陶子の心の窓

今日わたしの心の窓は開いていたかな?あなたはいかがでしたか?

再婚者 川端康成

2014-03-25 06:42:33 | 

川端康成の作品はあまり読んだことがありませんでした。なんともったいないことをしてきたことか。
面白そうな作品が勢ぞろいではありませんか!

きっかけとなったのは『弓浦市』ですが、この作品(短編)を探してたどり着いた本の中に『再婚者』も入っています。
一冊の文庫本の中に11編収められています。今回は『再婚者』についての感想。

 心理描写に隙がないです。実際にこういう人と知り合いだったら、こわいな~^^;と思ってしまいます。私は人の考えていることを推し量ろうなんて思わないですから。そうは言っても無意識のうちに考えていたりしますよ。でも、独り相撲になってしまって、ろくなことにはならないような気がして。
♪人の心裏の裏はただの表だったりして~ by大黒摩季 です。

話をもとに戻しますけれど、主人公の男性は再婚した時子とその娘(前夫との間に生まれた子)の房子とのやりとりで、時子の前夫を思い描いたりしていくんです。そのときの会話と胸のうちで思うこと、それと風景描写。印象的なのは鎌倉の海棠です。海棠の花ってどんななんでしょうね。見てみたいなぁ。
海棠の花を見るたびに房子のことを思い出すでしょう・・というような表現があって、何かきれいなもの、それもその季節特有のものを見たときにその人のことを思い出すのって、なんとも。。


例えば、雪解けの季節、桜が咲き始めた季節。ふと思い出す人はいますか?それともただただその風景に純粋に心を奪われますか?

この短編集に収められている話は、鎌倉が舞台になっているものがいくつかあります。
鎌倉には一度行ったことがありますが、秋ですぐに日が暮れてしまったので、季節を変えてゆっくり訪れたいと思います。

それにしても、ここしばらく海外小説を読んでいたので、日本の小説は湿度が高いですね。やっぱりその土地の雰囲気と言うか、作者の人となりに気候は少なからず影響するのでしょうね。

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アンの友達

2014-02-11 06:26:57 | 

赤毛のアンシリーズ、第4集目『アンの友達』
モンゴメリ・作 村岡花子・訳

赤毛のアン・アンの青春・アンの愛情はアン・シャーリーを主人公にしてストーリーが展開していきますが、この『アンの友達』は雰囲気が変わって、タイトルの通りアンの「友達」についてのストーリーが一人ずつ綴られていきます。アンが脇役だったり、全く出てこなかったり、思い出の一こまとして登場したり。
松本侑子さんの訳が3集で終わっているのは一応アンのストーリーがひと段落したということだからかもしれません。

村岡花子さんのアンも違和感なく入っていけます。強いて言えば、松本訳よりもよりストーリーのすじ重視かな?と思います。

アンシリーズを読んでいて思うことは、人生観が幅広く語られていること です。
本屋さんでよく「○○力」とか指南本のようなものをよく見かけますが、私としては何か小説や哲学の原本になるべく近いものを読んで、自分なりに何かを掴み取っていくことが大事だと思います。
指南本はそれを書いた人の解釈ですから、他人の考え方を自分の人生に踏襲していくことになるような気がします。自分の生き方、考え方は唯一無二のものでなくては、せっかくこの世に生まれてきた甲斐がないと思いませんか?

