思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『剣客商売』読み始めた或いは時代小説における田沼意次像

2017-06-08 19:09:07 | 日記
ハイペリオンはどうしたって感じですが。

以前から嗜んでおかなければと思っていた
『剣客商売』を読んでみました。

あ、おもしろい!

やはり大御所というのは
そう呼ばれるだけのことはあるんですねえ。
しみじみ。

ところで、権力を持った庇護者みたいな存在で
田沼意次が登場しているんです。
大局を見ることができ、懐も深い人物として。

田沼政治って近年再評価されているような
感がありますが(適当ですが)
私が学生だったころの授業は
田沼政治=悪政
という感じでした。
剣客商売が始まったのは私が生まれるさらに前。
さすが御大。ってことでしょうか。

ちなみに近年で読んだ本の記憶だと、
清水義範『源内万華鏡』では先見の明を持った
有能な政治家として描かれていたかと。
一方で、
佐伯泰英『居眠り磐音』シリーズだと
主人公の庇護者として書かれている速水左近の
清廉潔白な性格と対比するためか
わかりやすい権謀術数の悪役として設定されていました。

時代小説家として田沼意次をどう描くかって、
なかなか興味深い問題なのかもしれませんね。


ちなみにちなみに清水義範の『源内万華鏡』は面白かったです。
作者が前面に出てくるような文章で、
源内ってのがまた、自己中だったり空気読めなかったりする
なかなかの困ったちゃんなのですが、
そんな源内がかわいいよね愛しいよね!っていう
作者のダメ人間愛がひしひしと伝わってきて、良い感じです。
枡野浩一がほぼ日に連載していた石川啄木愛満載の
『石川くん』を思い出します。


ところで、小さな疑問なのですが。
剣客商売では(まだ1巻しか読んでませんが)
身分が低い人物が自分より上の人への返事で
「はあい」
って言うんです。たまにね。
これ、どんな塩梅で使うんでしょうかね。
そこそこ信頼関係の築けている上下で使ってる感じがあるけど。
現代の感覚で「はーい」でいいのかな。
大人が子どもに向かって
「“はーい”じゃなくて“はい”って言いなさい!」
と怒られるタイプのやつ。

小さい話しでした。
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古川日出男への正しいアプローチ

2017-06-07 12:28:37 | 日記
朝井まかて作品との出会いは、
結果として、良い手順を踏んだなという気がしています。

一方で、
アプローチの順番を完全にミスったなと
残念に思っている作家が古川日出男でした。

最初に読んだのがデビュー作の『13』だったんです。
読んだ当時、私も若かったのです。
なので、そもそもの設定の
主人公の少年が片目だけ色覚異常を持っていて
物語のなかで天才性を開花させていくとか、
傭兵のドッグタグを身に着けている二重人格の少女とか、
中二病(?)っぽい感じの要素が多いことに
なんだかなあって思ってしまったのです。

そんでもって「神を映像化した」とかなんとかの
色彩ぐるぐるな表現とか、
いわゆる「好みが分かれそうな文体」に
見事に置いてけぼりをくらってしまったのです。

なんとか読了した後に
もう、この人の作品を読むことはないな…。
と思ったのをよく覚えています。

まあ、私の思考なんて適当だしコロコロ変わるし
基本ポンコツなもので。

その後『文学賞メッタ斬り!』にドはまりしまして。
この二人が、まあ、ズタズタに斬るわけですが
珍しく口をそろえて褒める作品があり、
それが『ベルカ、吠えないのか?』だったわけです。

これは気になるな。
ということで私の前言など軽やかに撤回です。
いそいそと読みました。

おもしろかった!
すごくよかった!!
猫派の私ですが、犬カッコいい!!ってなった!

