わたしは情報収集に関してかなりアナログな方だと思う。
電子書籍は持っていないし、ネット検索しても必要と思えば手帳やそこら辺の紙にメモするし、量が多ければプリントアウトしてしまう。
紙媒体の新聞・書籍にいたっては、このご時世においても、これからもなくてはならないもの、なくしてはならないものだと思っている。
紙媒体って潔い。印刷されて世に出回ってしまったら「あ!あそこ、間違えた!!」とか、誤解を招く表現をしてしまっても取り返しがつかず、自分で後処理するしかないからだ。だから校正・編集などに携わる人がいるのだと思う。そうやって書き手から離れた文章は、様々な角度から厳しく修正されて世の中に出てくるわけだから、こちらもどっしりと構えて安心して読み進めることができるんだ。
2011年の東日本大震災のように価値観を変えてしまうような大きな出来事を経験してから、本の奥付がすごく気になる。この本はいつ書かれたものなのか、その後改訂されているかなど。
withコロナ時代になって、今年出版された本はいくらかでも読んでおきたいと思っている。またそれとは反対に、コロナ以前に書かれた本も、自分なりの視点でコロナ以前・以後を比較しながら読み進めるのも興味深いこと。
後者の観点で読んだ本が、三浦しをんさんの『むかしのはなし』。
誰もが知っている、かぐや姫や花咲か爺さんなどの昔話を現代風にアレンジした短編が7編。
だけど、それらの話がどこかリンクしている。ここからはネタバレになるけれど、それはあと数か月後に地球に隕石が落ちてくるということ。そうなることはわかっているから地球から脱出するためのロケットが用意されている。でも、そのロケットに搭乗できる人数は限られている…。それを知った上で登場人物はどう生きていくのか。
この本は平成20年に出版されたものだけど、生死にかかわるような極限状態に地球規模でかかわっていることが今のコロナとちょっと似ている。細かいことを言えば、コロナは気を付ければ感染を防げるけれど、隕石が落ちてくるのは“計算違い”でもない限り避けようはない、というのは違うけど。
ただ、極限状態になった時、どう考えるか。どう人に接するか…。そんなもろもろのことを自分だったらと考えるきっかけをくれる本だ。
昔話を現代風にアレンジした面白さと、地球の危機を共有しているという共通項を同時に味わえる。
また、これは三浦しをんさんの作風なのかもしれないが、作品によって女性目線・男性目線の使い分けも見事。私自身、ジェンダーの概念が薄まりつつある現代の風潮を嫌でも感じているのか、今となっては昭和な小説よりなんとなく「こちら側」がしっくりくる。
そんな私的発見もあった。