緩和ケアで行こう

へなちょこ緩和ケアナース?!のネガティブ傾向な日記です。

体験してもらった

2012-05-28 21:02:39 | ケアの感覚

 鎮静中の患者さんがいらっしゃいます。


 このところ、息をするたびに、ごろごろ…と音をたてて、口腔~咽頭での分泌液が増えていました。


 で、でました、「ブスコパンの舌下」の指示。


 幸い、患者さんは鎮静で、穏やかに眠られておられますが、あまり分泌物を吸引する機会が増えますと、休息が阻害されます。
 そこで、この時期の患者さんだからこその、指示、ブスコパンの舌下。


 以前、ブスコパンの舌下をさせていただいた患者さんがいらっしゃったので、ポンは自分でブスコパンを舐めてみました。
 この恐ろしいほどの苦みときたらっ。筆舌もんですぞなもしっ。


 ・・・そんなありがたい経験がありましたので、ブスコパン0.2ml舌下と指示を出した、緩和ケア医と、そのブスコパンをいよいよ舌下しようとしていた受け持ち看護師に、ブスコパンをごくわずかではありますが、一滴、舐めてみるように伝えました。



 反応は。
 予想通り。

 苦くて、「ぎょえ~~~~~っ」でした。


 
 しめしめ←ポンの反応



 この手法が間違っているとは思いませんが、実際にはどんな感じなのかを体感しておくこともいい経験なのではないかと思いました。

 鎮静中の患者さんとはいえ、いくら反応がないとはいえ、やっぱり、苦いものを口に入れないといけない時には、苦いものを舌下しようとしているということの自覚は、医療者には必要かと思います。
 自覚することで、患者さんを気遣う声かけをしながら、今までよりもよりいっそう、気遣いをしながら、舌下することができるのだと思います。


 
 ということで、ブスコパンを舐めてみた体験のおかげで、緩和ケア医からの指示は、
 ブスコパン0.2ml舌下から、
 ブスコパン0.1ml舌下、という指示に変更になりました。
 (ほんまは、0.1ml舌下されるだけでも相当な量なのですがぁ


 
 こうやって指示が変わっただけでも、収穫です。
 0.1mlでも、分泌物は抑えることができていましたし。




 きっと。
 ハイスコを舌下した時も、とんでもない味なんだろうな…。

 

 可能な範囲で、患者さんと同じ経験をするというのは、大切なことですね。
 

お祭りに同伴

2012-05-05 16:13:42 | 日々の「ケア」

 今日は、昨日とは全く違うような気候でしたね…。
 

 とっても暑かったけれど、「晴れてよかった」と思えた一日でした。


 

 今日は、地元のお祭りにでかける患者さんとそのご家族に同行しました。
 お祭りの会場はポンのおうちからそう、遠くはないので、朝から駐車場を確保&ジョギング・・・・・で会場にでかけ…。

 しかーし。患者さんは地元の人ではなかったので、会場にたどり着くまでに一苦労、いえっ。
 ふた苦労、み~~苦労。




 余談ですが、
 早朝のお祭りの会場もいいものですね、露天は出てるのですが、一眠り中という感じで、ひっそりとしてる。
 でも、昼間のためのパワーを蓄えているかのような風景でした。
 早朝からポンなりに準備をした結果。


 さまざまな方のご協力をいただき、患者さんは無事にお祭りを楽しんで、帰ってくることができました。
 患者さん。
 昨夜は、「遠足前の子どもちゃんのように」どきどきして眠るタイミングを逃してしまったそうです。
 そのあと、朝寝坊ができたようなので、それはそれで、OKかな。
 



 

 このおでかけは。
 この患者さんにとっては、おそらく、ラストチャンスかもしれないと思います。
 



 私。
 患者さんにとってとても大切なイベントの時にはじっとしていられないのよねー。
 


 今日の報酬は…。
 患者さんとご家族が喜ぶ姿をみれたこと、ですかね、これ、手当には変えられません、手当を求めるつもりは全くないです。
 (手当を求めても、でませんから~~~、残念っ←イニシエのギャグかいな)

 
 患者さんとそのご家族と過ごさせていただくことって、自分も楽しんでいるところも多々あるから…。

 私の方こそ、ありがとうございますかなぁ。
 患者さんにとって、いい思い出になることを祈りつつ。



 私にとってもいい思い出になりそうな一日でした。


 

卵かけご飯と酢飯

2012-05-03 22:54:29 | 患者さん

 桜井さん(仮名)がご家族との関係がとても複雑だということを書かせていただきました。


 ご家族にお願いすることの中で、結構多いことが、「患者さんが〇〇を食べたいとおっしゃっているから、差し入れしてもらいたい」ということがあります。
 もちろん、病院食で対応できるところはできるだけ対応するようにしています。
 緩和ケア病棟は、院内でも特別に、いろいろなものを付加することができるようになっています。
 (栄養士さんの配慮です、ありがとう

 

