思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『温泉天国 ごきげん文藝』 温泉入りたい

2024-11-26 18:45:46 | 日記
『温泉天国 ごきげん文藝』

「ごきげん文藝」は、河出書房による
“おとなの愉しみを伝えるアンソロジー”。
その第一弾が、温泉にまつわる随筆を集めた『温泉天国』。

掲載順は、温泉地を北から南下しているっぽいかな?
どう読んでも良い並びだなと捉えてつまみ食い読みを
しています。

嵐山光三郎、井伏鱒二、太宰治、武田百合子、
つげ義春、荒俣宏
あたりをまず読んだかな。

あ〜あっつい温泉に入りたい〜(草津は熱々で好き)。

このシリーズ、
ほかに「にゃんこ天国」「ほろ酔い天国」などがあるようで、
河出書房は良いフォーマットをつくったな、という感想。

以下、掲載作。

湯のつかり方(池内紀)
カムイワッカ湯の滝(嵐山光三郎)
ぬる川の宿(吉川英治)
湯船のなかの布袋さん(四谷シモン)
花巻温泉(高村光太郎)
記憶(角田光代)
川の温泉(柳美里)
美しき旅について(室生犀星)
草津温泉(横尾忠則)
伊香保のろ天風呂(山下清)
上諏訪・飯田(川本三郎)
村の温泉(平林たい子)
渋温泉の秋(小川未明)
増富温泉場(井伏鱒二)
美少女(太宰治)
浅草観音温泉(武田百合子)
温泉雑記(抄)(岡本綺堂)
硫黄泉(斎藤茂太)
丹沢の鉱泉(つげ義春)
熱海秘湯群漫遊記(種村季弘)
湯ヶ島温泉(川端康成)
温浴(坂口安吾)
温泉(北杜夫)
母と(松本英子)
濃き闇の空間に湧く「再生の湯」(荒俣宏)
春の温泉(岡本かの子)
ふるさと城崎温泉(植村直己)
奥津温泉雪見酒(田村隆一)
別府の地獄めぐり(田辺聖子)
温泉だらけ(村上春樹)
温泉で泳いだ話(池波正太郎)
女の温泉(田山花袋)
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『名画に見る男のファッション』 センスも靴もとんがり放題だ

2024-11-25 13:31:51 | 日記
『名画に見る男のファッション』中野京子

西洋絵画の時代は、
男がこぞってファッションにこだわる時代。
ハイヒールもタイツも毛皮もウィッグも、
全部、男のファッションアイテムなのである。

って、そりゃおもしろいですよ。

パッと見で身分を分らせなきゃいけない時代、
見た目にこだわるのは納得です。

15世紀に大流行した「プーレーヌ」と言う名の
“とんがり靴”なんぞは、
とんがりの長さが身分ごとに定められたのだとか。
強制されると逆にカッコ悪い気もするが、
当時はいかに「長くとんがるか」競争が凄かったようです。
90年代ギャルの厚底ブーツみたいだ。
(徐々に上げ底が高くなっていき、
 最終的にキャンベル缶の乗ってんのか?って高さになり
 そして足首を捻るギャルが続出した)

ちなみにとんがりの長さ、庶民は靴サイズの0.5倍まで。
騎士は1.5倍、貴族は2倍、王族は2.5倍。
長すぎるとんがりの先っちょは膝のあたりにボタン留めされたとか。
それはもうとんがりじゃない。

ルイ14世でお馴染みのかつらも、
身分に合わせてもっこもこのくるんくるんを競ったそうです。
ベルサイユファッションは、威嚇し合う孔雀(オス)っぽいな。
そもそも人毛を使ったボリュームたっぷりのカツラは超高級品。
貧乏貴族は馬や山羊の毛でお値段も一目瞭然だそうで。
うーん、切ない。

そして不思議なことにカツラが流行る時期とヒゲが流行る時期は
被らないものらしい。
上か下か、どっちかをもじゃもじゃすれば気が済むのか。
おもしろいですね。
ヒゲの漢字は複数ありますが
「髭」は鼻下、「髯」は頬、「鬚」は顎周りだそうです。
中野先生、博学である。

名画の中で働く人々』で取り上げられたスイス人傭兵も、
こちらの本に登場しています(同じ絵)。
個人商売で売名もしなきゃならないので、
とにかく派手に着飾ることで有名だったそうです。

そんな傭兵ファッションから上流階級へと流行ったのが
スラッシュ(服の伸縮性を補うために上着に切り込みを入れる)と
コドピース(股あて)。
コドピースは15世紀から17世紀にかけて上流階級に大流行。
確かに絵画の中のヘンリー8世(英)もフェリペ2世(西)も
堂々とお召しになっておられる。

いやあ、おもしろいですね、男性ファッション。
ちょっと喜劇っぽい部分も込みで、おもしろいな。
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『職業としての小説家』 村上さん的「小説家」論

