この記事は、前編からの続きです。
トマの耳から肩の小屋へ向けて下る途中、A氏が転倒した。そこで左足首を痛めたらしい。
肩の小屋のベンチに腰を下ろし、傷めた足首を診た。軽い捻挫のようだった。私が持参していた湿布薬を貼り、痛みの具合を訊くと何とか歩けそうだとのことだった。
この先はすぐに雪になるのでアイゼンを着用して、杖をつきながらゆっくり歩いてもらった。
時間はロープウェイの最終が17時なので、それに間に合えば問題はない。とにかくゆっくりでも下山できればよいと考えた。
私が先に雪のスロープを下り、後から来るA氏を見守った。最後に傾斜が急になるところで踏ん張りが利かず、腰を落として滑って下りてきた。意識的にそうしたわけではなさそうだった。
本人が言うには、足首に加えて膝の踏ん張りも利かなくなっているようだった。
私はA氏のザックを受け取り二人分のザックを背負うことにした。A氏には空荷でゆっくりでも下りてくれるよう頼んだ。
空荷になったA氏は、私が期待した以上にしっかりと歩いてくれた。むしろザックのバランスが悪い私の方が不安定だったが、私が怪我をするわけには行かない。一歩一歩を確かめながらいつも以上に慎重に歩いた。
鎖場では極力鎖を使うようアドバイスした。ペースは遅いものの転倒することもなく、13時42分に熊穴沢避難小屋に無事に到着して、ここでザックを下ろした。
二人分のザックを背負ってからは一切写真を撮っていなかったが、ここでカタクリ(ユリ科カタクリ属草))を見つけて初めて写真を撮った。
熊穴沢避難小屋からロープウェイ駅までは1時間である。そのことをA氏に伝えると、彼も元気が出たようだった。
しかしここから先には雪渓をトラバースするところが何ヶ所かある。捻挫した足でキックはできないので、トラバースする場所では私が先を行きステップをしっかり付けるよう心がけた。
そうやって田尻尾根分岐まで順調に下りた。残りは10分である。
分岐から少し先に短い雪渓があった。私が先頭でステップを付けながら歩いた。雪渓が終わり木道へ下りる所に段差があり、そこは特に気をつけるようA氏にアドバイスした。
私が木道に下り少し進んで振り返ったらA氏が見えない。声を掛けたら滑落したという。木道に下りた後に滑ったようだった。薮が揺れていた。
幸い滑落した後すぐに枝につかまったので、落ちたのは背丈ほどだった。ストックを逆さにして差し出し、グリップの輪っかに手を通して握ってもらった。それを渾身の力で引き上げたら上げることができた。
本人が言うには、残り10分と聞いて急いでしまったらしい。雪渓が終わり木道へ出たところで落ちたので、油断があったのかもしれない。ともあれ大事に至らなくて良かった。
そこから先は木道歩きだったが、さらに慎重に歩いた。
天神平のゲレンデに下りたときはホッとした。14時37分にロープウェイの天神平駅に到着した。
A氏には頑張ってよく歩いてくれたと、心より感謝した。
最後の写真はロープウェイ車中から観た谷川岳だ。この日はありがたいことにずっと晴れていてくれた。
同行のA氏が怪我をしたが、大事にならずに下山できたことを感謝したい。
山の師匠は山は何回登っても同じ山は無いと言っていた。天候や地象は勿論だが、自分自身や同行者のコンディションを含めてのことだとあらためて思った。
距離 6.5km、累計標高差 825m、平均ペース 標準(90~110%)
二人で登った谷川岳(完)
トマの耳から肩の小屋へ向けて下る途中、A氏が転倒した。そこで左足首を痛めたらしい。
肩の小屋のベンチに腰を下ろし、傷めた足首を診た。軽い捻挫のようだった。私が持参していた湿布薬を貼り、痛みの具合を訊くと何とか歩けそうだとのことだった。
この先はすぐに雪になるのでアイゼンを着用して、杖をつきながらゆっくり歩いてもらった。
時間はロープウェイの最終が17時なので、それに間に合えば問題はない。とにかくゆっくりでも下山できればよいと考えた。
