窓周りのモダンな装飾が見所



瀧会館(愛知県江南市)

2011-01-18 | 尾張の近代建築

江南市建築散歩~その3

滝学園の西に学園創設者、滝信四郎が創設した瀧文庫(現瀧会館)が当時のまま現存しています。
滝家は江戸時代から続く名家で、5代目信四郎は大正元年に滝兵商店(現タキヒヨー)を設立、事業で成功を収めた信四郎は郷土発展の為、私設図書館として大正4年瀧文庫を開館しました。

建物は和洋折衷の木造下見板貼りで、中央に入り母屋の玄関を設けE字型に寄棟の両翼が出っ張っています。
玄関車寄は金属板葺きの唐破風屋根で、和風の懸魚と洋風の棟飾りが同居するいかにも大正初期の洋風建築らしい雰囲気が漂います。

大正15年滝実業学校創設とともに蔵書は図書館に移され、その後公民館として利用されましたが、老朽化が激しく、現在は閉鎖されています。
 

◆瀧会館(旧瀧文庫)/愛知県江南市東野町河原96
 竣工:大正4年(1915)
 構造:木造平屋
 撮影:2013/02/10



■建物全景~現在は使われていないのでかなり荒れている様子です





玄関部分~唐破風屋根の車寄が明治期の擬洋風建築の名残を感じさせます



建物西側~大正期の下見板貼りの洋風建築らしい外観



敷地南東角の長屋門に続く蔵~腰壁の部分が煉瓦造になっている

 

 


滝学園講堂(江南市)

2011-01-16 | 尾張の近代建築
江南市建築散歩~その2

滝学園本館正面玄関に向かってすぐ左に真っ白な外観の講堂が建っています。
外観デザインはいたってシンプルですが、縦長の窓と階段状に強調された玄関部分や付け柱など、直線を基調にしたアールデコの意匠が採用されています。

◆滝学園講堂/江南市東野町米野1
 竣工:昭和8年(1933)
 設計:村瀬国之助(陸軍建築技師)
 構造:RC造2階
 撮影:2011/01/10
 ※国登録文化財





県内の高校建築で戦前の校舎と講堂があわせて現存するのは珍しく大変貴重






直線で構成された玄関周り~右書きの「堂講」のプレートが時代を語る






正門前にアールデコ風の当時の校門の一部が残っていました







滝学園本館(江南市)

2011-01-12 | 尾張の近代建築

江南市建築散歩~その1

◆滝学園本館/愛知県江南市東野町米野1
 竣工:昭和1年(1926)
 構造:RC造2階
 撮影:2011/01/10
 ※国登録有形文化財


滝学園を訪れると、まず目に入るのが正面玄関の上にそびえるとんがり屋根の時計塔です。
その愛らしい姿は、まさに若人が青春を謳歌する学園にふさわしく、2色に塗られたコンクリートの外観も美しく、とても昭和元年に建てられた校舎には見えません。

ところで舟木一夫が歌う「高校三年生」と言う大ヒット曲がありますが、そのままの題名で映画化(昭和38年)され、滝学園はその舞台になっています。
主演の舟木が隣の一宮市の出身で、地元の尾張地方がロケ地に選ばれたのかもしれませんが、滝学園の校舎はまさにそんな青春学園ドラマの舞台にうってつけだったのでしょう。

当初は実業学校として創設され、現在は県内でも有数の進学校になりましたが、とんがり屋根の時計塔は創立以来変わらず長い歴史を刻んでいます。





並木道の奥に時計塔のそびえる本館正面玄関があります








張り出した車寄の上に大きなペディメント(三角形の妻面)またその上に時計塔がそびえます






東側のグランドからも時計塔が望めます






昭和元年から85年の時を刻んできました




 



木曽川資料館(旧木曽川町会議事堂)

2009-10-25 | 尾張の近代建築
名鉄名古屋本線新木曽川駅から線路沿いに北に向かうと、すぐに木曽川資料館のレトロな建物が見えてきます。
この建物は旧木曽川町会の議事堂として大正13年に建てられたもので、単独の建物で現存する町村会の議事堂は全国的にも珍しく、国登録有形文化財に指定されています。
同時期に建てられた役場庁舎は惜しくも平成15年に取り壊されましたが、隣接する町会議事堂は取り壊しをまぬがれ、木曽川資料館として末永く幸せな余生を送ることになりました。

■木曽川資料館(旧木曽川町会議事堂)/一宮市木曽川町大字黒田字宝光寺東20
 竣工:大正3年(1922)
 構造:木造平屋建
 撮影:2009/10/18


■建物南側正面



■南東側~東隣にあった旧庁舎は取り壊され、現在跡地には商工会館が建つ





■丸柱に支えられた立派な玄関車寄が当時の議事堂の面影を伝える



■車寄せ上部の壁面には、当時のままの右から書いた「堂事議会町」の文字が残る


 
■玄関車寄照明

JR東海道本線木曽川駅 駅倉庫(一宮市木曽川町)

2009-10-21 | 尾張の近代建築
平成20年に木曽川駅は古い木造駅舎を取り壊し、新駅舎に生まれ変わりましたが、駅の西口に大正元年当時の煉瓦積みの倉庫と駅の柱の一部が保存展示されています。

■JR東海道本線木曽川駅 駅倉庫/一宮市木曽川町黒田
 竣工:大正元年(1912)
 構造:煉瓦造平屋




■全体の雰囲気は漆喰の変わりに煉瓦を使った伝統的な土蔵造り



■入り口の建物資産標には大正1年11月の記載が



■小屋の脇には駅舎の柱の一部が保存されているものの・・・
 もうちょっと当時の駅舎の雰囲気を伝えるものも残して欲しかった



■移築前の煉瓦小屋(現在は数メートル移動して保存)