自分だけのオリジナルの感覚が何かの拍子に誰かととてもよく似ていたりすると、そこから親近感がわいてきてかけがえのない友人になるのではないかなと思います。

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青い城

2014-01-23 05:47:16 | 

ルーシー・モード・モンゴメリ著   谷口由美子訳

モンゴメリといえば「赤毛のアン」で有名ですが、他にも名作はたくさんあります。「青い城」もそのひとつです。

主人公のヴァランシーはオールドミス。といっても29歳。現代だったらまだまだ若くて自由気ままな独身時代を謳歌できる年齢ですよね。でも執筆された時代はそうは許さなかった。いとこ、親戚づきあい、近所の目。日曜日には教会にいってお説教を聞く。古いしきたり。あれもだめ、これもだめと娘(ヴァランシー)の気持ちも考えない冷ややかな母親。理解者のいない境遇ってたとえ自分が生まれ育った家であっても居心地の悪いものでしょうね。物語の1/3はこんな今ではありえない場面が多いのですが、ある日心臓に異変を感じた主人公は一族のかかりつけ医(病院に行くにもどこに行くか決まっていたなんて)ではなく、他の医師の元をたずねます。どんな病気なのか、そもそも自分が病気だとは知られたくなかったのです。診察の途中で、その医師の息子が交通事故にあった知らせが入り、医師はヴァランシーを残し慌しく出て行ってしまいます。医師にも見放されたのかと気落ちするヴァランシー。(そりゃそうですよね。今ならクレームどころか新聞沙汰にもなりかねません。)数日後、彼女あてに医師からの手紙が届きます。「心臓発作が起こったら死にいたるでしょう。私が処方する薬を飲むこと。残念ながら余命1年・・・」といった内容。この手紙を読み終えてから彼女は「これからの1年は私がしたいように生きるわ!」と固く心に誓うわけです。それからは、いままでの彼女には考えられないほどの行動力で周囲の反対を押し切り、やりたいことを実行していくのです。その変化がおもしろいし、ラスト数十ページの展開は、驚きのハッピーエンドへと。

ヴァランシーがやりたいようにやることは、決して自分本位でたんなるワガママではありません。古いしきたりや世間の目を気にして何もしないことや、周りの様子を伺ってばかりで少しでも人と違うことをしている人間を悪く言ったりすることのほうが、よっぽど聖書の教えからほど遠いことなのでは(私はキリスト教信者ではありませんけどね)。

作中にはモンゴメリ特有の自然をモチーフにしたみずみずしい比喩や相手を賛美する言葉がたくさん出てきます。今私が併読している中に「アンの愛情」がありますが、ちょっと混同してしまいそうになりました。ともあれ、モンゴメリ好きにはこれがなくては!というところですよね。

訳者の谷口由美子さんは「赤毛のアン」に魅せられてプリンスエドワード島を旅し、その際に「青い城」の原書に出会い、帰国後ただ無心に翻訳をしていったそうです。できあがった原稿を自らダメ元で出版社に持ち込み、本にするまでにこぎつけたのだとか。勿論、一社目でそんな幸運にあずかれることはなかったのですが、諦めなかったのとタイミングが合ったのですね。本編もさることながら、このエピソードも素敵です。

「青い城」、例えば久しぶりにカラオケに行って聖子ちゃんの曲を歌うような感覚で読んでみてはいかがでしょうか?ちょっと気恥ずかしいけれど読後感はさわやかです。

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ペンギンの憂鬱

2014-01-21 19:18:45 | 

アンドレイ・クルコフというウクライナはキエフ在住のロシア語作家の作品です。タイトルどおり、ペンギンが出てきてシリアスな物語に茶目っ気のスパイスがなんともいえずいい感じです。読んでいて「ふふふ。」と思わされたり、「もしかしたら罠かも」なんてドキドキさせられたり。

読んでいる途中がおもしろくて、結末はう~~ん・・・。というところ。余白があります。無理やり落としどころをつくらないのもまた良しかと思います。

訳者沼野恭子さんのあとがきもくどくなく、でもうまく余白部分を埋めてくれそうな解説もあり、いいです。

この「ペンギンの憂鬱」は20ヶ国語に訳されているそうです。アンドレイさんの作品には小動物が出てくるものが多いんだとか。他の作品も読んでみたいのですが、残念なことに日本語訳が少ないのです。ロシア文学はドストエフスキーやトルストイだけではありません。現代ロシア文学もどんどん翻訳をお願いしまーす!

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セーヌの川辺

2014-01-15 16:22:44 | 

アリス・マンローさんの『ディア・ライフ』を読み終え、同じくマンローさんの『小説のように』へは進まず、ちょっとはずして池澤夏樹さんの『セーヌの川辺』を読むことにしました。

『セーヌの川辺』は新聞論説委員の方の「景観は公益という概念」というタイトルのコラムの中で紹介されていました。池澤さんは現在札幌にお住まいだそうですが、定住を志向する方ではないようです。札幌の前はフランス、パリ近郊の小さな町に4年間住んでいたそうです。そのような生き方は、私にとってはまばゆいばかりに羨ましいものです。地球という星に人間として生まれたからには、住みたい場所に住みたい。慣れてしまったらまた別の場所に移る・・あれれ、なんだか『神様のボート』みたいなこと言ってますね。あのドラマ、きれいでしたね。。