私が先に雪のスロープを下り、後から来るA氏を見守った。最後に傾斜が急になるところで踏ん張りが利かず、腰を落として滑って下りてきた。意識的にそうしたわけではなさそうだった。
本人が言うには、足首に加えて膝の踏ん張りも利かなくなっているようだった。
私はA氏のザックを受け取り二人分のザックを背負うことにした。A氏には空荷でゆっくりでも下りてくれるよう頼んだ。
空荷になったA氏は、私が期待した以上にしっかりと歩いてくれた。むしろザックのバランスが悪い私の方が不安定だったが、私が怪我をするわけには行かない。一歩一歩を確かめながらいつも以上に慎重に歩いた。
鎖場では極力鎖を使うようアドバイスした。ペースは遅いものの転倒することもなく、13時42分に熊穴沢避難小屋に無事に到着して、ここでザックを下ろした。
二人分のザックを背負ってからは一切写真を撮っていなかったが、ここでカタクリ(ユリ科カタクリ属草))を見つけて初めて写真を撮った。
熊穴沢避難小屋からロープウェイ駅までは1時間である。そのことをA氏に伝えると、彼も元気が出たようだった。
しかしここから先には雪渓をトラバースするところが何ヶ所かある。捻挫した足でキックはできないので、トラバースする場所では私が先を行きステップをしっかり付けるよう心がけた。
そうやって田尻尾根分岐まで順調に下りた。残りは10分である。
分岐から少し先に短い雪渓があった。私が先頭でステップを付けながら歩いた。雪渓が終わり木道へ下りる所に段差があり、そこは特に気をつけるようA氏にアドバイスした。
私が木道に下り少し進んで振り返ったらA氏が見えない。声を掛けたら滑落したという。木道に下りた後に滑ったようだった。薮が揺れていた。
幸い滑落した後すぐに枝につかまったので、落ちたのは背丈ほどだった。ストックを逆さにして差し出し、グリップの輪っかに手を通して握ってもらった。それを渾身の力で引き上げたら上げることができた。
本人が言うには、残り10分と聞いて急いでしまったらしい。雪渓が終わり木道へ出たところで落ちたので、油断があったのかもしれない。ともあれ大事に至らなくて良かった。
そこから先は木道歩きだったが、さらに慎重に歩いた。
天神平のゲレンデに下りたときはホッとした。14時37分にロープウェイの天神平駅に到着した。
A氏には頑張ってよく歩いてくれたと、心より感謝した。
最後の写真はロープウェイ車中から観た谷川岳だ。この日はありがたいことにずっと晴れていてくれた。
同行のA氏が怪我をしたが、大事にならずに下山できたことを感謝したい。
山の師匠は山は何回登っても同じ山は無いと言っていた。天候や地象は勿論だが、自分自身や同行者のコンディションを含めてのことだとあらためて思った。
距離 6.5km、累計標高差 825m、平均ペース 標準(90~110%)
二人で登った谷川岳(完)
そのとき、吹雪で、高い場所で怖かったのを覚えています。
ロッククライミングの聖地で有名ですよね
頂上付近はこんなに雪が残り、アイゼンで歩く必要も有る場所、険しい山なのが伝わってきます。
ベテランのAさんでもこうしたことがあるんですね。
同じ山は無いと言っていたAさん。
天候や地象、自分自身や同行者のコンディション、
山は、一つでも同じでないことが伝わってきました。
お二人で行かれて正解でしたね。
カタクリの花、私が見たのは3月中旬、
約2ヶ月の違い、気候の違いがこんなにあるんだと
小さい話ですが、感じさせていただきました^^;
全編からいったいどうなるのかとどきどきしながら読み進めました。
谷川岳といえば、私でも遭難の名所と聞いたことがありますが、この時期でも雪渓が残り、かなりの難コースなのですね。
shuさんという名サポーターがいてくださったので、Aさんは本当に良かったと思います。
いずれにしても、本当にお疲れさまでした。
そんな中、カタクリなどの早春の花に癒されました。
季節が2カ月くらい遅いのですね!