 さてさて。

 桜井さんのお部屋にいつものように、ふら~~~っと(いつも、そんな感じでお邪魔させていただいてました)伺いました。

 桜井さんは、病気の進行のために、気道狭窄がみられていて、お喋りすると、いえ、呼吸をすると、「ぜ~~~~、ぜ~~~」と異常な音がしています。
 このところ、気道狭窄がひどくなってきています。
 できるだけの対処はさせていただいていましたが、体力の低下とともにうとうとしたり、ぼーーーっとする時間が長くなってきました。

 食欲も落ちてきています。


ポン:何か、食べたいものってある?
桜井さん:卵かけご飯とか、ええなぁ~~~~。
ポン:っ!!!卵かけご飯かーーー。あつあつのごはんで食べたらおいしいなぁ…(しばらく沈黙)・・・・・・・それやったら食べれそう?
桜井さん:(大きく頷く)それと、巻きずしの具とのりをのけてな、ミキサーにかけてくれんかなぁ。
ポン:そやなぁ。ミキサーかぁ。卵かけご飯と酢飯やな。ちょっと考えてみるわ。それやったら、食べれそうなんやんなぁ。よし、やってみるわ。


 と、こんな会話が成立いたしまして。


 この体力が落ちているときに、食べたいものがあるとなっ。
 それなら、それを用意いたそう!!!

 すぐさま、そんな気持ちになりました。


 しかーし。



 桜井さんは、食べ物を飲み込むことがうまくできなくなっていたので、食事は「ミキサー食+とろみ」をつけたものに変わっていました。
 ご飯は、ミキサーしなくてはならなくて…。
 ご飯をミキサーにかけて、卵をかければいいか?
 なーんて、ポンと受け持ち看護師と考えあぐねて、主任さんにミキサーを持ってきてもらって、ご要望にお応えすることにしました。

 そうそう。
 お米と寿司酢は受け持ち看護師が持ってきてくれて。
 ポンは、卵を持っていくことにしました。
 
 普段は、1パック198円くらいの卵しか買わないポンでしたが、この時ばかりは6個で300円以上する卵をゲットいたしまして…。
 私なりに卵かけご飯に備えました。






 当日。


 昼食が近づいた時間に、緩和ケア病棟のキッチンで調理を始めました~~。
 受け持ち看護師はご飯を炊いてくれていました。
 
 そしてー。
 炊き上がったご飯をミキサーに入れてー。
 スイッチ、オンっ





 あれれ???


 ミキサーしたあとのご飯は、餅のようにどろどろ


ポン:これ、ちょっと、水を入れんとあかんのかな???
受け持ち看護師:これはあかんわーーー。

 試食もしました、ええ、ええ。
 そしたら、炊いたご飯をそのままミキサーにかけると粘稠度が増して、飲み込みがうまくいかない患者さんが食べたら、窒息するやんかっと思うくらい、ねとねとでした。

 次はご飯にちょいと水を足して、ミキサーにかけて…。


 なーんてやっているうちに、キッチンはぐちゃぐちゃ。
 うまくいかなくて炊いたご飯がなくなりました。


 
 んもーーーー、どうしようもなくて、栄養士さんにコールしました。
 
 「カクカクシカジカで、なんとか、卵かけごはんと酢飯をたべさせてあげたいっ、でも、もうコメが…、ご飯がなくなってしまって…、しかも、うまくいってないっ



 栄養士さんは素早く、『主食がミキサー+とろみ』を持って、病棟にやってきてくれました。


 そして。


 「ポンさん。ミキサーにかけるなら、お粥にしてください。」
 そう言われました。



 そうか~~~~。そうやったんか~~~~。
 私、あほやなぁぁぁぁ~~~~。
 (栄養士さんに言われて、ご飯のミキサー+とろみというものの作業?工程がわかった私




 栄養士さんに持ってきたいただいたお粥のミキサー+とろみに…・
 一皿は卵液をかけて、しょうゆをかけて。
 一皿は寿司酢をかけて。



 桜井さんに提供しました。







 桜井さんの口に、運んだところ…。



 指でサインを作ってくれました。
 「おいしい」
 「これなら、いけそう」と。




 もう、この反応をみただけで、涙が出ました。


 


 桜井さん。一人じゃないで。
 せめて。私らがいてるから…。


 命の終わりが迫った患者さんの食べたいものを用意することの大切さをここで云々いいたいわけではありません。



 桜井さんがご飯を食べることができる時間はそう、長くはない。
 そう思ったら、体が動きます。
 気持ちも動きます。

 



 その数日後。
 桜井さんは旅立ちました。






 こうゆう場面って。
 患者さんのためかもしれないけど、実は。
 私たち医療者にとっても、いろいろなものをもらっているのよね。


 
 OKサインを出してくれた姿をみれたことが嬉しかった。
 桜井さんのそばにいれたことが嬉しかった。



 ありがとね、桜井さん。
 


 そして。
 お疲れっ、担当看護師っ。