2024-11-21 10:39:52 | 日記
『職業としての小説家』
村上春樹

「小説家という職業」について講演調に書かれている
(が、リアルに講演をしたわけではない)。

自発的に書いた原稿らしいのですが、
縁あって柴田元幸監修雑誌「MONKEY」に順次掲載され、
単行本化に至ったそうです。

村上さんによる村上さんらしい「小説家」論。

めちゃくちゃ推敲する方なのは知ってましたが、
長編小説は最初から最後まで、何度か書き直す。
ディテールの整合性を取るためにも書き直す。
奥さんに読んでもらって指摘されたブロックは
また書き直す。ごっそり。
全体を見て、さらに書き直す。
みたいなスタイルで、
とにかく書き直すことを厭わない。
ほげ〜。すごい。

とにかくストイックだなあと思う。
本人が目指しているのは自分らしく「書く」スタイルで
ストイックになることが目的ではないと思うけれど。
フィジカルを大事にしているのも
別に運動好き、筋トレ好き、とかじゃないというか。

なので、ひと昔前の文壇の
銀座のバーで朝まで呑んで締切破ってから一筆書きで
原稿を仕上げるぜ!みたいなイメージの
百万光年対極な世界です。

それはそれ、これはこれ、
どっちもあるでしょとは思うけれど、
村上さんの考え方や生き方から得られるものは
(個人的には)すごく多い。
実はこっそり感謝している。

文学賞とか、文壇についての、
世間で色々言う人が多いから
自分のスタンスを表明しておきます、的な話(第三回)も
良い文章だった。
もっと怒っていいと思いますけど笑

以下、目次。

第一回 小説家は寛容な人種なのか
第二回 小説家になった頃
第三回 文学賞について
第四回 オリジナリティーについて
第五回 さて、何を書けばいいのか?
第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと
第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み
第八回 学校について
第九回 どんな人物を登場させようか?
第十回 誰のために書くのか?
第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア
第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出
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『そして、バトンは渡された』 さすがの一言

2024-11-20 14:36:38 | 日記
『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこ

2019年の本屋大賞受賞作。
主人公の森宮優子ちゃん17歳は、
父が3人、母が2人いる。
でも「困ったことに、全然不幸ではないのだ」。

むう。
さすがにそれは達観しすぎじゃないか。
17年の人生でもっと思うところはあるだろ。
と、前半はちょっと構えてしまった。

メインストーリーは高校3年の1年間。
節目には色々と大小の悩みがあり
(そういう年頃だ)、
その節目ごとに親が変わった際の
事情や心情を思い出す
(意外と思うところがあった)、
という構成。

読み進めるにつれて、
それぞれの親に、それぞれちゃんと愛されてるんだなあ
ってことが理解できるし
最後には事情も納得できる。

むう。
さすがの瀬尾まいこ氏なのである。
優子ちゃん、ちゃんと泣くし、人間関係不器用だけど、
達観とはまた違った心構えを
自分の中に育めているのだろうな、と。

さすがの一言である。
何様、みたいな感想で恐縮である。
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『王妃の離婚』 中世フランスの離婚のしかた

2024-11-19 16:29:45 | 日記
『王妃の離婚』佐藤賢一

私のなかで佐藤賢一氏といえば
講談社現代新書のフランス王朝史。

カペー朝の個人商店奮闘記から、
大企業ブランディングのブルボン朝まで
読みやすい文章でわかりやすく楽しませてくれた
有難いお人である。

そんな佐藤氏、本職は小説家である。
え?そうなの?
すっかり新書の中世フランス担当だと思ってたよ!
(集英社新書『英仏100年戦争』も積読中だ)

では、日頃の感謝(?)を込めて、
小説も読んでおきましょう。

というわけで第121回直木賞受賞作です。

舞台はおなじみ中世フランス(1500年頃)。
ルイ12世が即位直後、王妃に離婚を求める裁判劇。
主人公の田舎弁護士フランソワは、
若かりし頃にカルチェ・ラタンで名を馳せた俊才。
ルイ12世の王妃の父でもあるルイ11世(暴君)の時代に、
鋭すぎる舌鋒のおかげでパリにいられなくなった人。

当時のカトリックにおける結婚やら離婚
(は認められていないので結婚の無効を証明する)やら
「だって聖書ではこう言ってたもん」
「それって解釈違うもん」
「もういい、身体検査(下半身)する!」
みたいな口論を堅苦しい言葉とラテン語を駆使して行います。
勉強になる…、いや、普遍史でもつくってろ、と思う。

とはいえ実はこの離婚騒動がフランス国土問題に
繋がっていたり、
ヴァチカンとの緊張関係が影響したり、
歴史背景込みでだいぶ面白い状態なのです。

一方的に離婚を要求される王妃にとっては
災難でしかないけど。

ルイ12世は、ヴァロワ朝史のなかでは
「優等生」と佐藤氏に評されていますが、
小説の中では優柔不断で責任感ゼロの
「これが国王で大丈夫?」状態。

これならこういう裁判騒動もありそうだなあ、
という絶妙な味付けも良い感じ。

歴史新書も良いけど、
こういう人間物語になっていると
当時の風俗や人間模様の解像度が上がっていいですね。
おもしろかった。
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