最近、立て続けに緩和ケア病棟に入院することに抵抗を感じていらっしゃる患者さんやご家族にかかわらせていただく機会がありました。
緩和ケア病棟に入院することに抵抗を感じていらっしゃる方に共通するのは、「あそこにいくと、もう、退院できない」「暗い」「死ににいくところ」といったところでしょうか。ネガティブなイメージがあります。
確かに、緩和ケア病棟は死を感じさせるところがあり、抵抗感が精神的な苦痛を増強させることがあるというのは否めません。
患者さんに関しては、「つらい症状をうまくとってくれるところ」として説明させていただいて、「じゃ、入院してみようかな」と思っていただけたらしめたものです。
実際に、入院していただければ、ネガティブなイメージは払拭されることが多く、「こんなに楽になるのなら、楽しく過ごせるのなら、もっと早くくればよかった」とおっしゃっていただけることもあります。
ご家族の場合は、少し違ってきます。ご家族に緩和ケア病棟へのネガティブなイメージがあると、患者さんに緩和ケア病棟の説明すらできない時があります。
そんなときは、患者さんが自分の病気の状態を十分に認識できていないことが多く、ご家族が療養する場所を決定することになります。
ですから、患者さんが緩和ケア病棟で過ごしたいのかどうかを決定する前に、ご家族が「緩和ケア病棟へは入院させたくない」と決定されるので、ご家族の緩和ケア病棟に対するイメージが、療養場所の決定を大きく左右することになります。
私は、全ての終末期のがんの患者さんが緩和ケア病棟で過ごすべき、とは思っていません。勿論、一般病棟でも療養することは不可能ではありませんし、自宅へ戻るという選択肢もあります。
看護師という医療者からみて、緩和ケア病棟で患者さんに過ごしていただくほうがいいのではないかと思われる方はたくさんいらっしゃいます。
患者さんの病気のこと、患者さんの気持ちのことなどを時間をかけて説明して、緩和ケア病棟への入院をすすめながらかかわってきたご家族がいらっしゃいます。
緩和ケア病棟に患者さんを入院させたくないというご家族は、患者さんの命が病気によって、そう長くはないということを感じ、とてもつらい気持ちにあります。緩和ケア病棟への入院によって、患者さんの命が長くないという悲しみに向き合わなくてはならなくなります。
時間をかけて話をしてきましたが、ご家族ははっきりと私に言いました。
「患者がどうこうというのではなく、私が、いやなのよ!」と。
医師も私以上にご家族に対して「説得モード」になっておりました。
結果は、緩和ケア病棟には、患者を入院させないということになりました。
一般病棟のスタッフたちは、「どうしてー!?」と頭をひねっていました。つらい症状を緩和する専門のスタッフがいる病棟になぜ、入院してもらって、患者さんを楽にさせてあげないのか、ということです。
でも、私は、一般病棟でも患者さんの苦痛を緩和することはできると考えています。緩和ケア病棟への入院を拒む家族を説得して無理矢理入院していただいても、残される家族が不快に思うことがあるかもしれません。
緩和ケア病棟に入院すべき、と思われても、一般病棟でケアをさせていただきながら、家族のつらい気持ちを「どん!」と受け止めてあげられるようにスタッフを調整することも私の役割だと思っています。
緩和ケア病棟に対するネガティブなイメージを払拭することも、私たちの役割であります。
けれど、そのネガティブなイメージを払拭したいがばかりに、家族の気持ちを置き去りにしてはならない、まずは、家族の気持ちを受け止めることが必要なんだな、そして、必ずしも緩和ケア病棟で最期を迎えることがベストではないのだな、と実感しています。
看護師としての自分の考え方に柔軟性をもつことの大切さは、緩和ケア病棟に入院することに抵抗を感じているご家族にかかわれたからこそ、再認識できたのだと思います。
感謝、感謝。