緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

見送る立場

2010-03-28 12:10:23 | 日々

 春は、出会いの季節ですが、お別れの季節でもあります。

 自分が「見送る立場」にあると、とても切ないものがあります。
 
 当然、見送る立場を、痛いくらいに意識しないといけないとなると、「見送られる立場」の方に対する、尊敬や愛着などなどが心全体に充満している状態です。
 
 ありきたりな言葉ですが、残念で仕方ありません。
 
 職場を去る理由は、おめでたい理由だけではありません。

 
 病院と、そして、看護部と、その人を取り囲むさまざまな環境と、うまく折り合いがつけられなかった結果として、「退職」という選択をされる方がいらっしゃいます。

 見送る立場にある自分は、今回ほど、その人が、辞めるという選択をする前に、もっと、もっと、私にできることはなかったのだろうかと考えあぐねています。
 今さら、考えても仕方のないことかもしれません。
 けれど、考えずにはいられません。
 
 事態が少しでも改善する方向性はなかったのかと考えることもあれば、過ぎたことなのに、誰かに対する愚痴めいたことも、振り払っても、振り払っても頭の中にまとわりつきます。困ったものです。

 私も、かつては、見送られる立場にありました。
 自分の安住の場所めいたものを求めて、職場を去った経験があります。

 見送られる立場であった過去の自分を考えると、職場を去るという決断をせざるを得ないときもあり、その決断を下した時には、周りのことよりも、自分のことを最優先に考えざるを得なかったことを思い出します。


 冷たい言い方ですが、職場がその人の未来や幸せのすべての保証をしてくれるわけではありません。


 職場を去ると、決断を下した方に送る言葉は、いつも、

 「あなたの決めた道を、振りかえることなく前に進んでください。」でした。

 いろんな状況が絡んだ上の今回のお別れでしたが、今回も、同じ言葉を送りました。


 俯いてばかりはいられません。
 私も、前に進むしかありません。
 

よくない印象の払拭に向けて

2010-03-17 22:53:58 | 緩和ケア病棟

 今日も一日、無事に終わりました。
 今日は、緩和ケア科の外来の日でした。

 久々、出会いました。
 とても、とても、緩和ケア病棟に対する印象が「悪い」家族さんに。

 
 いつも、緩和ケア病棟についての説明をさせていただく前に、受診された家族さんに、緩和ケア病棟の印象を伺うことにしています。
 
 そしたら、今日は、来ました。 
 久々。


 「ここにきたら、患者さんが苦しんで、唸ってて、とっても暗いところだと思ってました。」


 
 がーん。


 最近、緩和ケア病棟に対して、ここまで暗いイメージをもたれている家族さんとの出会いって少なかったので、ちょっと驚きました。

 心の中では、
 「一体、どんな病棟やねんっ」とぼやいていました…、正直にいいますと。
 ご親戚や友人、近所の方など、緩和ケア病棟へのイメージが地を這うようなご経験をされていたのかと思いましたが、そのような経験もないようでした。


 んー。
 やっぱり?まだまだ、緩和ケア病棟に対するイメージは暗いのか…。


 率直に言いますと、病院周囲の地域には、まだまだ緩和ケアやら、緩和ケア病棟に対するイメージが、「よくない」まま、口コミだけで広がっているのは事実です。残念ながら、マスコミの情報からでさえも、「あそこにいったら、麻酔薬で殺される」といったイメージをもたれているかたもいらっしゃいました。

 他府県からの患者さんも入院されるのですが、他府県の患者さんやご家族の方が、いいイメージを持ってくださっている印象があります。


 困ったものです…、と、うな垂れているだけではなにも変わりません。

 現在、入院中の患者さんのご家族、そして、ご遺族のみなさんには、概ね、ここにきてよかった、という気持ちを持ってもらえています。少しでも、「ここにきてよかった」と思ってくださっている方々が、ゆくゆくは緩和ケア病棟のダークなイメージを払拭するような存在になることを期待しています。

 緩和ケア病棟に入院する目的は、多くが残りの時間を自分らしく生き抜くことなので、よくないイメージが先行するのは無理もないと思います。
 病気や死という現実に向き合わなければならないところですから、悲しみやつらさから逃れることはできません。

 悲しいこと、つらいことにたくさん、向き合わなくてはならない場所かもしれませんが、そこには、笑いもあるし、喜びの涙もあります。
 スタッフも、いつもくらーい顔をしてケアに携わってはいません。


 緩和ケア病棟についての情報が地域にちゃんと伝わっていないこと、がんという病気のイメージの悪さ、死を忌み嫌い、恐れること…。
 そんなこんなが複雑に絡み合って、それぞれの人の「よくない印象」を作り上げているのかもしれません。


 私たち、医療従事者の役割は、一般の人たちに、緩和ケア病棟に対する正しい知識を持っていただくことやよくないイメージを払拭することだけではありません。

 何よりも大切なのは、日々のケアのひとつひとつを大切に行っていくことなのだと思います。
 正しい情報が伝わっても、実際のケアがおろそかになっては、本末転倒です。

 心したいと思います。