松岡さん(仮称)のお父さんは、先日、亡くなられました。
娘さんは、周りの親族は認めつつも、びっくりするくらい、お父ちゃんっ子でした。
娘さんとは入院中、何度もお話をしました。今後の方針、治療や他愛もない話などなど…。
会話を重ね、お会いするうちに、私は娘さんを幸子さん(仮称)と呼ばせていただくこともできました。
幸子さんは、私がちょくちょく訪れる、お店の店員さん。
最初に出会った時から、あのお店の店員さん!とわかりました(それくらい、お店に行っているということですなー)。
日勤を終えて、久しぶりに立ち寄ったところ。
幸子さんが走ってきました。
実は、幸子さんは、心底、お父さんである松岡さんのことを大切に思っておられました。
おそらく、前世は夫婦だったのではないか?と思えるほど。
だから、幸子さんがどれほど悲嘆にくれているかは想像がつくことだったので、どう過ごしているかな、というのは気がかりでした。
幸子さん。
私を見つけるなり、走ってこられ、「お世話になりました、ありがとうございました」とおっしゃってくれました。
商品が陳列されている、普通のお店の場面。ちょっと、照れ臭かったですが、私も幸子さんがいるかも?と思っていたので、そのまま、お話を聴き続けました。
その、お話。
とても、よくわかる。
とても、不思議。
でも、不思議なことが理解できるくらい、起こってもおかしくないこと。
そんなことを、幸子さんは話してくれました。
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お父ちゃんが死んでから、うちの犬が、急に歩けなくなってなー。
くりっとした目、してるんよ。でも、どよよんとした目になって。歩くのもやっとくらいになって。
もう、10年生きてるから、このまま、老衰で死ぬかもって、娘とも話しとったんよ。
くーちゃん(仮称)、私の腕の横に来て、くんくん、鳴くんよ。
そんなこと、今までになかったのに。
あの、とろーんとした目でね。
で、うち、気が付いたんよ。
あ、お父ちゃんやって。お父ちゃん、死ぬ前はあんな目、しとった。くーちゃんとおんなじ目、しとった。
何で、気が付けへんかったんやろ。
絶対、くーに、お父ちゃんがおるんやって、思った。
くーに向かってゆうたんよ、お父ちゃん、お父ちゃんがおるんやろ、って。
お父ちゃんが来てくれるのは嬉しいけど、私、ゆうたんよ、くーは、もっと歩きたいやろし、お父ちゃん、わかったから、くーを歩かせったってよ、って。
お父ちゃんが死んだあと、もう、戻ってきたらあかん、ってゆうててん。
私は私でやっていくから、って思とったから。
あれは、絶対にお父ちゃんや。
そのあと、クーが歩き出して、くーがパチッと目、開けてなー。
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このお話を聴いたとき、私は疑うことは全くありませんでした。
たぶん、たぶん、たぶん。
愛犬ちゃんに、松岡さんがいたのだと思います。きっと、そうです。
幸子さんのことが心配なのか、幸子さんの本当に最後のあいさつをしたかったのか、それはわかりませんが、松岡さんが幸子さんのそばにいたかったのだと思いました。
話を聴いているお店で。
私は、「へ~~~~~~~っ」っと、大きな声で関心しておりました。
うん。
やっぱり、くーちゃんが、しゅーんとしていたのは、松岡さんがくーちゃんの身を借りて、いたのだと、思う。
それくらい、松岡さんも、幸子さんへの思いを、ちゃんと伝えたかったのだと思う。
そう思う。
そうだと、思う。
松岡さんと幸子さんの結びつきを、日々のケアで感じてきたから。
そう、思う。