4頭の犬に始まる血の繋がりが壮大で面白く、
犬に語りかける文体がまたいい感じです。
人間なんてちっぽけだなあと思いつつ
ヤクザの娘はいい味だしていました。

勢いに乗って日本SF大賞受賞をしたという
『アラビアの夜の種族』も読みました。

すごい!
これは一気読み!
寝不足だちくしょう!

めちゃくちゃ濃厚で幸せな読書時間でしたよ。
やっぱり若かったからかな、
本当に古本屋で見つけて翻訳したの?
なんて思って真面目に検索してしまいましたけどね。

で、ですね。
単純な私はですね、
私、猫好きだから、次は『アビシニアン』だー
つって、てきとーに次の本を手に取ってしまったんですね。

『アビシニアン』、肌に合わなかった…。

なんだろ、この人が書く恋愛とか思春期的なものに
アレルギーでもあるんだろうか…。
二勝二敗って、ちょっと次に手を出すのに勇気いるなあ…。
ということでそれ以来、なんとなく次を読みそびれています。

なんかだらだか書いて気づきました。
アプローチの順番云々ではないな、これは。
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朝井まかて逆走。『恋歌』から『ちゃんちゃら』へ

2017-06-06 16:22:41 | 日記
少し前の話しですが、
朝井まかての『恋歌』を読みました。
直木賞受賞のニュースを受けて、読む。
というザ・時事読書。

こういうのって、気分として健康的ですよね。
初物を食べて寿命が伸びる!みたいな。

内容はというと、文学作品としてとても良かったですが
こどもが酷い目に遭う場面がいたたまれなくて
読んでいて辛いなあという気持ちになりました。

もちろん辛いだけではなく。
水戸天狗党の「若さ」とか
幕末の女性の生き方や在り方とか
考えさせれるし、勉強になるし、良作だと思います。
さすが直木賞。

というわけで、続けて受賞後第一作の
『阿蘭陀西鶴』も読みました。

こちらも良質な文学作品だな、と。

井原西鶴という「人間」を盲目の娘の視点で描いているのですが、
西鶴って嫌なヤツだなあ、
娘も捻くれてるなあ、という印象から始まって
いつの間にか共感してしまうというか、
人間って面白いなあと思わせてくれる運びになっています。
すごい。

というアプローチからの、
デビュー2作目という初々しさがまだ残っている
『ちゃんちゃら』を読んだ次第です。

あ、うん、おもしろいね。
というのが当初の感想。

いやね、前2作がどっしりとした読後感付きの
(少々胃もたれもする)
特濃~って感じだったものですから。

あら、ずいぶん口当たりが爽やかで
のどごしもいいんですね。するん。
と、肩透かしを喰らった感じだったというか。

もちろん面白かったですよ。
作庭の知識や季節の木々に関する描写もよかったです。

とはいえね。
この人、デビュー直後はこういう作風だったのか、と。

おこがましい言い方かもしれませんが
すごい勢いで成長をしている作家さんではないでしょうか、と。

もし、この作家さんの作品でハジメマシテが
『ちゃんちゃら』だったとしたら、
私は次の読書に畠中恵的なものを期待したと思います。

それはそれで良い読書時間だと思いますが、
直木賞コースには行かないのではないかと。

なんだかんだ言いながら
初期の爽快な感じ、好きなので
次は『すかたん』でも読もうかなと思っています。
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google先生すごい

2017-06-02 16:40:15 | 日記
唐突に、会社の先輩に
「〇〇〇〇〇〇〇〇って検索してくれないか」
と言われました。

それは先輩が携わっているプロジェクト名で、
イマドキな英単語を組み合わせたネーミングでした。
エクスペリエンスとかそんな感じの。

先輩の手元には自分のモバイルPCが。
自分で検索すりゃいいじゃないですか。
と思いつつ、黙って私のPCで検索しました。
ふつーにヒットしました。

「なにか問題でもあるんですか?」
と聞いたところ、
オレのPC(私物)の検索結果を見てくれ、と。

そこには見事に、桜新町(だったかな)の
とある風俗店のご案内がずらりと。
すごい猛プッシュされてる…。

よーく見ると、
カタカナで数文字ちがいの名前です。

Google先生が、過去の検索履歴から
学習しておススメしてくれているようです。
俺たち長い付き合いだからわかるぜ。
打ち間違い、だろ?
お前が求めてるサイトはこっちだろ!
ってな。