■取り壊し前の木造駅舎(明治25年築)
 現役最古級の貴重な駅舎でしたが、120年に及ぶ長い歴史に幕を下ろしました。
 保存活用の道はなかったのか、非常に残念です。
 
 

一宮市向山の洋館

2009-10-17 | 尾張の近代建築
数年前、柳戸ポンプ場を訪れた時に、偶然なかなか味のある古い洋館を見つけました。
私的には「おっつ、これは!」と思わず心の中で叫んでしまうくらい雰囲気のある建物で、地方都市ではなかなかお目にかかれない優良物件です。
今回も柳戸ポンプ場撮影のついでに寄ってみましたが、幸い建て替えられることもなく健在で安心しました。
建築年は不明ですが、洋館部分の大屋根の張り出し窓や、スクラッチタイルや丸窓のある凝ったデザインの玄関など、細部に設計者のこだわりが感じられ、戦前の昭和モダンな住宅の面影が当時のままの状態で残っています。


■大江川沿い(西側)の道路から見る外観。裏(南東側)に回ると和風の和洋折衷様式。


■二つ並んだドーマー(屋根窓)が見所。小さな煙突が可愛らしい。



■大きなポーチのある玄関の脇に多角形の建物が張り出す



■現在は使われていない石積みの門柱。取って付けたような壁の三角ペディメントが面白い。



■建物東側は和風の造り。(東側の神社境内から撮影)
 右手の多角形の建物は、いかにも戦前のちょっと怪しい洋館の雰囲気が漂い、非常に良い感じです。

撮影:2009/10/11

柳戸ポンプ場(愛知県一宮市)

2009-10-16 | 尾張の近代建築




■柳戸ポンプ場(旧下水抽水場)/一宮市柳戸1丁目
 竣工:昭和4年(1929)
 構造:鉄筋コンクリート造1階
 撮影:2009/10/11

水面の高い大江川に排水するたの下水抽水場として建設されました。
歴史様式の近代建築が持つ華やかさはありませんが、装飾を廃した機能主義のコンクリート建築は、現代建築にも通じるシンプルな美しさが漂います。
現在もポンプ場として現役で使用されている貴重な近代化遺産です。





尾西繊維協会ビル(愛知県一宮市)

2009-10-15 | 尾張の近代建築


■尾西繊維協会ビル(旧尾西織物同業組合事務所)/一宮市栄4-5-11
 竣工:昭和8年(1933)
 設計・施工:清水組名古屋支店
 構造:鉄筋コンクリート3階
 撮影:2009/10/11

この地方が「毛織物王国」と呼ばれ隆盛を極めた、昭和の古きよき時代の面影をとどめる一宮を代表する近代建築です。
落ち着いた毛深い茶褐色のスクラッチタイルの外壁に、建物の角や窓の縁に使った白い石が華やかを加え、洋館らしい瀟洒な雰囲気を演出しています。



■建物北側~西洋館には欠かせない煙突もスクラッチタイル貼り



■建物東側遠景~屋上に神社があるのが分かります



■二階分の高さの縦長のアーチ窓
 窓枠の中はタイルの並び方が変えてあり、編みこんだ毛糸のように見えます。
 スクラッチタイルと白い石積みのコントラストが抜群です。

一宮市役所西分庁舎(旧名古屋銀行一宮支店)

2009-10-14 | 尾張の近代建築


■一宮市役所西分庁舎(旧名古屋銀行一宮支店)/一宮市本町2-4-345
 竣工:大正13年(1924)
 設計:鈴木禎次
 構造:鉄筋コンクリート3階
 撮影:2009/10/11

元々は東海地方の建築界の巨匠、鈴木禎次が設計した当時の銀行建築の典型と言える建物で、正面にドリス式大オーダーを配したクラッシクな外観です。
現在は市役所の分庁舎として再利用されていますが、本町商店街のアーケードに埋もれて建物全体が見られないのは非常に残念です。
こちらも本庁舎と同様に建て替え計画が進行中でらしいですが、一宮の近代を語る歴史遺産として保存活用されるのを願うばかりです。



■南側の建物が取り壊され側面が見えるようになりました。右手の渡り廊下が本庁舎に続いています。

一宮市役所本庁舎(愛知県一宮市)

2009-10-12 | 尾張の近代建築

繊維の街として栄えた頃の一宮を代表する近代建築で、愛知県最初の鉄筋コンクリート造市庁舎。
装飾の少ない端正な外観ながら、玄関を角に設けメダリオンやオーダーを配するなどバロック様式風なクラッシクな意匠も見受けられます。
1階の窓口には庁舎としては日本で初めての対面式カウンターが設けられ、職員がカウンターを挟んでオープンな空間で市民に接するという現代と同じ形式を採用した大変モダンなつくりになっています。
建設当時は中庭を設けたコの字型の建物でしたが、現在は正面玄関を中心に両翼(東、北側)の部分しか残っていません。
現在旧庁舎を取り壊して新庁舎を建築する計画が進められており、建築史学会から地方都市の近代化を語る歴史的文化財として保存再生の声が上がっています。

■一宮市役所本庁舎/一宮市本町2丁目5-6
 竣工:昭和5年(1930)
 設計:松本善一郎(前愛知県営繕課技師)
 施工:榊原信太郎
 構造:鉄筋コンクリート造
 撮影:2009/10/11




■庁舎全景~敷地の外側に建物を配置し中庭を設けた、当時の庁舎・事務所建築の典型
左後方には増築した庁舎が見えます




■北東角に設けられた正面玄関
上部のメダリオンと幾何学模様の装飾が目を引く



■4本のオーダーが並ぶ



 

■玄関ホールの銅製の装飾腰板



■玄関照明



■北側玄関



■南西側の建物は取り壊され現在は駐車場に