この週末、天気予報では本州脊梁山脈の東側は雨模様、西側は比較的お天気が良さそうでした。ヤマレコを眺めていると、きれいなアカモノ(ツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木)が目に入りました。そうだ、アカモノに会いに行こう! というわけで、関越トンネルを越えて新潟県の巻機山(1967m、日本百名山)へ行ってきました。
(注:脊梁山脈とは、ある地域を分断して長く連なり、主要な分水嶺となる山脈のこと)
(注:ヤマレコとは、山に登るすべての方を対象にしたコミュニティサイト。最新の山の情報を見ることができる)
歩いたのは、この山の最も一般的なコースである「井戸尾根コース」。桜坂登山口の標高は700m、山頂までは標高差は1267mとなります。標準コースタイムは登りが5時間05分、下りが4時間05分です。
過去に飲み水を切らして熱中症になりかけた苦い経験もあり、今回は合計3.5Lの飲み物をザックに入れました。
結果的に、2Lをまるまる残して下山しましたが、安心して歩けたので良かったと思います。
そして、実際にかかった時間は、登り3時間50分、下り2時間50分だったので、コースタイムはかなり余裕を見ているように思います。
(注:標準コースタイムは宿泊装備を前提にしていることが多い)
さて、登りはじめるとすぐに現れたお花はヤマツツジ(山躑躅、ツツジ科ツツジ属の半落葉低木)です。標高が800~900mのところで咲いていました。
この辺りは急斜面で赤土が剥き出しになっていて滑りやすく、気を付けていたものの下山時に見事に転倒してしまいました。倒れた際に両腕を広げて柔道の受け身の形をとったので、頭を打ったりはしませんでしたが、時計をはめている左手首の内側に痣ができました。
標高が1128mの五合目を越えしばらく歩くと、ユキザサ(ユリ科マイヅルソウ属の多年草)、マイヅルソウ(ユリ科マイヅルソウ属の多年草)、イワカガミ(イワウメ科イワカガミ属の常緑の多年草)が現れました。イワカガミは標高1800m付近でも見られ、この山では垂直分布が広いお花です。
尾根を登るこのコースはブナなどの樹林帯の中ですが、ところどころで見通しが効きます。北側の雪渓を詰めたところに割引岳(わりめきだけ、1931m)が見えますが、割引岳の北東につながる巻機山は見えません。雪渓を挟んで見える奇岩は天狗岩です。
反対側には、上越のマッターホルンと呼ばれる大源太山(1598m)が見えます。
今回お目当てのアカモノは、標高1400m付近でたくさん見られました。何ともかわいい大好きなお花です。このお花は、私の知る限り、どの山でも垂直分布が100mほどの範囲に密集しています。登山道はアカモノロードで、この時季に登ってよかったと思いました。
アカモノロードを過ぎると、ガレ場となり、すぐに七合目の標識が現れます。付近にはウラジロヨウラク(ツツジ科ヨウラクツツジ属の落葉低木)が咲いていました。
ここまで2時間ほど歩いてきて、お腹も空いてきたので、ここで2度目の朝食としました。山では食事は一度に摂らず、極力分けて摂るようにしています。ここは見晴らしもよく、ケータイの電波もつながりました。
さて、再び歩き始めると、登山道の脇にはゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属の多年草)、ツマトリソウ(サクラソウ科ツマトリソウ属の多年草)が現れました。ゴゼンタチバナは多くの山で見ましたが、この山のが一番きれいなように思います。
さらに上がると、ベニサラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉低木)が現れましたが、お花はすでに落ちていました。花弁がササの葉の先端に乗っているのが可愛くて撮りました、
ナナカマド(バラ科ナナカマド属の落葉高木)の白いお花もこの辺りで見られました。
この辺りからニセ巻機山(1861m)までは急登が続きます。七合目で着たウインドブレーカーを途中で脱ぎました。
ニセ巻機山というのは可笑しな名前ですが、正式な名称です。巻機山の登山道からは巻機山は見えず、ニセ巻機山に登って初めて見えるのです。巻機山でもう一つ可笑しなことは、山頂の標識が最高点にないことです。山頂の標識(1930m)は避難小屋からの道を北へ登り、稜線に出たところにあり、そこで道は東西に分かれます。最高点(1967m)は標識から400mほど行ったところで、そこには標識はなくケルンが置かれています。この可笑しな標識のため、多くの登山者が最高点には行かず、標識で引き返しています。
さて、ニセ巻機山から避難小屋の間は景色もよく、お花も百花繚乱、天上の楽園です。
イワカガミ(写真なし)、ツマトリソウ(前述)、ワタスゲ(カヤツリグサ科ワタスゲ属の多年草、写真は綿毛)、イワイチョウ(ミツガシワ科イワイチョウ属の多年草)、セリ科のお花はハクサンボウフウ(セリ科カワラボウフウ属の多年草)でしょうか。蕾もたくさん見られました。
コバイケイソウ(ユリ科シュロソウ属の多年草)はまだお花は見られず、きれいな葉を撮りました。ここはこれからお花が増えていきます。もうしばらくすると、一面のニッコウキスゲも見られるはずです。
避難小屋を覗いてみると中は薄暗く、湿気を感じました。この週末は避難小屋で宿泊する登山者が多く、小屋はそうとう混雑するでしょう。
小屋を過ぎると、池塘が現れます。ミズバショウはお花の時期を過ぎたばかりのように見えました。ここから山頂の写真を撮ろうとしましたが、霧が晴れず、山頂は見えませんでした(帰路には霧も晴れて山頂が見えましたが、のっぺりした山頂は絵にならず、霧の方がまだすてきでした)。
山頂直下から、振り返って歩いてきた道です。
そして、ようやく山頂の標識に着きました。
山頂のある尾根の笹薮の向こう側(北側)には、越後三山と北東側に尾瀬から東北の山々が見えるはずですが、すべては霧の中でした。
少し待って、霧の晴れ間に越後三山が見えました。左から八海山、越後駒ケ岳、中ノ岳が見えました。
この後すぐに、ほんとうの山頂(最高点)へ向かいました。
登山道わきにタテヤマリンドウ(リンドウ科リンドウ属の越年草)がたくさん見られましたが、曇天のためお花は閉じていました。
そして、ほんとうの山頂のすぐ側に、この日唯一のハクサンシャクナゲ(ツツジ属シャクナゲ亜属の低木)のお花を観ることができました。
ほんとうの山頂へ往復している間に霧が晴れてきて、越後三山はくっきりと、そして妙高山、火打山、北アルプスの山々も見ることができました。谷川岳方面は濃い霧の中で、脊梁山脈の偉大さをあたらめて実感したのです。
下山時にたくさん目に付いたお花はニガナとハナニガナ(キク科ニガナ属の多年草)です。標高1500m辺りから下山するまでずっと見かけました。登ってくる際は気付かなかったので、このお花たちは朝寝坊なのでしょうか。ニガナは普通5弁花のようですが、写真を撮ったのは7弁でした。11弁のお花はハナニガナのようです。
さて、下山後は、下湯沢の共同浴場「駒子の湯」で汗を流し、湯沢インターから関越道に入り、梅雨空の関東に戻ったのでした。
今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。