話が逸れました。日本はおもてなしを誇るけれど、なぜ景観には無頓着なのでしょう。日本に住んでいて不自由なことは全くといって良いほどなくて、本当にありがたいことなんですが、街の景観が好きになれません。派手な看板だの、電線だの・・・。ちょっと遠くへドライブをしていてもひょっこり表れるのは全国展開のスーパーやドラッグストア、衣料品店などが入った巨大なショッピングセンター。なんとなくその土地の個性が感じられなくてがっかりします。でも、そういう感覚って「旅人」だからそう思うんだよって言われたことがあります。住んでいる人にとってはなくてはならないものだからですね。だけど、そういった生活に密着した必要な建物こそ、景観や土地柄に合わせて作ったらもっと素敵なのに。日本全国、果ては世界中に同じお店が増えていくのは経営者にとっては満足この上ないことでしょうね。でも旅人は写真を撮りたいとは思わないでしょう。

肝心の本についてですが、エッセイでして、それぞれのタイトルがおもしろいのです。「聖マルタン、愛知万博、植民地の料理、車を燃やす」。これでひとつのエッセイが綴られています。一つ一つの単語がまるで関係するとは思えないのに、池澤夏樹さんの頭の中では全て繋がってひとつの思考作品になっている。人は誰しもあれこれと頭の中で思いをめぐらせているものですが、それを赤の他人にわかるように書くのは並大抵のことではないように思います。作家にもいろいろなタイプがあって、それぞれにおもしろいですね。

 

この『セーヌの川辺』は『異国の客』という本の第2弾になります。異国の・・もぜひとも読まなくては!

 

 

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アリス・マンロー

2014-01-07 08:27:50 | 

昨年秋、ノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローさんの本。やっと手に入れました!

年末になって新聞で彼女の本の広告を目にし、ああ!やっと読めるのね。と、先日出かけたついでに本屋さんへ。

どれも面白そう。それに表紙も素敵。迷いに迷った末、結局買いませんでした。

だって、高かったから・・・。ケチだね~って?はい、ほんとに^^;

本屋さんで値段を見てハタと冷静になって。「そうだ、Amazonがあるじゃないか!」と。

検索してみると、やっぱり!中古で出ていました。送料などもあわせて新品より2割弱安く買うことができました。

しかも自宅まで配達してもらえるし。中古といっても帯が少し痛んでいるだけであとは全く新品同様。

2冊購入して、現在『ディア・ライフ』を読んでいます。14の短編が綴られています。

Dear life・・・愛すべき日常。愛しい日々。。直訳するとこんな感じでしょうか。

毎日同じことの繰り返しのような日常を綴りつつも、ほんの一瞬におこる心のつまずき。心変わり。

ささいな日常の風景、会話をていねいにスケッチするように言葉にしていくのがさすがです。

O.ヘンリーの短編のように大どんでん返しがあったり、教訓めいたしめくくりがあるわけでもないのだけど、読み終わったとき心がきゅっとします。

「きゅん」ではないなぁ。私にとってはですけどね。

う~~ん。はまってしまいそうです。

アリス・マンローさん、素敵です。

 

 

 

 

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外国文学

2014-01-06 17:45:45 | 

世界各地いろいろな民族がいていろいろな歴史や風習がある。

そこでは当たり前のことや言い回しが日本人には唐突だったり、理解できなかったり。あるいは気がつかずに素通りしてしまうことがあるかもしれない。

だから、「(注)」がついている翻訳本は親切だと思うし、訳者がかなりその本の背景や作者について、舞台になっている国の当時の様子などにかなり精通していると思う。同じタイトルの本で複数の翻訳が出ている場合、迷うことがあるが、このことに気がついて本選びの基準が自分なりに出来上がってきそうだ。異文化に興味津々の私にとっては大事なこと。

この考えに思い至ったきっかけとなった本が、『赤毛のアン』松本侑子訳(集英社文庫)だ。

松本氏はネタばれになるほど細かく注釈をつけている。これは好みの分かれるところだと思う。でも、私が思うに大人になってから『赤毛のアン』を読むたいがいの人は、だいたいのあらすじと結末を知っているだろう。かえって注釈を見ながら読み進むことで《なるほど、この名前は聖書からの引用だったのか》《アンが言ったことは作者モンゴメリの私生活と重なるんだ》など別の視点から物語を見ることができると思う。

アンシリーズは村岡花子訳で10冊ほど出ている。松本氏の訳ではまだ3冊ほどしか見当たらないのが残念だ。

アンを読んでその中に出てきた詩人や作家の作品に手を伸ばしていくのも読書の道筋として面白い。

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