アンのゆりかご―村岡花子の生涯―(新潮文庫)をKindleで読みました。
NHKの朝の連ドラは途中から見たのですが、随分と脚色されていることに作者が嘆いていたようなので、気になって原作を買ってみました。
この本を書かれたのは花子の孫である村岡恵理氏で「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」の館長をされています。
確かにTVでは描かれていない部分があり、実際にはその時代の多くの作家や著名人との交流をしながら翻訳活動をされていたようです。
また、家族構成も異なっています。甲府の学校の話も全然違いました。
村岡花子を簡単に紹介すると、第二次大戦の最中に「赤毛のアン」の翻訳を始め、生涯のうちにモンゴメリの作品を16冊も翻訳しています。
貧しい家に生まれた「安中はな」は本が好きで勉強ができたため、父が東洋英和女学校に入学させます。学費のかからないお世話係の給費生でした。英語の授業について行くため必死に勉強し、図書室にある英語の本をすべて読んでしまいます。
女学校時代に英語の家庭教師をしたり、卒業後は婦人矯風会で編集の仕事をしながら短歌の投稿をしたりしていましたが、「子供も大人も楽しめる家庭文学」を志します。
本格的に翻訳活動を開始するのは、結婚後、長男を失ってからです。関東大震災の後、出版社兼印刷所を設立させて「王子と乞食」を刊行します。
ラジオで「子供の新聞」を担当し、「ラジオのおばさん」と世間で親しまれるようになります。
そして、第二次大戦が始まった頃、カナダ人の宣教師から一冊の本を託されます。「戦争が終わったら翻訳して出版して欲しい」と。それが「赤毛のアン」でした。
赤毛のアンも戦後にすんなりと出版された訳ではありません。翻訳に6年を費やしたものの、出版までは更に7年の月日が掛かってしまいます。そして、その後の7年で10冊のアン・シリーズを出版します。
文章は、歴史の教科書を読んでいるような感じで、淡々と花子の生涯を綴っています。それがかえってテンポ良く読み進めることになったように思います。
5時間ほどかかりましたが、爽やかな気分で読み終えることが出来ました。