私物PCでの検索結果を見た先輩は、
プロジェクト名を検索した社内外の人々が
もれなく風俗店にご案内されるのかと心配になり、
他のアカウントで検証したかったと。

「大丈夫だ!出ない!よかった!」
先輩は安心したようでした。よかったです。
私もgoogle先生の学習能力ってすごいな
と思った次第です。

うかつに検索ワードを覚えさせられないな。と。
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ハイペリオンがおもしろくて困る問題

2017-06-01 09:44:18 | 日記
なんてこった。

と毎度のように言っている気がしますが。

以前から「読みたいメモ」にリストアップされていた
『ハイペリオン』(ダン・シモンズ)を
ようやく読了したのです。

うっかりハードカバーで手に取ったものだから、
この数週間、とにかくカバンが重かった…。
ただでさえ5月とは思えぬ暑さでへろへろなのに、
立ちっぱなしの通勤電車でこんな重い本を読んで
元から少ない体力を消耗させる日々。
つかれた…。

でもですね、
おもしろかったんです。
『ハイペリオン』。

SFの名作と言われている作品なので、
舞台はもちろん近未来(28世紀)の宇宙ですが。

アラビアン・ナイトのように
物語が入れ子になっているのです。

物語の主軸は、
辺境の惑星ハイペリオンに潜む
未知の生命体(かどうかもよくわからない)シュライクを
巡礼する7名が、それぞれの物語を語るというもの。

それぞれの物語がバラエティに富んでいて
ひとつひとつがとにかく面白かったです。

宇宙の果ての未開部族に神秘を求める司祭の話しとか
一日ずつ若返るという娘の謎の病気に苦悩する学者とか
ひとつひとつの人生が丁寧に書かれていて
ハラハラします。
色々と考えさせられます。

さらに、
物語全体を覆うSF設定(なんか小難しい科学技術とかAIとか
異世界的な惑星描写とか宇宙規模の政治的アレコレとか)が
細やかで壮大で、読んでいてワクワクします。

様々な名作モチーフやオマージュが
多用されていることでも有名らしいので、
私が疎いだけで
SFファンや読書人には常識みたいな設定も
多いのかもしれませんが。

なにはともあれおもしろかったです。

で、ですね。
『ハイペリオン』のネタバレっぽい感想を書きますが。

この本は、6人(7人ではない)がそれぞれの物語を語り終わり、
いざシュライク!みたいなところで終わるんです。

そういうものです、と言われれば
そういうものですか、と納得して
「なんか凄いの読んだわあ…」と思いながら
本を閉じるところです。

満足して眠りにつくところです。

でもね!
そうじゃないんですよ!

これ、続編の『ハイペリオンの没落』と
がっつりセットの物語なんですって!!
散らばり放題の伏線を回収してくれるんですって!!
すべての謎を解き明かしてくれるんですって!!!

なんてこった!

確かに4部作なのは知ってましたが。
人気シリーズの続編って立ち位置かと思っていました。
失礼な言い方をすると、第一作がピークで
それにぶら下がる感じの続編は読まなくても差支えないのかと。

『ハイペリオン』と『ハイペリオンの没落』は
表裏一体、プロットの時点でセットだったようです。

なんてこった…。

ついでに言うと『ハイペリオンの没落』も
同じくらいの重量のようです。

な、なんてこった…。

でも読まないという選択肢はないのです。
おもしろかったんだもの。
続き、めちゃくちゃ気になるもの。
しくしく。

次は、せめて文庫で読もう…。

しくしく。
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