今日は(今日も)朝から雨です。
ゆっくり過ごしたいと思います。
それにしても、週末ごとの雨は勘弁してほしいです。
多分テーピングなどの応急処置を施し無事下山されたものと後編を読み始めましたが、とんでもないことになりましたね。2人分のザックを背負うとは凄いいです。下山後も二つの耳がはっきり見えていますね。Aさんの怪我は大したことがなかったようで終わりよければ全てよしでしょうか。
今回紹介していただいたコースは何年か前の6月末に歩きましたが、新潟側から雲が押し寄せ隣同士の耳もよく見えない状態でした。展望が得られるのは今頃なんでしょうが、どうしても雪渓を歩かなければなりませんね。私も、6月の秋田駒ケ岳、焼石岳などで雪渓を歩くことがありますが、滑ったら止まらないな、岩場に滑り込めばただじゃすまない、といつも緊張します。
ブログの最後に、平均ペース 標準(90~100%)とありました。怪我をしてこのペースとは、これは凄すぎます。無事に下山されて何よりでした。
谷川岳は登るコース、時季によって難易度がまったく異なります。
今回歩いたコースは小学校の遠足でも登るコースで、夏の晴れている日なら誰でも登れます。
今回は何ヶ所かに雪が残っていましたので、誰でも登れるとは言えませんが、雪山初心者がこの季節に歩ける山として選びました。
それにアクセスが良いことも選んだ理由です。
結果はA氏に怪我をさせてしまい、反省しています。
山の経験が長いと言っても初めての雪山で、一緒に登るのも始めての人だったので、連れて行くべきではなかったと思いました。
幸い怪我の程度は軽いので、事なきを得ました。
同じ山は無いと言ってくれたのは、A氏とはまったく関係のない私の山の師匠です。
彼はヒマラヤ7000m級の未踏峰も経験しているベテランで、私とは毎年一緒にどこかへ出かけています。
谷川岳の山頂付近に小さな花畑が出現するのは、もう2週間ほど先になりそうです。
昨年はハクサンイチゲ、ハクサンコザクラ、ハクサンチドリなどの高山植物が見事でした。
先ほどattsu1さんにも書きましたが、谷川岳はコースによって難易度がまったく異なります。
今回歩いたコースはロープウェイを使い、標高差650m(累計標高差820m)余りを歩くだけです。
鎖場はありますが、鎖を使わなくても無理なく登れます。
残雪の時期はもちろん注意が必要で、今回は雪が柔らかでしたが、凍結していたらもっと早めにアイゼンを着ける必要がありました。
私に怪我はなかったですが、A氏を引き上げる際に渾身の力を使ったので、背中の筋肉に張りが残っています。
昨日、今日と雨なので、私に休養を与えてくれる恵みの雨になっています。
なつみかんさんにとっては残念な休日の雨ですね。
アイゼンで昇られたとの事・・・
お聞きしただけで鳥肌が立ちます。
熊穴沢避難小屋に無事に到着しカタクリの写真を写されたのですか?
さぞ、ほっとされた事でしょう。
私は山登りには全く無知ですが、山岳小説で、谷川岳がブームになったことが在りますネ。
山頂付近にはお花畑も在るのですネ。
険しい山道を登って出会える高山植物には深い思い入お在り在りでしょうネ。
谷川岳には何度か出かけていますが、関東の住人にとって、本当に近くてよい山です。
初心者からベテランまで楽しめますし、私のようにお花を楽しみに登るハイカーにとっても素敵な山です。
二人分のザックを背負っても15kgほどでしたし、ずっと下りでしたから負荷は大したことがありませんでした。
それより、滑落したA氏を引き上げる際に、背筋を傷めたように思います。同様に右腕もやや痛いです。
昔は中味の入ったビールケースを4函(104kg)持って運んだり、50kgの麦の俵を持ち上げたりしたものですが、年には逆らえませんね。
しばらく休養すれば治ると思います。週末雨でテニスが休みで良かったです。
谷川岳の天気が終日安定しているのは、高気圧に広く覆われたときだけです。
日本海側の天気が悪くても、太平洋側の天気が悪くても、谷川岳では天気が悪くなります。
また、一日のうち何度も天気が変わることがよくあります。
魔の山と言われますが、この天気が変わりやすいことも魔の山を生み出している一因だと思います。
谷川岳は花の百名山にこそ選ばれていませんが、数々の高山植物が観られる素敵な山です。
蛇紋岩質なので、ホソバウスユキソウなどの珍しい植物も観られます。
昨年6月に登ったときの記事を添付しますので、お時間があればご覧下さいませ。
https://blog.goo.ne.jp/shu2702/s/%E8%B0%B7%E5%B7%9D%E5%B2%B3%E3%81%8A%E8%8A%B1%E8%A6%8B%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0+-+%E3%81%9D%E3%81%AE%E2%91%A1
この山には様々なコースがあり、縦走路も整備されていますので、また歩いてみたいと思います。
体力の低下を考慮しつつ、無理のない安全登山を続けていこうと思います。
Aさんという同行の方もベテランなんでしょうが、足を捻挫して大変でしたね。
Aさんのザックまで背負って歩かれるなんて、shuさんは凄い力持ちですね。
滑落したAさんもshuさんに引っ張り上げて貰えて良かったです。
単独の時とは違って、色んなことが起こりますね。とにかくご無事で良かったです。
でも一言も大変だったとは言わずに、「A氏が怪我をしたが、大事にならずに下山できたことを感謝したい」と言われるshuさんに感動しました。
最後の美しいお写真が、お二人を祝福してくれているようです。
お疲れ様でした。
今回の登山では反省することがたくさんありました。
単独登山に比べると、何倍も気をつけなければいけないですね。
山岳ガイドの方のご苦労は並大抵ではないと思います。
15kgの重さは、テント泊の時には普通そのくらいはありますし、下り一辺倒でしたから苦になりませんでした。
山で動けなくなった人を救助する際に、大人の人を担いで歩く救助隊の人はすごいですね。
今回もA氏に、あなたを担ぐのは無理なので、何とか自分でゆっくり歩いて下さいとお願いしました(笑)